4/11
007-008
【007】
見栄を張った給料三ヶ月分の輪っかは呆気無く帰って来た。
僕の指より小さめのそれは、手に入れた時と変わらぬ光。
握りしめたまま僕は思う
「神様、ちょっと酷すぎやしませんか」
死後硬直の肢体にキスを落とす
その肌の
その色、コールド・シルバー。
【008】
使い込んだコンパクトの角は既に剥げていた。
チャチな塗装のその下から、機能性が顔を出す。
女だってきっと同じ。
使えなければ意味がない。
だけど飾らずにはいられない。
指に馴染んだ装飾の
粉のような誇りを守る
その色、プラスチック・ゴールド。