第2話 心と自我と本能と男性
少年が怪物を殺した時それを陰から40代くらいの男性が見ていたものがいた。この世界では今しがた少年が殺したような怪物がたくさんいたので、この世界の人々は普段から怪物と戦いながら生活していた。彼はいつも通り狩りに出かけた時に少年に出会ったのである。彼にとって少年はとても異常な存在だった。
まずとても暗い。まるで闇そのもののようにとても暗い、にもかかわらず周りに一切影響を与えない。そして見たところ武術の経験は無さそうなのに、攻撃にほとんど無駄がない、そして攻撃以外の動作には無駄なものがたくさんある。おかしい。彼は悩んだ末にひとつの予想を立てた。
彼は過去にとても辛いことがあって心が壊れてしまった、しかし心が壊れてもなお少年の自我は本能と化し生き続けた。だからこそ今少年は動いているのだと。攻撃に無駄がないのは心が壊れたことで雑念が入らず、敵を殺す際にどの動きが体にとって楽なのか、直感のみで動いているからなのだと。
彼は少年に強い興味を抱いた。そして急いで少年のもとに行き、話しかけた。
「少年!急に話しかけて申し訳ない。私はこの近くにすんでいるものだ。服装からして旅人だな?もしよければ私のもとに来ないか?食事と寝床を提供しよう。私は君に興味があるんだ、だから君と話をしたい。」
「・・・」
返事はなかった。
「もし、私の話に応じる気があるのならば、私の家に案内しよう」
「・・・」
数秒の間をおいて少年がこちらを見る。相変わらずくらい目だった。
「行くぞ」
男性は静かに歩きだした。後ろからは足音が聞こえてこなかったが振り返らなかった。ただひたすらにゆっくりと歩くことだけを考えた。
そして家に着く頃には日が暮れていた。