あれ、終わった?
『バスの運転手さんに取り憑いてたんだね。いたいけな高校生にデスゲームでもさせようとしたのかな?皆がかわいそうだからやめてくれる?父と子と聖霊の御名において、汝正体を顕せ』
踏みつける足と、銀のロザリオが見切れて映像は途切れた。
そして何がなんだかわからないが、頭上に浴びせられる霧雨。
「父と子と聖霊の御名において、正体を顕せ」
清野が背負っていたのはバックなどではなく、噴霧消毒用のタンクだった。
「清野さん!?」
「聖水を掛けてます。人の躰を欲する悪しきモノよ、去れ」
バン。
ドアを開けると、黒い何かがいっせいにでていくのが見えた。
同時に生徒の三分の一が倒れ込んでいる。
「手分けして皆を運んで下さい。脱出しますよ」
玄関外では担任と学級委員長とクラスメイト女子1人が、バスに生徒の手荷物を積み込んでいた。
「おー、皆正気になったか。早く乗れ。忘れ物あったらあきらめてくれ」
生徒を乗せたバスは、山道を走り出す。
見えなくなるほど距離を取った辺で、担任は一番近くに座っていた清野に言った。
「やれ」
「はい。先生」
清野は先生のパソコンを開いて何やらやっている。
後部席には意識を失った生徒とバスのドライバー、げっそりした顔のクラスメイトはぶつぶつ呟いていた。
「みんな学習してよ、急に私たちが見えなくなって怖かったんだよ。御守り3つも壊れたし」
バスに残っていたクラスの女子がジャラ付けしている各種御守りを見せつけた。
委員長も巾着から珠を取り出す。
「僕も2つ壊れた。水晶高かったのにこんなにくすんで弾け飛んだ」
こちらは天然石の数珠ブレスレットの破片を見せた。その手首には、数珠ブレスレット。ポケットからはロザリオが見える。
「御守りひとつなのがいけなかったってことかぁ」
「後ろの奴らなんも持ってなかったのか?流石に学習しようぜ」
「4月は何もなかったら安心したらコレですよ・・・わかってたけど」
「そもそも進級したのにクラス替え無かったのおかしいだろ」
「親説得して外部受験するんだった」
「あーもぅ、いつから意識操作されてた!他のクラス居ないのに気が付かないなんて!」
わっとクラスメイトが、堰を切ったように、思い思い叫ぶ。
「佐山。どう?3組はじめての遠足。まぁ、これから向かうんだけど」
なんにもなかったような神矢に、佐山は少し考えて答えた。
「どゆこと?」
「佐山がおおらか過ぎる」
クラスメイトが頭を抱えた。
「逸材だからな」
「高校から入学で、まさか神矢と清野と仲良く出来るのが来ると誰が思う」
「人をヤバいヤツみたいに言わないでくれる?」
「巻き込まれてるのは私たちだって同じです。10人も取りつかれるなんて信心が足りないですよ」
「先生〜。本当の宿泊場所いつつ着くんですか?」
「たぶん夜」
クラスメイトが言うには、中学から変わらないこのクラス。なぜだかホラーでサスペンスな事件の遭遇するのだという。
最初は怪我や命の危機的なこともあったが、担任が代わったのと、神矢と清野が今日みたいな感じで解決で終るのがパターン化しているのだという。
「3年間よろしくな。呪われた3組へようこそ」
「呪われるのは勘弁かな」
佐山威冴久は困った顔で頬をかいた。
(そういえばバスの運転手さんって・・・)