11 英雄神話
「はァア──!? 漫画の青春みたいな展開やってんじゃねぇよ!? それ後で絶対に俺が始末書とか書くやつだろ! 書くやつだろぉ!! 一年坊主ども、戻ってこいよぉ!」
……前線での方針を通信機で聞いた担任教師、芒原鷹雅はそう叫び散らしていた。
斬世たちがいる戦線より、二百メートルほど離れた後方地点。廃ビルの屋上に立っていた彼は、そうやって教師としての最低限の愚痴を口にしたあと、ピッと通話を切って。
「──よし。つぅワケだわ如月、急いで合流してやれ。今間に合えば強力な助っ人枠として、或いは頼れる友人A枠としてお前は認定されるだろうっ!」
「だから先に俺をこっちに呼ぶような真似を……」
芒原の背後には、さきほど合流したばかりの如月良夜の姿がある。
平凡な少年の周囲には巨大な影。それは悠々と大空を飛行する──白銀の──
「っていうか止めないんですね先生。なんでそんなにノリノリ?」
「バッカお前、俺はなぁ、こういう風に主人公の影で助ける、『掴みどころのない教師ムーヴ』をやりたくて教師になったようなもんだぞ!? これでノらなくていつノるんだよ!?」
「最低の志望理由だァ……」
如月良夜の中で、密かに芒原教師の評価が下方修正される。
それを知る由もないだろう彼に、しかし良夜は問いを続ける。
「でも先生、本気でヤバイって時は助けに来てくれますよね? 自分の責任になるのが怖いから。斬世たちの好きにさせるってことは、やっぱりレティちゃんの力をアテにしてます?」
「ったり前だろ。あんな伝説精霊がいなかったら全員強制送還してる所だ。それに今回は、精霊士としての刈間の適性も見たいしな……」
「あぁ……契約したばかりですもんね。そういえば斬世って入学テストの実技項目、何点だったんです?」
「……」
その質問に、芒原は逡巡して口を閉じる。
精霊士の実技テスト。本来それは、入学試験の一つとして行われているものだが、スカウトされた刈間斬世は、入学した後の四月に一度受けたきりだ。結果は──
「ん……まぁ……最低限、実戦合格基準は満たしてるぞ」
「……もしかして、割とぎりぎり?」
「いやその逆っつーか……まあ、割と高得点だったぞ、ウン」
「?」
教師の煮え切らない答えに、生徒は不思議そうな顔をするばかりだ。守秘義務かな? とやがて勝手に納得して、良夜はひとまずそこで質問を切り上げる。
(……ま、刈間だけじゃなく……あの英雄精霊様の実力を直接確認したい、ってのもあるけどな)
片や現代に復活した英雄。片や学園史上、異常な実技成績を叩き出した元落第生。
そんな彼らを思い──芒原は胃が痛むどころか、往年の少年心を弾ませるばかりだった。
◆
天から降る光線が、行く手を阻む地上の魔獣たちを蹴散らしていく。
だが境界が不安定になっている影響か、消滅しながら次の魔獣が出現するなんて地獄が発生していた。
一瞬の中で刀を振り抜き、通した斬撃で害獣たちを捌ききる。近接戦向きの武器で、こうも広範囲に攻撃を届かせられるのは契約武装ならではだろう。
「……ねえアンタ、本当にさっき契約武装を手に入れたばかりなの? 新人とは思えない練度だけど」
俺に並走するように隣の空中を飛ぶアイカが、そんな事を言ってくる。
光線の中から再出現してくる魔獣を斬り飛ばしながら俺は答える。
「本当についさっき、だ。まぁ、使いやすい武器ってのが大きいな」
意訳すると、レスティアートのお陰だと俺は言う。
「剣、習ってたの?」
「……『習う』、とは少し違うが」
「?」
俺が爺から叩き込まれたのは、徹底して一つだけだ。
魔のみを斬る刀。
ゼロから学ぶものではなく、既にあった凶器を研ぎ直す作業。
俺にとって鍛錬とは、そういうものだった。
「……まあ、界域にはちょくちょく縁があったんだよ。生還するだけなら、自信はある」
「なにそれ、どういうコト?」
目を逸らす。
「……教えない」
「教えなさいよー!? ッて、うしろ──」
アイカが言うと同時に、死角から飛び掛かってきた魔獣を両断する。
副会長がいる戦線まであと少しといった所だ。同時に魔獣が増えすぎてきて厄介だが。
「……アンタ、ホントに人間?」
「一般人だ」
ウソね、と赤ロリは信じようとしない。まぁ、一般人は過言だったかもしれない。
その時、視界の端を氷の矢が飛んでいく。上から援護射撃している奏宮によるものだ。それによってビル壁や瓦礫から出現してきていた魔獣たちが一掃される。凍土世界、見事なもんだ。
「──カエデさん! 下がってください!」
「ッ──!?」
と、前方の戦線でも動きがあった。
華楓に追いついたレティが声をかけるや否や、伸びてきた巨人の右腕を光線で消し飛ばす。そこで崩壊けた影の断片は、細々とした魔獣となり地を這い始める。
シェイプシフター、要は大量の魔獣の集合体らしい。最前線産って恐ろしいな……
「君、どこの精霊──……って、か、刈間斬世!?」
近場の魔物を斬り伏せていると、奏宮華楓の視界に入ったらしい。なんだ、その鬼でも見たかのような動揺っぷりは。
ともあれ、架鈴のお陰で、ここらの魔獣の出現頻度は落ち着いたので空を仰ぐ。
「俺だ、副会長。そしてそこの白くてカワイーのは俺の契約精霊だ。苦戦してるみてぇで見てられないから手伝いたいんだと」
「ディ、ディア。伝え方に語弊があるような……」
「誰が貴様の力など借りるかッ!? というか、待て。その横にいるのはアイカか!?」
……おかしいな。俺は「レティが」手伝いたいのだと、そう遠まわしに言ったハズなんだが、なぜか俺へのヘイトが買われている。なぜだ。
「そうだ。お前んトコの妹にも協力してもらってる。つーか、協力してるんだがな」
「なっ……なんのつもりで……私の妹に何をした! 私に借りを作ろうなど百年早い!」
「だッから、俺はお前の妹に協力させられてんの! お前のことなんざ正直どうでもいいわ! 自意識過剰か、恥ずかしい勘違い女! 分かったらさっさとアレを倒して俺を帰らせろ! レティとイチャイチャさせろォ!!」
「がッ──な、なん、だと……は、恥ずかしい女……」
グッサァ、となんか言葉の刃がモロに突き刺さったらしい。空中で奏宮華楓がぐらりと揺れる。後が若干だけ怖いが、今はそれで平静を取り戻してくれれば全て良し。
『……カエデさんとディア、何があったんですか……?』
『いや、マジでなんもねぇよ。俺が知りたいくらいだわ』
『えぇ……?』
どこぞで勘違いさせる言動でもしてしまったんだろうか。切っ掛けに心当たりがまったくない辺り、俺のあの女への恐怖度は他より群を抜いている。知らないフラグだぜ……
「?? よく分かんないけど、カエデ! 私たちはアンタを援護するために来たの。一人でシェイプシフターに挑むなんて無茶よ! レーヴァだけで勝てると本気で思ってる!?」
レーヴァ……というのは、副会長の奴の契約精霊のことか?
レティやアイカのように姿は見えないが……やっぱり、あの鎧なんだろうか。
「……気持ちは有難いが、お前たちがいても足手まといだ。第一、守りながらでは──」
「皆さんのことは私が守ります。カエデさん、まだ霊力は残っていますね?」
「──、それなりには……だが、先ほどのような攻撃は、あと一度しか」
「それだけ分かれば十分です」
刹那、新たに立ち上がってきた地上の魔獣を、レティの光線が吹き飛ばす。
……何度か見て分かってきたが、本当に卓越している。直線状の光線をこうも無駄なく、必要な出力に調整して撃つのは、現象としては単純に見えても技術的には非常に難しい。
他の精霊は大抵、生まれ持った力をそのまま利用し、力のままに振るう。
アイカもその一人だ。一方、レティのように「工夫」を加え、「経験」を重ね、「技術」として振るうのは、人間じみた行為である。
初めから上位の存在として生まれた者が、技を更に洗練する。
その必要があったから、そうしたのか。
そうせざるを得なかったから、そうなったのか。
あいつの本当の英雄譚は、どういうものだったんだ……?
「カエデさんの振るう霊力を、私が調整します。より高密度に、より破壊的になるように。その他の雑務はこちらにお任せください」
「え────だ、だがっ」
《────────ッ!!》
漆黒の魔獣が吼えた。その半身を生やした高層ビルが、みるみる内に朽ち果てていく。
先ほどレティが消し飛ばした右腕が再生する。空間が揺らぎ、辺りが蜃気楼のように歪んで見えた。
「二人とも、危な──ッ!!」
アイカが叫んだ時、俺は走り出していた。
シェイプシフターの右腕が無造作に空中の二人に振るわれる。即座に応戦したレティが消し飛ばすが、バラけ、生き残った魔獣たちの動きは止まらない。
奴らは自分たちの存在を連結させ、彼女という天敵一人を潰すために全霊を懸ける。
──まるでそれは津波だった。宙から地面、うねり上がった魔獣の「波」が、レスティアートたちを飲み込みにかかる。
そこに、
「人の女に群れてんじゃねぇ、雑魚が」
斬撃を通した。
剣を振るう時、何かを考えることはない。雑念など全て邪魔になる。“想いを乗せる”といったこともない。刃が重くなるだけだ。鈍るだけだ。──どれだけ愛を誓おうが、刃を振る一時だけ、俺は無感動で無機質な機構になるしかない。
人はそれを天賦の才だという。
初めから完成している才能。こんなものが羨ましいなどと。
まるで、剣を振るうだけの人形みたいだって言うのにな。
──『だからお前は、絶対に人を斬らないように鍛錬するんだよ』
遠い記憶の中で、爺にそう言われたことを思い出した。だがそんな回顧はほんの一瞬。
斬り裂かれた魔獣たちは断末魔もなく消えていく。俺はレティたちの近くまで駆けながら、斬撃を振り放っただけ。傍から見れば、刹那にして周囲の魔獣が消滅したようだったかもしれない。
《──────!?》
遅れて飛ばした一閃が、シェイプシフターの姿に袈裟斬りの線を入れた。
奴の動きが硬直する。このまま眺めていれば崩れ落ちるかもしれない。だが、それでは奴を構成する魔獣たちが野に放たれるだけだ。
「──レティ!」
「ッ! カエデさん、やってください! 信じて!」
「──承知した……!!」
シェイプシフターが吼える中、騎士が再び大剣を構える。
その間にも影の腕から伸びた触手じみたものが襲い掛かるが、ことごく光線の中に消えていく。俺の方でも、うじゃうじゃ沸いてくる魔獣を片っ端から斬り、それを援助する形で氷矢の雨が降ってくる。
決着はすぐだ。
天空で、極光が閃いた。
「──煌々と照らせ、〈熾天王剣〉!!」
解き放たれる必殺の一撃。
しかしそれは、先ほど目撃したものとは別物だった。
「──光塵、平伏。我が指のままに咲きなさい」
感情を排した人形のように。
レスティアートが唱えた瞬間、華楓の大剣から放たれた光は、一気に膨れ上がった。
「なッ……」
一番驚いたのは、剣の主たる華楓自身だろう。
無理もない。その光景は、己の霊力が倍に増強したかのようにも見えただろうから。
けれど霊力の総量は変わっていない。出力の仕方が変わっただけだ。
故に次の瞬間──この区画ごと覆うほどの光の波と化した斬撃は、シェイプシフターを丸ごと呑み込み、星が破裂したような破壊力を以って、完全に滅亡させた。
◆
「──ッッ」
視界が、しばらく飛んでいた。
真っ白に飛んでいた。
刀を振るう意識さえも刈り取る、圧倒的な破壊の奔流。
レティが霊力を操っただけでこれ。これで、まだ本人の力は使ってないというのだから、本当に底知れない。
それで当然、やっと目を開けられた時には、シェイプシフターなんて影も形も残っておらず、なんなら、その近場のビルも全てなくなって更地と化していた。
「……うわぉ」
ちょっと想像外の光景すぎる。
まだ廃都市の風情があった場所が、文明の面影も残さずにまっ平ら。
いや、主にシェイプシフターが取りついてた高層ビル周辺が消えただけで、他の区域のビル群は生き残っている。なので、完全に都市そのものが消し飛んだワケじゃあ、ないん……だが。
「こいつは……すげぇな。うん」
人間、語彙をなくすとそんな感想しか吐けなくなる。
少し歩くと、地面にアイカが落ちていた。後ろ首を掴んで起こしてみるが、目を回して気絶してやがる。霊力の膨張に当てられたか。
そんな赤ロリを小脇に抱えて、高層ビル跡地に近付いてみると、座り込んだ奏宮華楓を発見した。
「な、……なん……だ、今のは……」
もう鎧姿ではなく、普通の制服姿だった。呆然と、消し飛んだ白い大地を見つめている。
「よお、無事か」
「ッ! 貴様……!」
声をかけると、なんでか睨まれる。元気良いなこいつ。
「刈間斬世……貴様、一体何と契約した。一体、彼女は『何』だ!? 精霊なのか!?」
「レスティアートだ。大精霊レスティアート」
「レッ……」
ビッグネームの登場に、華楓が完全に硬直する。
それで色々とこの規格外さに納得がいったのか、見るからに動揺が収まっていく。
「なる、ほど……──それなら得心のいく部分もある。だが、分からん。なぜお前が彼女と契約している!? 一体全体、何があったんだ!?」
「あ~……その辺は学園長に口止めされてっから、言えねぇわ。悪ィな」
「っ……」
一応シラを切っておく。しかし学園長を示唆したことで、副会長様は黙らざるをえなくなったようだ。言い訳文句として万能だな、学園長。
「……何かに巻き込まれているのか?」
「何かってなんだよ。知らねぇよ。俺はレティと契約して微塵も後悔してないぜ。たとえこの先、何があろうとその一点は永遠に変わらない」
断言する。宣言する。
俺はあいつの契約者になれて、これほど誇らしいことはない、と。
「……そう、か。まあ、主従間の仲が良いのは、精霊士として及第点だな」
「主従って……いや別に、俺とレティの場合は恋人だけど……」
「コッ!?」
……お嬢様にはまだ早い概念だったんだろうか。奏宮華楓が石化する。
その時、瓦礫を踏みしめる足音が聞こえた。振り向いてみれば──架鈴だ。
「お姉ちゃん!」
「……」
「お、お姉ちゃん……?」
フリーズ中シスターに架鈴が怪訝な声をあげる。俺もよく分からんので肩をすくめるばかりだ。ついでに、抱えていたロリっ娘を返却する。
「ホラよ、てめえの相棒」
「あっ……う、うん。ありがとう……斬世くん、お姉ちゃんに何か……した?」
「知らねぇよ。どういう生態してんの、こいつ?」
っつーか、俺としてはこんなヘンな女のことはどうでもいいんだ。
『おーい、レティ? どこだ?』
辺りを見回しつつ、念話で呼びかけると──
『……ディア。事態はまだ何も解決していません』
そんなレスティアートの報告が聞こえた。
無事であることに安堵しつつも、未だ姿が見えない現状に不吉な予感を覚える。
『どういう事だ? シェイプシフタ―ってのはもう──』
『はい、そちらは完全に始末をつけました。ですから後は、この界域に残った問題です』
『……と、いうと』
『先の魔獣の出現によって、この第十四学区の境界は不安定になりました。界域から界域への移動を許した影響ですね。なので現在、あらゆる次元、異界、界域から──魔獣が集まり出しています』
「『はぁ!?』」
思わず声を上げると、奏宮姉妹がビクリとする。だがそんな事に構っている場合じゃない、今度こそ離脱しないと本当に取り返しのつかないことになる……!
『ふふ、安心してください。ディアのことも、他のみんなのことも、私が守りますから』
『──、何を』
『私のカッコいいところ、ちゃんと見ていてくださいね?』
いやまったく意味が分からないぞ──、と返す前に、レティの言葉が終わる。
と同時に、遥か天空から極光が差し込んだ。
「……レスティアート?」
そこに、白杖を携えた最愛が浮かんでいた。
◇
「……多いですね」
白き彼女はひとり、この界域に未だ潜む、残りの魔獣に辟易した。
「いえ……そもそもからして、ここは魔獣が多かった」
初めに、芒原という教員から報告された五十近くの魔獣数。そこから更に魔獣が増えていったと己の契約者も、他の精霊士も思い込んでいたが、実際は違う。
「およそ六万あまり……ここは魔獣の吹き溜まりと化している。ほとんど都市と一体化しちゃってるんですね。実に狡猾に進化したものです」
どこか讃えるような響きを伴って、少女は呟く。
よくぞここまで生き延びた。
よくもまあ、そこまで生き汚くやってきた。
上空から俯瞰できる塵を見ながら──古き時代の英雄は。
魔獣から忘れ去られた、彼らの絶対脅威は。
「ですからもう一度、思い出させてあげましょうか?」
その杖を構える。すると少女のまとう制服が光に包まれ、正規の戦装束が顕れる。
月白の衣装は西洋の結婚服のようだ。花嫁の瞳が、これ以上なく冷めきっていなければ。
これから行われるのは、先ほどの、他者の霊力を操った紛い物の破壊ではない。
もたらすのは彼女自身の、彼女が持つ、至高の殲滅術理。
英雄レスティアート。
破壊精霊レスティアート。
呪われた王女レスティアート。
多くの者たちが彼女を語り継いできた。
多くの者たちが彼女を崇め讃えてきた。
多くの者たちが、彼女を見殺しにした。
だがそこに彼女の私情は何も存在しない。あるのはシステマチックな行動原理ただ一つ。
──総ての魔獣を殲滅する。
それが彼女の生まれた唯一使命。
三千年前の英雄神話は、今日この日より、復活を遂げる。
「────〈光塵剣エスクード〉」
瞬間、地上の者らは皆、揃って光を見た。
まるで陽光が差したようだった。それも強烈な、地を焼き尽くすほどの陽射し。
だが、それはただの光だった。光でしかなかった。雨のように並べられて、整列された、凄烈な数の光剣の海が、この界域全土の空を覆い尽くしていたに過ぎなかった。
「──、────」
彼女の伴侶でさえ、言葉もない。
いや事ここに至って、知性体が、人類がなんらかの所感を持つなど、許されなかった。
アレは死そのものだ。
総ての魔獣を──異界の存在を焼き払う、絶対なる破壊の光。
現世を守護せし英雄の剣。
其は刃であり光であり終点を示す導きそのもの。
この界域全土の魔獣を討ち滅ぼすという、世界の意志の具現である。
「人の世を脅かす害獣よ、消え失せよ──我が銘の名の下に」
涼やかな音色が響く、天上遥か彼方。
そうして一斉に。
光の豪雨が──地上世界を埋め尽くした。




