第2話
俺は店の地下にある、ババァの自室についた。ババァが謎の呪文を唱えると、壁が開き、本棚が出てくる。
「これが……魔導書……」
ババァの本棚にはいくつかの魔導書と、エロ本が並んでいた。
「ババァ、エロ本なんで持ってんだよ!」
「私だって若かったんだよ!」
とりあえず高い所にある初級魔術大全には手が届かないので、ババァに取ってもらう。
「いくぞ……魔導書よ!」
「ちんたらしてないで早く開け!」
ババァが俺のドキドキを嘲笑うかのように魔導書を開いてしまった。
この本は初めて魔法を使う者向けの本である。
魔術には属性があり、火、水、風、土の4属性存在している。
魔法を使うには起こる事象をイメージし、定められた呪文を唱える必要がある。
魔法を使う度に魔力が必要となるが、使いすぎると魔力欠乏症になるため注意して使うこと。
魔力は幼少時に鍛えるとより強くなり、年を経るにつれて上昇量が少なくなっていく。
日々の魔力訓練を怠らないことが強力な魔術師になる第一歩である。
次のページをめくる。
初級魔術、ファイアボール、ウォーターボール、ウィンドボール、アースボール
元素の力を持った球を発射する魔術。最も基礎的であり、応用も効く単純な魔法である。呪文は「〜の力を持ちし球よ、飛べ」である。
なるほど。とりあえずこれを使ってみるか。呪文は「火の力を持ちし球よ、飛べ」だな。
「火の力を持ちし球よ、」
「馬鹿!本が燃えるだろうが!」
ババァは俺の頭を殴る。いてぇ。
「じゃあどこで練習するんだよ!」
「風魔法を使えばいいだろうが!」
「なるほど。風の力を持ちし球よ、飛べ!」
ウィンドボールが飛んでいき、本のページをめくっていく。
「できた……俺にも、魔法が使えた!」
「おめでとう、これで共犯だね。」
そうだった。俺は今、罪を犯したのだ。歓喜に震える俺の心にはどうでもいいことだが。
その後、俺は桶にウォーターボールを使ったり、溜まった水にファイアボールを使ったり、お湯にアースボールを使ってババァにキレられたりした。2歳児にはドロ掃除はあんまりにも酷だった。
「そういやババァ、名前なんて言うんだ?」
「オリィだよ。お前さんは?」
「アレンだ。」
「アレン……良い名だ。時期にその名が大陸中に広まるよ。」
そして俺は1年間オリィ婆さんの元で魔法の修行をした。
一年後。
「いってくるね」
「アレン、気をつけるのよ。オリィ婆さんは魔法使いだって噂もあるんだからね。」
「大丈夫、ママ。」
俺がオリィ婆さんの元に通っていることは親にすぐバレた。が幸い魔法のことには気づかなかったらしく、文字の勉強をしていることになっていた。俺はこれを好都合だと思い、親の前では文字が読めないふりをしていた。まぁ親は文字が読めないので俺が読めても読めたかどうかわからないのだが。
オリィ婆さんの家にはかなり時間がかかってついた。3歳児にはどんな道でも長く感じる。
「ババァ、来たぜ」
「ゴホッゴホッ……ああ、アレンかい」
「大丈夫か? ババァ」
「わかってたことさ。魔法でいくら寿命を伸ばしても、限界はある。ゴホッゴホッ……今日は中級魔法最後の魔法を学ぶよ。私が教えられるのは、これで最後さ。でも魔法の勉強が終わったからって、私の下からいなくならないでおくれ……老い先短いババァの最後のお願いだよ」
「ババァ……」
魔法で身体能力を強化し、ババァを抱えながら地下室に入る。本棚の出現呪文も覚えた。本棚が出現し、ババァは中級魔法の魔導書を開く。
アイテムボックス
自分独自の異次元空間を作り、そこに物品を保存する魔法である。強大な魔力がないと空間を作ることが出来ず、使うことも出来ない。諸君はこの魔法が使えなかったからと言って自分を責める必要はない。使える者の方が稀なのだ。呪文は「開け、異次元への扉」、空間製造時の呪文は「異次元空間、創造」
ついに出てしまった。最強のチート魔法。アイテムボックス。これが使えれば、3歳児でも物が持てる。テンプレ主人公が必ず持っている魔法だ。
「さすがの私ですら、この魔法を覚えるのに50年かかった。2歳の頃から休まず修行してきたあんたなら、今の状態でも使えるかもしれんよ……ゴホッ」
「ババァ、この魔法、必ず覚えてみせるぜ」
俺は精神を集中させ、体内の魔力に意識を集中させる。異次元空間の創造。やり遂げられるだろうか。いや、やってみせる。
「異次元空間!創造!」
体内から大量の魔力が抜けていく感覚がする。そのまま俺は、気を失ってしまった。
目が覚めると、ババァが心配そうな顔で俺を見ていた。
「上手く……行ったのか?」
「さぁね。使ってみなさいな」
「開け!異次元への扉!」
俺の脳内に、謎のメッセージが出てくる。
アイテムボックス
なし
「ゲームのインターフェイスかよ!」
俺が叫んでしまったのには無理はないと思う。誰だって叫ぶ。
「なんだいげぇむって」
「気にするな、ババァ」
だがついにチート魔法を手に入れたぞ! それに数々の中級魔法もある。もしかして俺って、チートなんじゃないか?