5/5
マイナス〈4〉
side:時津 上総
何故か雄作はずっとニヤニヤしているし、田宮に至ってはやけに気合いが入っていると言うか闘志みたいのが見えるし、ホント訳わからん。
あいつお気に入りの牛乳を買ってスーパーへの道を戻る。短時間だしすれ違うってこともないだろう。
「ん?」
制服の胸ポケット(うちの高校は学ランだ)に入れていたスマホが震える。『着信:公衆電話』……またか。出ようかどうか迷っている間に電話は切れてしまった。『伝言1』の表示。夜中に似たようなことがあったから、聞くのを躊躇われるが、俺は恐る恐る確認ボタンを押した。
『お願い…!出て…!助けて!』
焦ったような少女の声。血の気が引いた。
警察に連絡…いや、イタズラ電話としか取り扱って貰えないだろう。大体、どうしろってんだよ、折り返し電話のしようもないし、なぜ俺なんだ。
そこまで考えて、たかがイタズラ電話相手に真剣になっていることに気づく。
「何をしてんだか俺は」
気味の悪さを振り払うように俺は伝言を削除する。顔を上げると雄作と田宮がケンカしながら歩いてくるのが見えた。