運命
俺の職業は殺し屋だ。父もそうだった。父は、母と離婚したあと、マフィアのボスになった。
母は、父のマフィアと敵対関係にあった別のマフィアのボスの愛人になった。抗争が激化し全面戦争に発展したとき、父は部下に母を殺させた。
俺は父を殺すために殺し屋になった。まだ、その復讐は果たせていない。
幼い頃、俺は金と鍵だけを渡されて、いつも一人で食事をしていた。母は俺たちを養ってくれるボスに呼ばれれば、たとえ真夜中だろうと早朝だろうと、すぐに出かけて行かなければならなかった。
俺は毎日、一人で動物図鑑、昆虫図鑑、魚図鑑を読んで過ごした。
ある日、母は「あんたの友達にしな」と言って猿のぬいぐるみをくれた。俺はそのぬいぐるみに「ウッキー」という名前をつけ、夜はいつもウッキーを抱きしめて眠った。
大人になった俺は殺し屋として稼げるようになり、スナックやラブホテルのオーナーなど、いくつかの表向きの商売をやることになった。ある日、俺が持っている上野のラブホテルで老人が死んだ。腹上死だ。女は青ざめた顔でベッドの脇に突っ立っていた。
俺は警察を呼び、部屋の後始末を専門業者に頼み、女が連れていかれた警察署へ行った。
取り調べが終わった女は老人の愛人だった。警察署からフラフラと出てくると途方に暮れて、これからいったいどうしたらいいか分からず、金もないと言うので、俺のホテルの掃除係として雇うことにした。
しばらくして、女は何となく俺といっしょにいる時間が多くなり、ときには夜を共にするようになった。
生い立ちを聞くと幼いときに両親を亡くし、親戚のところや孤児院をたらい回しにされ、いつも一人で食事をする子供時代だったらしい。生い立ちが似ていた俺たちは、いっしょに暮らすようになった。
初めてその女の肌に触れたとき、氷のように冷たく感じた。女のほうも俺に触れたとき、同じように冷たいと感じたそうだ。今では、お互いの体を温かいと感じられる。ときには炎のように熱く感じることもある。




