第四話
「えっとぉ、どっかに色がちょっと違うとこないかなー? あ、これか」
少し青みがかった水にみなとがソードを刺してみると、案の定スライムだった。ハイエナと違ってあっさりと死んでくれるのが助かる。ぐにょぐにょした刺し心地は湊にとって気持ち悪いことこの上ないが、体験する分にはこれで十分だ。本当はダンジョンでドラゴン討伐もしたいが――死んだら困るのでやめておいた。
スライムを倒してみた今、特段してみたいことが湊にはないので、折角だからと秋を堪能することとした。MMOなだけあって、交流メインのマップもあるのだ。
(Z178U)
コードを唱えると同時に、一面が真っ赤に染まる。紅葉シーズンの山だ。他のユーザーがいないせいで、みなとひとりという現実が湊の胸中を占めるものの、景色の美しさは事実。
風で舞い落ちてきた紅葉を手に取り、しげしげとみなとが眺めていれば、けたたましい音とともにMoeの声が聴こえた。
『システムエラー。ただ今よりゲームの更新を行います』
音声案内が終わると同時にわらわらと人が出てくる。見知った人はいないものの、誰かがいるという現実に安堵しかけた瞬間、湊ははたと思った。
(僕が久々に来た人だというのに、なぜこんなに人が?)
取り敢えずと、一番近くの男性に声を掛けた。
「あの、今のは一体?」
みなとが声を掛けた男性は、一瞥をくれると、馬鹿野郎とだけいって走り去ってしまう。後から来た女性が通りすがりに補足してくれた。
「更新されたらこの世界に閉じ込められちゃうの。だから、早く部屋へ行かなきゃなの」
部屋? と訊いたものの、答えは帰ってこなかった。あまりにも周りが急ぐものだから、みなとも駆け足で後をついていく。やがて、たどり着いた場所は5人くらいが集まった殺風景な部屋だった。それこそ、最初にいた場所そっくりな。
いま部屋にいるのは、先程質問に答えてくれた人を含めた女性が2人と、男性が2人。全員ゲームでも見たことがない人たちだった。大した人数もいないCONNECTED WORLDで、湊はかなり古参の部類に入る。そうなると4人全員を認知していないことに違和感は拭えないが、ありえなくはない。
「えっと、みなさんはどうしてこの世界に?」
「そりゃお前、俺等を退屈させないようにだな」
みなとの問いに答えたのは一人の男性だった。名を訊くとハルだという。他の人も順に、もう一人の男性がユウト、女性の一人目がノゾミ、先程の人はヨーコと名乗った。
「僕はこれ一回目なんですけど、みなさんは何度も経験されてらっしゃるんです?」
「まぁね。ゲームだから更新はしょっちゅうよ。でも、なーんか放送変だったじゃない?」
ノゾミが同意を求めるものの、ユウトが軽く頷く以外は、皆、何の反応も示さなかった。
「変、ですか?」
「そうそう。聴いたことない声っていうかぁ」
「え、あの声はMoeの声だと思いますけど」
みなとが言うと、4人共から不思議そうなで見られる。少ししてからハルが口を開いた。
「Moe? 誰だそれ」
「えっと、白い翼のある僕くらいの女の子……」
「そんな奴知らないぞ? 俺等はミミがお詫びにと遊ばせてくれてるんだ」
今度はユウトが口を挟んだ。ミミ……このゲームの開発者の名前と同じだ。そういえば、Moeという名前もCONNECTED WORLD内で見たことがあったような……などとくだらないことを湊が思っていると、ヨーコがみなとへ質問をしてくる。




