はい!今日はホモをバカにしてボコボコにしたいと思いまーす♪
新宿二丁目のバーで源二とオカマのフミエちゃんが飲んでいるとピンク色の髪の柄の悪そうな男が話しかけてきた。
「おじさんたちホモォ?ホモップルですかぁ?」
カメラマンやアシスタントもいるので芸能人だろうかと思っていたがどうやら違うようだ。
男たちは自分達を「ユーツーバー」だと名乗った。
「『京都大学卒業。投資家兼、格闘家兼、登録者350万人の人気ユーツーバー。ミッキー』でーす!社会のゴミをぶん殴って金儲けてんのよ~」
「社会のゴミかい?」
「そっ!おじさん達みたいな生産性のないホモップルとかね!」
フミエちゃんはゲイだが源二はゲイではない。
なのでホモップルとやらではないと源二が説明するとミッキーはターゲットをフミエちゃんに絞り、絡み始めた。
「おっさん。親に恥ずかしいと思わないの?ケツの穴舐めるときうんこの味しない?今も俺を見て勃起してんじゃないの?おじさん本当にキモいよ?」
「……」
店のママ(男)もゲイの客達も顔をしかめている。
フミエちゃんは男だが心は乙女だ。とうとう泣き出してしまった。
「……酷いこと言わないで。……帰ってよぉ」
見かねたママもミッキーを怒鳴り付けた。
「あんたら!勘定はいらないから帰んな!」
「視聴者の皆さん!聞きましたか!?善良な客にこの暴言!この対応!やっぱりホモは性癖も性格も歪んでますね!」
源二はため息をついて作業着の上着を脱いでミッキーの肩を叩いた。
「おい兄さん。外に行こうか?」
「あーーっとぉ?ここで暴漢の登場だ!彼はヤクザかチンピラか底辺土方か!?私!肩を殴られました!ミッキー大ピンチ!新宿二丁目は悪魔の巣窟だぁ!おい。ここで広告挟もうぜ?」
ミッキーは源二にある提案をしてきた。
「ねぇ。俺。アダルトチャンネルも持ってんのよ。俺が勝ったらノンケとホモのホモセックス撮らせてよ」
「いいよ」
慌ててフミエが止めてきてスマホでミッキーの動画を見せてきた。
「調べたけどこの人ヤバイわよ!」
格闘技大会で優勝。ヤクザ10人相手に一人で完勝。芸能人達と飲み会。どうやら本当に強くて本当に有名な男らしいと思ったが源二の怒りは収まらない。
「俺はやる」
「いいのよ源ちゃん。私たちが我慢すればいいの。こんな差別は慣れっこよ。私もいい年のおじさんだし……」
「慣れてねぇよ。泣いてるじゃねぇか。おじさんだから。ゲイだからって何言われても我慢しなきゃいけねぇのか?くだらねぇよ!」
「……源ちゃん」
「源ちゃん。あたいがあと30若かったらビショビショになってるわよ」
ママは戦争経験者のベテランオカマだ。
・
「ほっ!顔面いくよー」
ゴスゴスとおもしろい様にミッキーの拳が源二の顔面に当たる。源二の鼻からはおびただしい量の血が出ている。
「俺は顔面を打つよーって言ってるのに当たるねぇ。不思議だねぇ。よく言われるんだよね「来るのが分かってても避けられない魔法のパンチ」って。才能ありすぎて困っちゃうわー。誰か俺をとめちくりー!」
「二流だ。てめぇは」
「あん?」
「俺も顔面いくぞ」
源二のローキック。ミッキーは脚を上げてカットした……と思ったが顔面に痛みが走る。
「あれ?」
「腹。顔面。足いくぞ」
顔面と思ったら腹。足かと思ったら顔面。
ミッキーはまるで幻を見ているかのようだった。
「ウグッ!?」
全てクリーンヒットする。ミッキーの体がくの字に曲がった。
「お前の攻撃は避けなかっただけだよ。正当防衛にしたかったからな。クソガキ!口の聞き方からやりなおせぃ!」
「……んばっ」
腹部へのパンチ……に見せかけての後頭部への蹴り。
ミッキーはたたらを踏んでゴミ捨て場に倒れ気絶した。
「どこに何の攻撃が来るか分からない……これが幻影術だ」
スタッフとカメラマンも青ざめている。ミッキーが負けるとは1%も思っていなかったらしい。
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「900円!」
「えっ?」
「3000円!」
「えっ?えっ?なに?」
肉体派のオカマたちによる3人のオークションが流れるように始まった。
「人に条件をぶつけてきたんだ。お前らもリスクをおえよ。案外気持ちいいかもよ?」
最終的に6000円で買われた男達は夜の町に消えていった。
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・
・
『はいどぉも~♪ミッキーよぉん!今日はお尻の穴にビーズをぶちこんだままハッテン場に行こうと思いまぁーす♪』
「……」
ママとフミエは店のテレビでユーツーブを見ていた。あの夜。三人に何が起きたかは分からないが、どうやら格闘技系からオカマ系ユーツーバーに変わった様だ。
「ねぇママ。源ちゃんって何者?なんであんなに強いの……?」
「……」
ママは人差し指を鼻につけた。
その瞬間噂をすればとばかりに源二が店に現れた。
「よぉ」
源二はこの町では『新宿の守り神』と呼ばれている。