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第10話

 奴のファイアストームが迫ってくる。だが。


「水の渦よ、我が敵へ!」

「何!? 赤子が魔法を使った!?」


 俺のウォーターボルテックスが勇者のファイアストームを弾き返しそのまま勇者に激突する。


「うぐぅっ!」

「「勇者様!!!」」


 この隙に俺達は勇者を少し引き離す。だが体勢を立て直した勇者がもう一度迫ってくる!


「風の槍よ! 我が敵に!」


 勇者はウィンドジャベリンを使う。


「水の槍よ! 我が敵に!」


 相手のウィンドジャベリンを俺のウォータージャベリンが貫通し勇者に迫る。


「風の壁よ、我が前に!」


 ファイアウォール、ウォーターウォール、ウィンドウォール、アースウォール

 薄い壁を作り出す下級防御魔法。使用者の魔力によって威力が増大するため術者によっては高位の魔法をも防ぐことが出来る。呪文は「〜の壁よ、我が前に」である。


 威力の弱ったウォータージャベリンをウィンドウォールが防ぐ。


「今度はこっちの攻撃だ! 土の槍よ、我が敵に!」

「くっ……風よ、我に速度を!」


 勇者がヘイストで避けたアースジャベリンは教団兵に命中した。


「お返しです! 土の槍よ、我が敵に!」

「火よ、我に力を! そいっ!」


 飛んできたアースジャベリンを素手で投げ返す。


「くっ……そう来ましたか! ならば叩き落とすまで! 風の球よ! 飛べ!」


 勇者のウィンドボールが槍の柄に命中し、軌道を逸らす。逸れたアースジャベリンは教団兵に命中した。


「だがこれはどうだ!? 火よ、爆発を起こし給え!」


 エクスプロージョン

 強力な爆発を発生させる中級魔法。中級魔法の中でもかなり上級魔法に近く、繊細な使用が求められる。呪文は「火よ、爆発を起こし給え」である。


「何! 高等中級魔法だと!? ぐわああああああ!」


 勇者は爆風に巻き込まれ、呻く。ここで俺の本格的な反撃が始まる。そう思った時勇者が呪文を詠唱し始めた。


「はぁ……はぁ……天の裁きよ、我が敵へ聖なる力となり降り注げ。 ネ メ シ ス ! ! !」


 ネメシス

 オリィ婆さんから教わった魔法にそんなものはなかった。


 空から大量の光弾が降ってくる。先行した一発が宿屋らしき建物に命中し、爆散する。 どんどんと街が破壊されていく! この威力はウォール系魔法では防げそうにない!


「炎の球よ、我が敵へ拡散し飛んでいけ!」


 ファイアボールの応用魔法だ。ネメシスに向かって分散したファイアボールが向かっていき、一発一発を相殺していく。何度も拡散ファイアボールを放っているうちに、ネメシスを詠唱した勇者がふらついていることに気づいた。


「ま、まさか……私は神に祝福されているのでは、なかったのか……」


 恐らく魔法の反動だろう。勇者は倒れる。部下たちに介抱される勇者を尻目に俺達は街の門を通過した。


「決まったあああ! 坊やの魔法が、勇者の聖法を打ち破ったあああああ! そしてゴールイン! 優勝は、23番だああああ!!! そして指名手配犯が逃げるぞ! 捕まえろおおおおお!」


 うるせぇぞ、司会。何でもかんでも伸ばせばいいってもんじゃねぇ。




 その夜、俺は悩んでいた。優勝賞品をスルーしてしまったことではない。

 正体不明の魔法を使った勇者と呼ばれる少年のことだ。奴の魔法は聖法と呼ばれていた。

 実力では圧倒的に俺が上回っていたが奴は恐ろしい。使用に耐えられず倒れたとはいえ、あのネメシスは脅威だ。


「坊主、寝付けないのか?」

「ああ、あの勇者のことが気になってな」

「あれか……正直、教会が教義に反する魔法使いを抱えているって噂は何度か聞いたことがあったが、本当だとはな」

「奴の魔法、ネメシスは俺が知らないとなると恐らく上級魔法だ。ということは上級魔法の使い手を教会が抱えているということだ」

「上級魔法か……今まで小僧の魔法の威力はさんざん見てきたが、あれは中級魔法なんだろ?」

「ああ」

「あれ以上となると、本当に厄介だな」

「……ギージュ。お前は俺と行動を共にしないほうがいい。明らかに教団は俺だけを狙っている」

「そうだなぁ……俺だってよ、命は惜しい。だがお前は俺の家族みたいなもんだ。嫁に裏切られた俺に、唯一残ったな。だからもう、見捨てることなんてできやしねぇ」

「ギージュ……すまない」

「いいってことよ」


 本当にこいつは……俺は、かけがえのない友であり、家族を得た。

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