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いち話 うわようじょつおい

頑張ったよ。


一日仕事だよ。うん僕暇だね。


キャラが安定しないよ。


ずいぶんとぐだぐだしてるよ。


ごめんなさい。

「何処だここは・・・そしてお前は誰だ」


 木、木、木。周りには杉に似たような木が視界を覆い尽くすほど生えており、おそらくここが森の中なのだということが分かる。

 そして目の前には全裸の幼女。


「よお。一応聞くけどお前転生者か?」


 幼女は気さくそうな笑みを浮かべて僕の顔を覗き込み、僕も聞きたかったことを口にした。


「ああ、お前もしかして大声で幼女になりたいとかって言ってた馬鹿か」

「あ? 自分幼女馬鹿にしとんのか」


 キレるポイントが常人と違うじゃないか。どうやらこいつは犯罪者予備軍だったようだ。いやもしかしたらもう手を出した後だったのかも知れない。


「別に幼女を貶したわけじゃない。お前に対して言ったんだ」


 そう僕が言うと安心したのかあからさまな表情をし、そか、と一言だけこぼした。


「そういやお前も幼女になりたかったんか? まあそりゃあな。幼女は最強やからしゃあないわ」

「いや、お前の理論はおかしい」


 ふふん、と鼻息を鳴らし、誇らしげに胸を張る幼女。姿が幼女なので見ていて微笑ましいが、こいつが言ったことを考えると違和感がぬぐえない。


 だがそれよりも、聞き捨てならない言葉が僕の耳に届いた。


「今お前、ボクを同類のように言ったな。もしかして今のボクは幼女なのか?」

「オレの目の前には、困惑顔を浮かべた超絶美幼女しかおらんけど?」


 ――グッバイマイグッドライフ


 やはりあのときこいつのせいで僕まで幼女にさせられたらしい。

 それなりの家に生まれて、それなりの生活をするという僕の計画が総崩れである。

 なぜロリなんだ。せめてショタがよかった。男に抱かれるしかないだなんて、元男としては完全にアウトである。ガチ百合に走れとでも言うのだろうか。


「まあ悩んでも仕方ないがな。せっかく幼女として新たな生が始まったんやから、楽しまな、もったいないで? 」

「考えなしにも程がある。大体お前、これから先如何するつもりなんだ。ボクたちは幼女だ。子供二人を全裸で森に放置なんて危険すぎる。それに食べ物は? 金を稼ぐために働けるのか? 幼女じゃできない事ばかりだ!」


 悲しきかな、今の僕は幼女なのである。一般に幼女といえば、親元で保護されて暮す年頃だ。けして全裸で森に放置プレイだなんて虐待もとい変態プレイを受けるような年頃ではないし、そんな事されて喜ぶ幼女などいやしないだろう。


「うっといな自分。大抵の事やったら死なへん、オレも自分も最強やんか」

「だからその幼女=最強 説は通用しないって言ってるだろ!・・・クッ、これから先如何すればいいんだ」


 何なんだこいつは。頭の中に幼女でも詰まっているのだろうか。さっきから口を開けば幼女幼女と、寝言は寝て言えと言いたい気分だ。


 そう心の中で毒づいていると、優しく肩を叩かれた。


「安心せえ。俺は最強になりたいって願ったんや。最強超絶美幼女になりたいってな? こう、どーんと」

「は? それがどうかし・・・まさか」


 そう言えば僕の現状は、こいつの大声によって作られた状況だった。

 つまるところ僕も最強なのである。如何最強なのかは知らないが、何かしらの技能を備えているに違いない。


「でかしたぞっ! 今ばかりはお前に感謝をせざるを得ないな」

「はははは、やめろや、照れるわ」


 腰に手を当て高笑いする幼女はひどく満足げだ。


 だが落ち着いてみれば如何最強なのかによって良いか悪いかが変わるではないか。

 生活能力あたりが最強であれば有りがたいのだが。


「それで、何が最強なんだ?」

「え? そんなん・・・・・・何や・・・は、はは、かまへんかまへん、幼女やし」


 前言撤回。この期に及んでまだ幼女言うか。


「お前、ボクを馬鹿にしてるのか?」

「そ、そうやなくてほんまにそこだけ抜けてんねんて! 信じいや・・・そ、それに今気づいてん、名前とか生前の事がさっぱり! な? お前も思い出してみ?」


 焦るように早口で言いきる目の前の幼女の瞳は、本気で訴えているように見えた。

 まあ別に、生前を思い出したくないということはないので思い出してみる、が。


「・・・ボクは誰だ? それどころか、男か女かさえも分からない。いや一人称的に男だったのかもしれないが・・・これは一体」

「多分仕様やな。オレも家族の事とかあんま思い出せん。まあ幼女が好きって事はばっちりやから問題無しやけどな」


 冷静な顔してなにを言っているんだこの幼女は。

 どうやらこいつの思考は常に幼女中心のようだ。余りあてにしない方が良さそうだ。


「益々持って追い込まれたな」

「? ・・・あんま関係無い思うけどな」


 こてん、と頭を傾けて疑問を浮かべる幼女は中身を考えても可愛いものだった。


「まあいい。それより検証だ」

「何を?」

「そんなの決まっている。何が最強なのか、想定でき行うことのできる範囲内の事を今から此処で試すんだ」


 そう言うとこいつは、おお、と子供のように瞳を輝かせた。


「せやったらまず魔法やな! ここファンタジーの世界やで?」

「・・・まあ魔法が使えれば一気に生存率が上がるな。やろう」


 魔法。僕が居た世界では、漫画やゲームの中でしか存在しなかったファンタジー世界には付き物な技術だ。

 それを今からできるのかもしれないと思ったら、なんだか少し気持ちが高ぶってくる。


「よっしゃ。ほんならまずは定番のメラやな」

「ふん、分かってないな。定番と言えばファイアーだろう」

「はあ? アホかお前、定番ゆうたらそんなんD○に決まっとるやろ。誰も○Fみたいなあんなオサレゲームせえへんわ」

「ほう。いい度胸だな幼女のくせに。○Fを悪く言うとは、たった今全国の○Fファンを敵にしたぞ。ふん。D○なんてシステムが古くてやってられないな」


 そう言うと、あからさまに顔をゆがませて歯を食いしばる幼女。

 空気はさっきと一転し、殺伐とした雰囲気に変わっていた。


「なんややるんか? ワレ」

「ああ、やってやる!」


 そう言うや否や、取っ組み合う僕と幼女。どうせお互い幼女だから拮抗して引き分けると思っていた、が。




「はははは、口ばっかやないか!」

「くそっ・・・なんだあの力」


 数秒後、僕は投げ飛ばされて地に伏していた。


 例えるなら、樹齢何百年の巨木相手に相撲を取った気分だった。大げさかもしれないが、やつの体はビクともせず、まるで象対蟻と言わんばかりの力の差を感じたのだ。


「どういうことだ? お前幼女のくせに力が・・・そうか」

「なんや今頃幼女の凄さに気づいたんか」


 違う。そうじゃなくて、所謂“最強”というやつだ。

 こいつは力が最強ということなのかもしれない。現にさっき、こいつの細うでからは信じられないほどの力強さを感じた。


「これが、最強って事だろうな。おそらく」

「あー・・・なるほどなあ・・・・・・は、はは・・・怪力幼女・・・きたでぇ、きたきたきたぁ! これや! これを待っとったんや!」


 きゃいきゃいとはしゃぐ幼女。ぶんぶんと振り回す腕は、もはや目で追えない。

 これで戦闘能力があることが分かった。多少生存率が上がったかもしれない。


 だがひとつ疑問が浮かんだ。僕はどうなのだ?


 こいつは尋常じゃない怪力。なら僕は? まさかあの老人、肝心なところを聞いていなかったのではないのか。だとしたら僕は唯の幼女という事になる。


「そんな・・・いやまさか」

「そう落ち込むなや。まだ魔法があんねんで」


 ・・・そうか。まだ魔法があるではないか。完全に忘れていた。


「それだっ・・・でもどうすれば」

「そんなん、適当に“雷よ”みたいな感じに言えばええんちゃうの? あとは強いイメージやな」


 ならばとばかりに奮起して立ち上がり、イメージし始める。


 想像するのは、荒波を覆いつくす黒々とした黒雲に、そこから伸びる荒々しい青い稲妻。


 翳した掌が熱を持ち、体からは青色の蒸気のような“もや”が立ち上っていた。


 あとは言葉を発するだけ。大きく息を吸い込み、腹の底から声を出す。


「“雷よ”」



 あとはもう圧倒されるだけだった。


 何もない虚空から突如現れた電気がびしびしと空にまんべんなく広がり、そこからは暴力と表現できるほどの雷が、轟音と共に森を侵略した。


 血管のように何本も枝分かれした雷は、当たった木々を燃える間もなく壊しつくしていく。数秒の間続いた轟音がやんだ後、そこには何もなかった。

 森にぽっかりと空き地ができてしまったのだ。僕のせいで。


 自分が生み出したであろうこの大惨事は現実味を帯びておらず、開いた口が塞がらないとはこういう事なのだろうな、と何処かへ現実逃避をしてしまう程の光景だった。


「うお・・・・・・これは、あかん」

「何なんだ、これは」


 事の重大さが沸々と湧いて出てくる。


 こんなことしたら目立つのではないか。

 もしここが誰かの土地だとしたら僕は弁償しなければならないのだろうか。

 もし誰かに見つかったら、国に連れて行かれて実験とか解剖とかされるのだろうか。

 そうでなくても慰み物とかにされてしまうのか。


「まずい、早く此処を逃げなければ」

「何その突飛な思考。自分格好よう見てみ」


 そう言われて改めて僕達が裸だという事に気づく。

 確かに、この格好で森の外へ出ようなどすればたちまち逮捕もしくはお持ち帰りをされるのがオチである。


「クッ、森の外に出るのは愚行か」

「せやから、此処でおとなしゅうしといた方がええんやないの? それにいざになってもなんとかなるやろ。オレは怪力幼女やし、自分魔法幼女やんか」


 ――魔法、幼女。


 魔法幼女。なんだその居そうで居なさそうな存在は。せめて少女だろ。


「その言い方はやめてくれ」

「なんで? ええやん魔法幼女。かわいらしいで? 自分」


 そう言うと、はははは、と大笑いをする目の前の幼女。笑うくらいなら言わなければいいものを、幼女に此処まで苛立ったのは初めてではないだろうか。


「ちっ・・・まあいい。ボク達の力は試せたんだ。これならそう易々と危険に晒される心配はない。それよりも今は服が欲しいな」

「せやなあ・・・あ。魔法で出してみい。こう、ドバーっと」

 

 魔法か。そう言えば何処までの事が出来るのか少し気になる。

 さすがに、即死とか生命創造とかはできないと思うが、回復とかぐらいまでならできるのだろうか。


 これはいい機会だ、とばかりに立ち上がり、熱が完全に引いた手を再び翳す。


 イメージするのは僕が生前良く来ていたTシャツである。


「“服よ”」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・」

「・・・」

「あれへんな」

「まさか戦闘のみなのか」



 残念極まりない。

 何という汎用性の無い魔法なのだ。怪力の方が使えるではないか。まあ何もできないよりマシなのだが。

 しかし僕はずいぶんと使い勝手の悪い能力を引かされたのだな。


「自分の無能さを改めて実感した」

「まあ、ドンマイ」


 ぽん、と優しく僕の肩に手を置き、何とも言えない慈悲に満ち溢れた表情を浮かべる幼女。 非常に腹が立つのはなぜだろう。


 肩に置かれた手を大ぶりに振り払い、ゆっくりと立ち上がる。


「やめてくれ。恥ずかしい」

「せやかて、へたる幼女慰めんとかわいそうやんか。それに自分めっちゃカワイイで?」

 

 そう言いにやにやと笑う幼女。ぱっと見は可愛らしいのだが、中身がだめだ。

 こいつは幼女無くして生きられないのだろうか。おそらく幼女中毒とかそんな感じなのだろう。そうに違いない。


「・・・とりあえず、これからの事を考えるぞ。異論は認めん」

「別に異論ないけど、やる事多いわ。ほんまに如何すんねん、この現状」


 確かに、こいつの言うとおりだ。今やらなければならない事が多すぎて、何からすればいいのか分からない。

 どうして森に全裸で放置なのだろう。

 せめて金と住まいが欲しかった。




「まあ、今は此処から出る事が一番だな」

「せやな・・・・・・あ? 今なんか物音せえへんかったか?」


 突然何を言い出すのかと思えば、僕をビビらせたいのだろうか。

 そんな古典的な事でビビるわけがない。


 だが僕は失念していた。先ほどの事件を。


 ほんの数分前、僕は森を更地にしたのである。気にならない人などいようか。絶対野次馬根性がある者が居るに決まっている。


 その事を僕は忘れていたのだ、完全に。


「・・・まさかと思うが・・・しかしボクには何も聞こえないぞ」

「どうやら聴力まで最強になっとるらしいで。オレの耳には届いとる、馬の足音に何かが揺れる音。そして人の話し声もな」


 兎並みの聴力を発揮した幼女が聞き耳を立ててから数分後、僕の耳にもはっきりと届く音が正面から迫ってきていた。


「まずいな、このままでは余り良くない結末しか思い浮かばんのだが」

「オレもや・・・・・・せやかて、ええ奴やったらどないすんねん。浅ましく恵んでもらうんか?」


 そんな事、僕のプライドが許さない。


「それはできない」

「お堅いお人やな・・・あとはまあ神にでも祈るしかないで」


 ぎり、と奥歯が軋み痛みが走る。


「どちらにせよ、迎え撃つ。できないとは言わせないぞ、怪力幼女」


 幼女の藍色の目が、スッと細くなった。


「自分こそ、あんなどえらい魔法とまでは言わんけど、わかっとるやろ? 魔法幼女さん」


 なんとなく、さっきまでの雰囲気と今の雰囲気は違う。

 緊張と後ろめたさが混ざった感じだ。

 それはそうだろう、なぜならこれから強盗まがいの事をするのだから。


「ほんなら魔法幼女さんに、任せるで」

「ああ、“雷よ”」


 さっきより弱いイメージで放ったそれは、おそらく見事に命中したのだろう。

 少し離れたところから、「ぎゃあ」と女の声が聞こえた。


「お、女?」


 そう、女である。

 僕の中には完全に、むさ苦しそうな野郎を想像していたのだが、予想をずれて女が来てしまっていたのだ。


「如何すんねん。とりあえずふんじばったで」


 ――なぜ亀甲縛りなんだ。そして手慣れすぎだろう・・・ロープはどこから・・・


 僕と、幼女の間に何とも言えない空気が漂い、幼女はやれやれと言わんばかりに首を振っていた。


 正直に言うと、女から物を奪う勇気が出ない。そして一言言わせてもらいたい。


「あれもこれも全部、お前のせいだ! この怪力幼女がっ!」


 この時に僕は直感した。ああ、此処から物語もとい面倒事が起き始めそうだな、と。


やばいしくったぞ。ロープはどこからでてきたのよ


でも修正しないよ、いいアイデアないんですよ、ぜんぜん

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