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第12話

 数日後、俺達はショートカットのため森を突っ切っていた。


「ゲホッ、ゲホッ。ギージュ、なんか空気悪くないか?」


 頭がクラクラし、体がだるい。


「気のせいだろうよ、現に俺がピンピンしてるじゃねぇか」

「そうか……そうだよな。ゲホッゲホッ」

「大丈夫か? ダメなら背負って歩くが」

「悪いが、頼む」


 更に俺たちが歩いていると、前方から数人の人影がやってきた。男女混合の集団で、全員イヤリングをしている。


「ギージュ、戦闘準備だ」

「おうよ」

「止まれ、この木をヘリュの森のご神木だと知って入ったのか?」

「ヘリュの森……ああ、森の民の聖域か」

「ボソボソ……ギージュ、森の民ってなんだ?」

「森に住み、森と暮らす少数部族だ。少数部族だからといって侮ると、国の高官なんかに要人がいるもんだから痛い目に遭うぜ。暗殺者の中でも狙わないことが決まってたな」

「ふむ……厄介だな」

「ボソボソと子供と何を喋っている!」

「いや、大したことじゃねぇよ」

「そうか、では質問の答えを聞こう」

「知らなかった」

「そんな嘘が通用するものか!」

「いや、嘘じゃねぇ」

「ふざけるな、さぁ来い! 裁きを受けさせてやる!」


 厄介な部族だ。こちらの言い分を聞こうともしない。武器を突きつけられ森の民に連行される俺達。するとギージュが何かを言い出す。


「ん? あの木」

「ご神木がどうかしたか?」

「ミリュの木だよな、あれ」

「そうだが、どうかしたか?」

「枯れかかってるぞ、ありゃあ」

「ふざけるな! ご神木が枯れるわけがなかろう!」

「現に枯れかかってるんだ、お前たちの目は節穴か?」

「証拠を見せてみろ! 証拠を!」

「ミリュの木は害虫除けとして樹液と葉に猛毒がある上、葉からも毒素が蒸散している。葉から蒸散してる毒素の量が少なすぎるぞ」


 ギージュは暗殺者の知識でご神木が枯れかかっているのを見抜いたらしい。さすがギージュだ。


「そんな馬鹿な……」

「長老を呼べ! もし事実なら、大変なことになるぞ!」


 数分後、ヨボヨボのじいさんが森の民二人に抱えられてやってきた。


「こ……これは!」

「長老! どうかしましたか!」

「ご神木が、枯れかかっている!」

「そんな! 我々が聖域を保ってこれたのは、このご神木の毒素のお陰ではありませんか! これから我々はどうしたら良いのです!」


 この時俺にこの状況から開放される名案が閃いた!


「ゲホッゲホッ……水よ、毒を消し去れ」


 キュアポイズン

 水の力で対象の体内から対象に害のある毒素を消滅させる下級魔法。呪文は「水よ、毒を消し去れ」である。


 恐らく俺のだるさや咳はこのご神木とやらの毒の効果なのだろう。だから暗殺になれたギージュには効果がなかったのだ。それならば解毒魔法の効果があるはずだ。


「よしっ、だるさが消えた! 大地よ、天の恵みを今ここに育て給え!」


 アースグロウス

 土属性中級魔法。植物に栄養素を与え、急速に成長させる。呪文は「大地よ、天の恵みを今ここに育て給え」である。


 ご神木がきらめき、心なしか葉のみずみずしさがました気がする。


「ま、魔法!」

「わしには分かる……ご神木が、元気になっていく」

「な、なんですと!?」

「この旅人方に感謝するのじゃ。教国では禁止されている魔法じゃが、目を瞑ろう」

「あ、ありがとうございます!」


 森の民達が頭を下げる。俺達を悪だと決めつけてかかっていたとは思えない潔さだ。


「感謝するなら、開放してくれ。いい加減この体勢には疲れたぜ」

「申し訳ありません!」


 ギージュに突きつけられていた武器が仕舞われた。


「なぁ旅の者よ。今回のことは何度お礼をしても足りないほどの恩じゃ。せめてこれを受け取ってほしい」


 そう言って長老は自分の耳のイヤリングを外す。


「森の民がイヤリングを渡すのは最大の親愛表現じゃ。わしのイヤリングなら、あらゆる森の民に願いを聞いてもらえるじゃろう。お主らの名は?」

「ギージュだ」

「アレン」

「ではギージュとやら、このイヤリングを受け取るが良い」

「おう、受け取っておくぜ」

「出来ればこのまま森の民として暮らして欲しいのじゃが……」

「俺は大丈夫だが、坊主がな。それに俺達には行かなければならない場所がある」

「それならば、残念じゃが丁重に送っていく他なかろう。お前たち、この方々を森の外に送ってやってくれ」

「「はいっ、長老!」」



「まさかギージュにあんな特技があるとな、危なかったよな俺達」

「危機一髪だったぜ。まぁイヤリングももらえたし結果オーライだろ?」

「そうだな」


 俺達は進んでいく。


「「あっ!! 森の民の食料分けてもらうのを忘れた!!」」


 どこか抜けている俺達であった。

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