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第6話

「アレン、アレン」

「なんだよ、オリィ婆さん」

「あんな終わり方になってしまって、申し訳なかったね……」

「いや、俺に力があれば……」

「どっち道、私は助からなかった」

「それでも、もっと生きられたはずだ」

「そう気負う必要はないよ、アレン。あんたが大成するのを待ってるよ……」


 そう言ってオリィ婆さんは去っていく。


「待ってくれ! 待ってくれ婆さん!」


 俺は魔力で身体を強化しながら走る、だがそれでもオリィ婆さんはどんどん加速していき、最後には見えなくなってしまった。


「婆さん……婆さん……」

「何寝言言ってるんだ、起きろ坊主、朝だぜ」


 ギージュが俺を揺り起こす。夢か。夢だったのか。そうだよな、オリィ婆さんは死んでるんだもんな……


「何悲しそうな顔してんだ、街へ行くぞ」

「ああ」


 数時間後、俺達は街に着いた。追われている俺とギージュが何故街に入れるのか? それは俺の魔法ウォーターディスガイスのお陰だ。


 ウォーターディスガイス

 顔面に薄い水の膜を貼り、術者が思い描いた姿に変装する中級魔法。呪文は「水よ、我の姿を偽装せよ」である。


 今の俺達の姿は、茶髪の親子連れに見えているはずだ。


「通っていいぞ」

「ああ」


 この通り、門も余裕で通行できた。


「さぁて、美味いもんを食うぜ!」

「昨晩は酷かったからな……」

「アレを思い出させないでくれ……トラウマだ」

「トラだけに?」

「上手いこと言ってんじゃねぇぞ!」

「悪い悪い。お、あそこの飯屋美味そうだぞ」


 道の脇にある賑わっている飯屋に入ろうとすると、俺達は飯屋の入り口のドアの張り紙に気づいた。


「なになに? 大食いチャレンジ! 超巨大パン4つを制限時間内に見事完食した方には1000Gプレゼント、だと?」


 1000Gとは、つまり10万円だ。これはヤバイ。ぜひとも挑戦しなければ。


「おお。丁度いいじゃねぇか。俺は死ぬほど腹が減っているからな」

「うまい話には裏がある。この張り紙にも裏が……あるな。食べきれなかった場合は1000Gいただきますって書いてあるぞ。裏に書くなんてアンフェアだな」

「とりあえず俺は挑戦するが、坊主はやめとけよ?」

「ルールはもっとちゃんと読んだほうがいいぞ。えーっと、チャレンジ中にお手洗いに行くことは禁止されています。食べずに隠したり、捨てたりする行為もまた禁じられています。また、複数人で分けて食べる行為も禁じられています。か。」

「特に問題ねぇじゃねぇか。行くぞ。」


 俺達は店に入っていき、席に着く。


「ご注文は何でしょうか?」

「「大食いチャレンジお願いします。」」

「ぼ、坊主もやるのか!?1000Gチャラになるぞ!?」

「お、大食いチャレンジ2つ入ります!!!」


 俺達のもとに運ばれてきたのは、巨大な1斤の黒パン8つだ。


「わかっているとは思いますが、お二人で分け合う行為は禁じられております」

「「それでは……」」

「いただきます」「食うぜ!」


 ギージュは恐ろしい勢いで黒パンを食べていく。


「水! 水持ってこい!」

「はいいっ!」


 さすがギージュ。凄みだけですごい勢いで水を持ってこさせるのに成功している。

 かたや俺はパンに腕を突っ込んでゆっくり食べているだけだ。誰が見ても完食は不可能。と思ったか? 俺はボソッとつぶやく。


「開け、異次元への扉」


アイテムボックス

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら

 パンのかけら


 見たか俺のアイテムボックス殺法を! 隠してはならないと書いてあったが、アイテムボックスにしまったのが分かるわけがないだろう? 俺はハリボテになったパンを少しずつ食べていき、自力で完食した。


「お、おかしい……この客二人、バケモノだ!」


 ざわざわ……

 動揺する店内を、俺達は2000Gを受け取り堂々と去っていく。やったぜ。

 俺達は店を出て宿屋へ向かう。ギージュがもう長いこと寝ていないためだ。


「お前の魔法がなければ、俺はどっかで野たれ寝るところだった。ありがとよ」

「いや、俺もお前がいなければ生ゴミを漁る羽目になっていた。お互い様ってわけだな」


 そうこう言っているうちに宿屋に着いた。


「宿泊だ。二人部屋で」

「ダブルですか、ツインですか」

「ツインで。ふざけてるのかあんた」

「も、申し訳ございません! ツインだと一泊20Gでございます」


 俺達は断じてホモではない。というか犯罪だろう。30歳差だぞ。


「では部屋にご案内いたします」


 部屋は質素な空間にテーブルとベットが2つあるだけだった。


「久しぶりに寝られるぜ……」

「おやすみ、俺も寝るぞ。寝る子は育つ。身長は大事。これ常識。」


 そう言って俺達二人は眠りについた。

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