最高傑作
掲載日:2025/11/11
袴姿の作家は壇上で頭を下げた。
「――あぁ、誠に申し訳御座いません。
私めは意図せず、大嘘をついてしまいました。
前回、私めはあなた方に
『人生最大の最高傑作!これ以上の作品はありません!』
と啖呵を切りました。
それほど前作は私自身もとても気に入り、
お陰様で大盛況の運びとなりました。
その説は、誠に有難う御座いました。
ですが……ですが、です」
薄暗い照明のショッピングモールの特設会場は静まり返った。
カシャン――と、スポットライトが灯る。
「今宵、ここに新作を発表致します。
――ドドンッ!」
ショッピングモールの会場からは、大きな歓声があがった。
「あぁ、この度は前言撤回せざるを得ません。
これこそが人生最高傑作、我が魂のラスボスで暫定一位です」
会場には大きな笑い声が響いた。
「いやー、面白い。
読めば寿命が縮むほどの衝撃が巻き起こり、
さらには裏切りの連続によって魂に鳥肌が立ちます。
充分注意してお楽しみ下さい。
そうそう、タイトルは――
『人生の最高傑作2』です」
一瞬の沈黙のあと、
ざわ……ざわ……と広がる苦笑に変わった。
「まさか、本気にしました?
ですが傑作とは、超えるためにあるのです」
会場は大きく湧いた。




