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えぴろーぐ!  「サンタなんて大っっっっ嫌い!!」

 この話で一応「1月2日のサンタ」は一区切りです。

 サンタくん視点の閑話を明日あげますので、そちらもよろしければ。

 あと、続編の第1話もそのとき一緒にあげます。もし閑話を飛ばす方は「サンタくんシリーズ」で検索すれば引っかかるかと。

 

 長くなってすみません。

 ではでは、伊月ちゃんのその後をどうぞ!

 誰にでも『嫌いなモノ』って、一つはあると思う。

 そういうあたしにも、嫌いなモノがあった。



 走れ。走れ。走らなきゃ!

 足を全力で動かして、必死に朝っぱら一人強制ランニングをしてた。


「ち、遅刻遅刻~!!」


 なんで7時半に鳴るように目覚ましかけたのに、8時に起きちゃうかな!?




 正月の、不思議でヘンテコな出来事があって、あたしは悲しい夢をあまり見なくなった。

 嫌いじゃなくなったけど、夢とサンタは未だに苦手。

 長年の思い込みは、簡単には上書きされないみたい。

 でも、少しずつ、好きになっていければいいかなって思う。


 両親とのことも、そう。

 無理矢理に近い形で、二人には夜時間を空けてもらって、週に1回はみんなで夕飯をとることになった。

 ちょっとぎこちないけど、三人そろっての食事も叶えた。

 これから時間はたっぷりあるんだし、空白だった数年間は自然に埋まるんじゃないかな。


 それから、あの日以来、あたしはサンタくんには会ってない。

 まあ、もともと会うはずのない存在なんだろうけど。


 数日経った今では、彼と話したこと自体が、夢だったんじゃないかって思える。

 だって、あまりにも奇天烈だったし。

 ……それでも、あたしは、サンタくんと話したことをこれからもずっと覚えていようって決めた。

 あたしに、前に進む一歩をくれたから。




 ……でも、そのおかげで、眠りすぎて朝起きれなくなりつつあるんだよね。

 新学期早々、出席チェックされたくないのに!


 目指してる校舎の屋根下すぐにある時計を確認。

 8時28分!? 始業時刻まであと2分しかないよ!

 カップラーメンが固ゆでに状態になるくらい余裕がないってことだよねっ?

 目前まで校舎が近づいてるのに、風紀委員の人が、門をガラガラ封鎖し始める。


「ま、待ってぇ~!」


 あ、あたしの皆勤賞がっ!

 あとちょっと! ちょっとだけ止まって!


 声が聞こえてるはずなのに、無情にも、一人の男子の風紀委員がスル―して、勢いよく門を閉めた。


「ああぁぁ……」


 ショ、ショック! 目の前で閉められるなんて。

 フラフラと校舎のほうに寄って、じっと校舎を見上げた。


 ああ、さよなら。うるわしの無遅刻無欠席。こんにちは、先生のおとがめ。

 ため息をこぼしてうつむいていると、頭上から声が降ってきた。


「新年初っ端から遅刻とは、いい度胸しているな、チビ」

「なっ……! ち、チビじゃないもん! そ、そっちこそ、もう少しくらいオマケしてくれてもいいのに!」


 失礼な人だっ! それにあたしが今言った通り、締め切るのが早すぎる気がする。

 キッと目尻をつり上げて、目の前の、たぶん風紀委員の生徒を睨んだ。


 ……え?

 ま、まさか、だよね?


「サ、サンタくん?」

「久しぶりだな、チビ。俺のこと覚えてるくらいの記憶力はあるみたいだな」


 偉そうに門の格子越しに仁王立ちする姿は、まさに本物だ。

 うそ……夢じゃなかったんだ。

 信じられないけど、やっぱり、あのことは現実だったんだ!


「な、なんで!? なんでこの学校の制服着てるの!? そ、それもコスプレ!?」

「相変わらずバカだな、チビ。生徒だからに決まっている」

「だ、だって、サンタなのに!?」

「あれはアルバイトだと、前言っただろうが」


 一人冷静で、呆れた様子であたしの慌てっぷりを眺めているのが、ムカムカするよ!


「また会うなんて、予想外だよ」

 責めるように言うと、サンタくんは短く嘲笑った。

『ハッ』って! 『ハッ』って言った!


「おまえバカか。俺は一言もそんなこと言ってないが」

「う。そうだけど!」


 でもそれなら、『またね』くらい言ってくればいいのに。

 オレ様思考は、健在なんだね。

 ハッキリ言って、面倒だよ。ついでにムカつくし。


 ……でも、なんだかんだで、会えて嬉しいな。

 そういえば、あの時のお礼言わなきゃ。


「あ、あのね、サンタくん。この前は――」

「しかし、改めてチビだな」

「……チビじゃないもん」


 もう! なんて話の折り方するのっ!

 真面目に感謝の言葉伝えたかったのに。

 湧いてくる怒りをなだめながら、笑顔をなんとか保った。

 話題を戻そう、うん。


「そ、それでね。あたし――」

「チビ、まだ成長期きてないのか? ……もしかして、きてもこれか」

「……」

「しかも、セーラー服が着させられてる感バリバリだ。ここじゃなくて、そこの中学校に行ったほうがいいんじゃないか?」

「………………」


 顔が引きつっているのが、自分でもわかる。

 素直に再会を喜びたかったのに……この人は!


「や、やっぱり……」


 大きく息を吸い込み、飄々《ひょうひょう》としている彼に向って、思いっきり叫んだ。


「やっぱり、サンタなんて大っっっっ嫌い!!」



 これで「1月2日のサンタ」は終わるのですが、もうちっとだけ続くんじゃよ。

というわけで、閑話と続編までお付き合いくだされば、幸いです。

 では、読んで下さりありがとうございました。 

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