リフォームされてるから怖くないよ
全寮制男子校は改修され、生徒の学修合宿や部活の合宿を優先するものの、他校の合宿や企業の研修、などにも使われているそうで外観よりは近代的な内装になっていた。
寝室の寮部屋は、窓に鉄格子の二人部屋。
「ベッドが大きいね。前は備え付け1畳の2段ベッド8床だったらしいよ。今じゃ1畳だと寝られないよね」
「8人でこの部屋嫌すぎる」
「それは思う」
荷物を整理して、講義室に向かう。
制服でなく私服OKなため、なぜ英語のプリント白Tシャツの佐山だったが、神矢を見るとぴしっとシャツを着ている。
「僕、シャツ派なんだ」
視線に気がついた神矢が困った顔ではっきり言った。
「Tシャツとか下着にしか思え無くて」
「俺、下着姿で歩いてるように見えてるのか?」
「白Tとかパンツで歩いてるようになんて見えてないよ」
「神矢〜!」
仄暗い廊下を学習室に歩いていると、通り過ぎた部屋のドアが開いた。
佐山は振り返り、10センチほど開いて止まったドアを閉める。
誰か締め損ねて通りかかった拍子に開いたのだろう。
「・・・よし、ぅわっ!」
姿勢を戻すと、思ったより近くに神矢がいた。
「佐山。僕ちょっと忘れ物した。先に行っててくれる?遅れたらそう先生に言って」
「え?わかった。先行ってる」
階段を降りる佐山が見えなくなるまで、神矢はにっこりと手を振り佐山を見送る。
そして、見えなくなるといつもの穏やかな笑顔が消失し、佐山の閉めたドアを躊躇いなく開けるとその部屋に入った。