第五話
「私達はみんな、来たくて来たわけだけど……ミナトちゃんはそうじゃないの?」
「あ、えっと、繋がりが切れたから、それの修正に巻き込まれた。時間が経つまで元の世界に帰れないから楽しんでみる? って感じで。どうせならって遊ばしてもらいました……けど」
「で、それをしたのがMoeって人?」
「あぁはい。そうです」
なにかまずいことを言っただろうか。どう雰囲気を良くしようかと考えている内に、再びアナウンスがなった。
『ゲーム更新が終わりました。これより皆様を部屋ごとにそれぞれの場所へ転移させますので――』
その後の言葉は湊にとって聞かなかったことにしたいものだった。だが、無常にも視界は歪み、やがて知らぬ場所へと放り出される。ここはもう、湊のしるCONNECTED WORLDではない。そう。はなからここはCONNECT THE WORLDだったじゃないか。
みなとは右手に握りしめたソードをしげしげと眺める。ハイエナの血はすでに乾いて黒く変色していた。
まずは地形把握。殺風景な砂漠のようだが、幾つかの山はあって身を潜める分にはちょうど良さそうだ。流石に死角は用意してくれているらしい。部屋ごとと言っていたからこの広い場所にいるのは、みなとを含めてたった5人。されど5人。
これからみなとは人殺しとなる。なにせあの時、殺し合いを求められたのだから。
『ルールは簡単。生きている人が勝ちです。勿論それは一人だけ。そうして、その人は願いを一つ叶えましょう。では、殺し合いを楽しんでください』
人を殺す。そのことが痛いくらいで、みなとの呼吸を浅くした。殺す物自体はただのキャラクターで、これもゲームの中での出来事。けれど、忘れてはならない。ここで死ねば存在ごと現実からは抹消されるのだ。みなとは死ぬわけには行かない。だが、それは他の人も同じでは?
全員、誰かにとって大切な人で、存在が失われていいわけもないのに。
「っいた! 悪いけどここで……」
「うわっ、ま、え、ちょっ」
みなとが悶々としていれば、いつの間にきたのかノゾミが剣を向けてきた。幸いにも近接系キャラだったから助かったものの、もしも弓矢だったり魔術師だったりしたら――。
「一旦話し合いましょうよ!? ね? 別になにも殺さなくたって……」
「そんな甘いこと言ってられないし。今更失ったところで――」
「え、いや、命! 命大事にしましょ?」
「命……ね。大事にしてるよ」
この人は何を言っているんだ? 大事にしていればこんなこと到底受け入れられないはずだ。そんな思いが湊に渦巻いた。話し合う余地などない。早いとこ逃げなければ。ここで殺すだけの度胸は持ち合わせていない。ノゾミは、みなとが刃を向けずに背を向けたたことで呆気にとられていたが、少ししてから後を追ってきた。これだけ騒いでいればすぐに見つかってしまう。それに、砂漠だから砂埃も立つ。殺すしか、ないのか? みなとがソードを向けようとした時、ヒュッと空気の裂ける音がなって、ノゾミの背に白羽が刺さった。
「は、え……?」
湊には眼の前の死が信じられなかった。ノゾミもそうだが、なぜこんなにも抵抗がない? まさか、存在ごと消えるという事実を知らないのではないか。だからこんなにもあっさりと。
だが、そうこうしてこの場に留まればみなとも射られることはまず間違いない。射手が誰なのかは不明だが、ここからでは見えないのだから、早く離れなくては。
足早に離れた直後、先程までみなとの居た位置にまた一本白羽が立っていた。




