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005-006
【005】
霧が立ち込めた洋館のように、
そこは誰も知らないの。
森の奥の湖のように、
そこには誰も行ったことがないの。
ねぇ気をつけて。魅入られないように。
ねぇ気をつけて。住民たちに。
手を伸ばせば己の色さえわからなくなる
霧のように深い深い
その色、ディープ・イエロー。
【006】
「空を見たことがある?」
と言って彼女は赤い絵の具で空を描く。
「海を見たことがある?」
と言って彼女は黄色いクレヨンで海を描く。
「心を見たことがある?」
と言って彼女は黒い紙を用意した。
フォークで穴だらけになっていく紙を見下ろす虚ろな瞳の
その奥に鎮座する
その色、カオス・ブルー。