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第15話

 俺達3人はオレアの街という街に到着した。オレアの街は賑やかで、人混みに紛れるには絶好の街だった。


「アレン、なにか欲しい物ある?」

「特に何も。強いて言えば出来るだけ美味い保存食が欲しい」

「ギージュ、買ってあげなさいよ」

「うぇっ……俺かよ! 確かに俺達3人の中では俺が一番金を持ってるけどよ……」

「嫌なの?」

「可愛い子供が欲しがっているのに?」

「クソッ! お前ら! 俺を何だと思っていやがるんだ! で、市場はどっちだ?」

「ハハハ……ギージュは甘いなぁっ……」

「そうね、ギージュは人の頼みを断れないタイプね」

「「ハッハッハッ……」」

「お前たち何仲良くなってんだよ、早く市場に行くぞ!」

「「はーい!」」




「このソーセージかな? それともこのベーコンかな?」

「このチーズも美味しそうね」

「俺は渋くこの干し肉がいいと思うんだがなぁ」

「「「うーん…」」」

「オヤジ! このソーセージとベーコンとチーズと干し肉をくれ!」

「あいよっ!」

「ギージュったら……欲張りさんなんだから……」

「いいだろ! 大は小を兼ねる! 荷物持ちはアレンだから問題なし!」

「歩きながらでもこっそりしまっておくよ」

「それじゃあ次は飯屋に行かないか?」

「いいな、俺は手堅く屋台巡りなんかどうかと思うんだが」

「私はシチューの店がいいんだけど」

「俺は豪快に焼肉屋がいいぜ!」

「ここは最年少の俺の意見を聞いて屋台がだな……」

「シチューには肉も入ってるわよ?」

「いや肉こそ全てだ! 肉以外はいらん!」

「「なら今夜の晩御飯ギージュは肉だけシチューね!!」」

「どうして俺ばっかりこんな扱いなんだよ……」




「結局屋台巡りになったわね」

「おっ! あの串焼き屋美味そうだぞ!」

「アレはポイズンフロッグの肉だぞ? 加熱しないで食うと腹壊すから人気がないんだ」

「そうか、でも俺は行くぜ! カエルの肉を食べるのも経験だからな!」

「じゃ、じゃあ私も! カエルはちょっと見た目が苦手だけど、肉なら一緒よね!」

「俺の分も買っとけよ! 俺は骨付き牛の店に並んでくる」

「ああっギージュ! 俺の分もそれ確保しといてくれよ!」

「あんた3歳児の癖にどれだけ食べるのよ……」




「さぁて、腹ごしらえも終わったところですし服でも買いましょう!」

「俺は今の服が気に入ってるから必要ないぜ」

「あなたの服じゃないのよ! アレンの服よアレンの! 可愛い子にはいい衣装を着せろ! 常識よね!」

「女の買い物に付き合うの苦手なのに、俺主体でやるのかよ……」

「頑張れ、アレン。俺は応援してるからな」

「ギージュもきせかえ人形になる恐怖を味わえばいいんだあああああ!!!」

「へっ……一生味わうわけ無いだろ。バーカ。」




「結局アイラの服も買っちまって手痛い出費だぜ……」

「男の人に払ってもらっちゃった! キャッ!」

「お前なぁ……俺まだ3歳なんだが。見返りもクソもないと思うんだがな……」

「馬鹿馬鹿しい話してないで早く街を出るぞ。時間を無駄に使っちまった」

「嫌よー! まだ買うものいっぱいあるんだから!」

「はいはい、行くぞアイラ。次の街があればそこで買えばいいだろ」

「もーっ! 女心がわからない奴ばかり! まぁいいわ。また今度にしましょ!」





 俺達は夜まで歩き、そこで野営をしながら今日について話し合い始めた。


「今日は楽しかったな」

「まるで本当の家族みたいだったぜ」

「そうね」

「またいつか、こんなふうに笑える日が来たらいいのにな」

「そうだな……」

「来るわよ、きっと」


 その日の夜中。


「すぅーっ……すぅーっ……」

「よく寝てるわね、アレンも」

「ああ。あんな中身でも、体は子供だからな」

「ギージュ……」

「なんだ?」

「おやすみなさい」


 アイラはギージュを毒ナイフで刺殺した

























 ……かに見えた。


「最初から分かってたんだ。お前の姿を一目見た時から。百面相のエリア」

「……気づいていたのね、ギージュ」


 ギージュはアイラ、いやエリアの毒ナイフをギリギリのところで掴んで止めていた。

 そしてエリアの顔が崩れていき、アリシアとは明らかに別人の顔となった。


「俺は家族で居たかった。若い頃のアリシアと、俺と、アレンの3人家族だ。お前の姿を見た時、心のうちに封印していたその理想が俺の中で暴れ始めた。本当はお前を見つけた時に殺すべきだった。どうせ教団に雇われて俺達二人を殺そうとしていたんだろ?」

「ええ、そうよ。愚かなあんたなら簡単に殺せると思ったんだけど、会っていない15年のうちにずいぶんと成長したじゃない」

「場数ならお前の数倍踏んできたつもりだ。そう簡単に死にゃしねぇよ。エリア、楽しかったよ。お前と過ごした3日間は。楽しい、家族ごっこだった」

「ギージュ……お前がエリアに自己紹介した時から、俺はお前が何をしたいか分かっていた。分かっていて、止めなかった。一時でもいい。幸せを味わって欲しかったからな」

「アレン……起きてたのか」

「当たり前だ。ここ数日ロクに眠っていないぞ」

「結局、私は罠にはめたつもりが弄ばれてたってわけね」

「それでどうする? お前一人で俺達二人を正攻法で相手にするのか?」

「いいえ。私には仲間が10人いるわ。私と同じくらいに強い手練よ。あなた達と盗賊の戦いぶりなら、確実に勝てるはず」

「それはどうかな?」

「お前、最初から疑われていたと言われてまだ気づかないのか? 俺達はお前の前では一度も本気を出していないんだよ。俺達を倒すにはお前程度の実力なら30、いや40人は必要だぜ」

「そんなの、ハッタリよ! いけ!」


 周囲の様々な物影から暗殺者達が飛び出してくる。





「終わったな」


 周囲にはエリアを含む暗殺者達の死体が合計11個積み重なっている。


「ああ。くそっ……くそっ!」


 うおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーー!!!!

 ギージュの男泣きが空に木霊した。

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