オレンジジュース
ありし日。夫が存命だったころ。
コーポの一階に住んでいて、庭に水蓮鉢を連ね、ヒメダカが大繁殖。出目金と丹頂が大きくゆらゆらとバケツに揺らぎ、布袋草が花をつけ、どこからかバッタが来て住み着いて、生命に溢れていた。
家の中ではコンゴウフグ、ハチノジフグ、ミドリフグ、シマキンチャクフグ、ハゼ、南米淡水フグといった水槽が立ち並び、どれにも均等に愛情を注ぎ、世話をした。
赤い折りたたみ椅子を庭に置いて、ガッチガチに冷やしたうえに氷を浮かべたオレンジジュースを飲んで、幸せな時はゆっくり流れていった。
あれから10年くらい経っただろうか?
今でも、オレンジジュースを飲むと幸せな気分になる。
味わいながら、想いを馳せる。
あの頃も幸せだったけれど、今だって負けないくらい幸せだ。
あんまり好きすぎて、濃縮還元のオレンジジュースをがぶ飲みし続けていたら、母が、肝臓か腎臓に悪いから飲むな、と禁止令を出した。
最近は貧血で鉄剤を飲んでいた時に麦茶が良いと聞いていたので、麦茶ばかり飲んでいたが、
ある夜。近所のコンビニへ行き、オレンジジュースを買ってしまった。
やっぱり、たまには良いよね?と自分に言い聞かせ、ちょっぴりの罪悪感と共に飲んだ。