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幕間ー4

 山県有朋元帥からの、今回の陸軍内の混乱に鑑み、岡市之助陸相と長谷川好道参謀総長が辞任する代わりに寺内正毅が陸相に、上原勇作が参謀総長に就任して陸軍内部の粛軍を行う旨の連絡を受け、山本権兵衛首相は、斎藤実海相と牧野伸顕外相を呼び出していた。


「どう思う」

 山本首相は、2人に問いかけた。

「山本首相の予想通りではないでしょうか。山県元帥としてはムチとアメ両方を示されたのですから、言われる通りにしようと考えたのでしょう」

 斎藤海相は言った。その横で牧野外相も肯いた。


「そうだな。これで世界大戦を前に挙国一致体制を作ることが出来た」

 山本首相は安心したように言った。

 山本内閣の最大の不安が、陸軍の不満だった。

 現役武官制を否定され、陸軍師団の増設は遅々として進まないことで陸軍は不満をため込んだ。

 元老の山県有朋元帥がバックにいる陸軍の不満は軽視できるものではなかった。


 山本内閣も陸軍の不満にある程度は対処してきたが、予算面等で限界があり、ガス抜きに止まっていた。

 今回の対中政策決定前に、陸軍内の一部の暴走をリークすることで陸軍内を自身で粛軍させることにし、更に寺内正毅を副総理兼陸相とすることで、陸軍を重んじる姿勢を国内的にも示す。

 陸軍内の次期首相候補を副総理兼陸相で入閣させる上に、身内の恥を身内で処理できるのだ、山県元帥にとっては歓迎できる話だった。


 予算面でも海兵隊の装備等は英仏が喜んで負担してくれたし、国内も大戦争の最中と言うことで増税に応じる雰囲気になっているので余裕がある。

 陸軍の要望にそれなりに応えられそうだった。

 国内面で不安は無い。

 問題は国外に移行した。


「対中要求は、どうまとめた」

 山本首相は牧野外相に尋ねた。

「14条にまとめました。同盟国の英国に打診し、取りあえず文句はないとのことなので、更に米仏露にも示したところ、日本の行動に文句はつけないとのことです。元老に対する根回しも順調で、皆、合意してくれています」

 牧野外相は答えた。


「南満州も東部内蒙古も日本の勢力圏ですからね。対独参戦の代償として山東省の独の利権を日本が獲得することは既定路線ですから、欧米のどこからも文句は出ないでしょう。米国に至っては国務長官が日本は大いにやってくださいと煽ったと聞いていますよ」

 斎藤海相は言った。


「米国は南満州と東部内蒙古について日本と利権を共有していますからね。米国にとっては、中国政府の恨みを日本に買わせて自国の利益を図る好機ですか。孫文とかにこっそり米国からの意向もあったとの情報を流しておきますか」

 山本首相が言った。


「そうしておきましょう。日本だけ恨みを買うのは馬鹿げていますから」

 斎藤海相は言った。

 日本の大陸浪人の何人かに、機密情報だが憂国の念に燃える君のために特に教えると言えば、感激して勝手に情報を自然と流してくれるだろう。

 孫文らの耳にも自然と入るだろう。

 秘密裏に流すというのがミソだ、却って真実味が増してくれる。

 

 1915年1月18日に、日本の山本内閣は中国の袁政権に対して正式に14か条の要求を突き付けた。

 袁政権は日本の要求の全てを受け入れることは難しいと直ちに声明をだし、欧米諸国に対して日本との交渉の仲介を依頼したが、英仏露は世界大戦で日本の海兵隊が援軍として駆けつけていることもあり、仲介を拒否した。

 米国に至っては、速やかに日本の要求を全面的に受け入れるように勧告する有様だった。

 独が仲介を唯一申し出たが、日本と交戦中とあっては無意味だった。

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