第二話
軽く謝罪をしたのは、湊と対して変わりなさそうな年齢の少女。だが、その背からは白い翼が生え、明らかに人ではないなにかであると判らされた。そして、その姿は何処か湊にとって既視感のあるものだった。
「えと、ちょっと理解が追いつかないんだけど……まず、CONNECT THE WORLD? CONNECTED WORLDじゃなくて?」
「お、そこからかい。普通はあたしが誰か訊く人が多いんだけど。そう、ここはCONNECT THE WORLD。君がこれから頑張ってCONNECTEDにするんだ」
「は、え、は?」
「まぁまぁ、上で説明するからはやくおいでよ」
少女は後ろを振り返らずに階段を登っていく。湊は慌てて後を追った。地上(?)に近づけば近づくほど光は増し、やがて広々とした世界に到着した。そこはCONNECTED WORLDのありとあらゆるマップが移り変わって見える、摩訶不思議な場所だった。
そんな場所に、一つだけ場違いとも思える椅子があった。少女はそこに手慣れたように腰掛けてから、思いだしたように指を鳴らした。途端にもう一つ椅子が出現し、少女はそこへ湊を勧める。
「あ、りがとう?」
「んー、それで、この世界の説明から始めよっか」
「あーっと、一応CONNECTED WORLD……みたいな場所ではあるんだよね?」
「そそ。けど、なーんか繋がりが切れちゃって。ほら、さっきからマップを転々としてるでしょ?」
そういう世界ではなかったんだ。という言葉は喉元に押し留め、湊は軽く頷いた。
「で、ゲーム的にやばいから直すんだけど、内部から直さなきゃで。君はその巻き込まれ事故かな」
「え゛?」
「暫くしてたら帰れると思うけど、どうする?」
「え、っと、なにが?」
「折角なら遊んでく? 生身で体験とか、一生に一度すぎるチャンスだよ?」
その言葉は、湊にとって確かに魅力的だった。なにせ、あの美しいグラフィックをこの目で確かめることができるうえに、キャラを通してではなく、自分自身で体感できる。水の冷たさも、武器の重量も、存在するかもしれない風も。その魅力に抗えるわけもなかった。
「あーっと、すっげぇしたいけど、時間とか……母さん心配してるかもだし、それに、なんか問題とか起こりそうじゃない?」
「そうだねぇ、ここじゃ時間の流れはないから、戻っても一秒も経ってないよ。問題に関しては、死んじゃったら存在ごと消えちゃうねってところは、まぁ……」
死。ゲーム内でキャラを殺した回数を考えてみる。0。強敵との戦闘は避けてレベルアップしてきたし、ギルドで強いやつに守ってもらいながらダンジョン探索した。ここに来る人が久しぶりということは、誰かの補助は期待できないものの――死にはしないだろう。
そう判断した湊は、それならば。と頷いていた。
「じゃあ、楽しませてもらう。ところで、あんたは結局?」
「あたしはMoe。それじゃあ、君のユーザーネームを教えてよ。キャラの中に君を入れるからね」
「Moe? あ、ユーザーネーム……えと、@chitose0724」
「オッケー。それじゃ、いってらっしゃーい!」
Moeの言葉とともに視界がぐにゃりと歪み、やがて見知った世界へと着く。始まりのマップ。ゲームと違うのは、全然人がいないこと。等身大で見る街に感動するとともに、湊――否、この世界ではみなとが正しいだろうか――は、自身の身体の変化に驚きを隠せないでいた。




