サマードリンク&サマードリンク 1,始業式 Humiko
1話ごとに目線変わるよー
始まった。中学生活。
この日に私達は、中学生になる。
4月の初めは誰もが緊張する。
クラス分け、クラスメイト、席順___。
色んな理由で、みんな心臓がバクバク。
いつもふざけてる男子も、超真面目な女子も、みんなね。
勿論私もその中の一人。
クラス分けの時、仲良しの子がほとんど2組に行ってしまった事を知る。
私も、2組が良かった。何で1組。
私が通う中学校___東中は、すぐ近くにある、東小学校と、北小学校からなる。
2つだけの小学校からなるので、全学年2組まで。
なので1組になる確率は高い。最初から1組など、なりたくなかった。
数字的に、2の方が好きなのに。私のラッキーナンバーは2なのに。
そんな思いを抱きながら、1組の教室に入る。
中は少しだけ騒がしかった。
多分、うるさいのは男子で、女子は隣の子達と話し合ってる。小声で。
どうでも良いけど。
黒板に、席が書いてある。
筆跡は担任だろうか。女の先生っぽい字だ。
私の席は、予想がつく。
『渡辺フミコ』____窓側、一番後ろの席だ。
この順は小学生からずっと、6年間続いていた。それが中学校でも有り得た。
『渡辺』だと、私より後ろの人はいないのだ。
『わたやま』とかいたらいいのに。六年間___+これから先、ずっとこの席か。
つまらないなぁ・・・。毎日毎日見る窓の景色。
中学生になったから、景色変わっていいじゃん___なんてね。
景色変わっても、見えるのは東校舎。窓越しに見えるのは3年生の顔。
ずーっとずーっとこのまんま。変わりやしない。
前の席、右の席が空いている。誰が座るだろうか。
今は8時5分だから、確か____あと15分はあるね。
15分以内に着けるかな、この二人。
5分程待ち、教室のドアが開いた。
誰もそちらは見ないけど、私だけ視線を移した。
女の子。私と違って、ロングヘア。胸辺りまである髪を、おろしている。
初めて着る東中の制服も、着こなしている。
私は制服を着るのが初めてで、何か変だった。
けどその女の子はシャキンと背筋を伸ばして、制服を目立たせている。
女の子は___私の所に歩み寄る。そして、前の席に座った。
この子か。可愛い子。この子が日本人だと、誇らしいな。
_____友達、居ないんだよな。
「ねぇ」
勇気を出して、前の子の肩を突く。
彼女は気付き、顔だけ少し、振り返ってくれた。
「?」
「名前___なんて言うの?」
「あ___私、山崎理恵って言います」
「理恵ちゃん」
「えっと___あなたは?」
「私ね、渡辺フミコ。よろしくね」
「フミコさん」
「呼び捨てで良いよ」
「フミコちゃん」
「理恵」
お互い、名前を呼び合っていると、何だか可笑しくなった。
理恵が笑いかけて来たので、私はその倍笑いかけた。
「フミコちゃん___何小から来たんですか?」
「私?東小」
「私北小学校です」
「いいね、北小学校。綺麗だったでしょ」
「え、全然!廊下に蜘蛛の巣あるくらい」
「それは嫌だな」
北小か〜。これは話題が盛り上がりそう。
彼女が話題を振ってくれるから、話しやすい。
私、良い子捕まえたかも。
これで、『友達いないぼっち』の名前が剥奪された。よかった〜。
「2組の先生、怖いらしいですよ」
「え、まじ?」
「元ラグビー選手だったそうで。筋肉とか___見た目も性格も怖いって噂です」
「宿題やってこなかったら殴るーみたいなタイプね」
「そうそう」
「1くみは___」
「女の先生らしいですよ」
「はぁ〜〜〜よかったぁ」
さっきまで『2組がよかった』って言ってたのに、急に変わっちゃった。
理恵と話してるの、めっちゃ楽しい。
気分が上がるっていうか、笑いが出てくるよね。
「あ、先生来たんじゃない?」
理恵がドアを指差す。
「ほんとだ」
ドアを開けたのは身長が少し低く、髪はボブ。可愛らしい先生だ。
始業式だから、服は中に白い服、外側に黒い服を来ている。
襟元にリボンつき。うふ、可愛い。
「おはようございます皆さん。1年1組担当の小林由美子です」
教室に拍手が巻き起こる。男子がヒューヒューしてるー。
まだガキだね。
「中学生になって、改めることが沢山あるかと思います。中学生は大きなテストが一年間に3回以上あります。勿論小さなテストもありますよ。そのテストでは学年順位がつけられますので、しっかり勉強して下さいね。あと、先生は嘘つきや、人や物を大切にしない人、人を騙す人は大嫌いですので、皆さん嫌われないように」
期末テスト。知ってます。
「フミコちゃん、聞いた?」
「うん」
「小林先生、案外怖いかも」
「同意見」
「でしょ」
中学生の担任は、怖くないと締まらないみたいだ。
でも私達まだ1年生。もうちょい優しめの先生が良かったかな。
先生の自己紹介が終了。
その後、教科書やノートなど色々、配られた。
明日は学校案内だそうだ。
楽しみで、ドキドキで、怖くもありそうな中学生活。
私のメンタル大丈夫かな。
クラスメイト24人と仲良く出来るかな___。
理恵はかばんを腕にかけ、挨拶をして別れた。
今日は早帰り。でも明後日から遅帰り。
教室の窓から見える景色は、早くも変わっていくのだ。
あざます