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努力って面倒臭い

やらないと、って思うと余計に面倒臭くなる件について。

外敵(エネミア)騒動も一段落がついて、今は街の復興に向かって周りは忙しい毎日を送っているらしい。


らしいと言うのは、私がとても限られた空間の中で生活しているから。

毎日オズの居るフロアに有るお母さんの御部屋で起床すると、お婆ちゃんとお母さんとでお父さんが作ってくれた朝食を食べる。


お父さんとお爺ちゃんは遠慮しているのか、その方が気楽だからか。

元々家族が過ごしいたスペースで過ごしてるらしい。

給仕で食事を運んでくれるお爺ちゃんも交えて、朝食を食べながら外の情報を聞くのが日課になりつつある。


お母さんの状態は安定して来ているけど、外で活動出来る程の余裕はまだ無いので、このフロアの中でお爺ちゃんが持ってきた花を花瓶に生けたり。

魔道具を使って洗濯物をしたりと、ゆったりと過ごしている。


お婆ちゃんはお母さんの様子を見ながら、診療記録を作成しつつ。

オズのフロアに持ち込んだ商売道具を使って、近所の人の依頼品を作ったり。

ゲルマンさんの依頼を作って過ごしている。


お爺ちゃんは私達の様子を見がてら宿の仕事をこなしているけど、今回の外敵(エネミア)の襲撃で仕事を失った人を雇って雇用を増やしたので、ホテルで言う支配人みたいな立場になった。

今まで家族が分担していた宿の仕事は、新しく雇った人達がお爺ちゃんに教えられながらこなしている感じ。


慣れない新人の仕事にミスがあってもお客さんが文句を言わないのは、他に泊まれる宿が殆ど無いから。


避難して来た人も、まだ元々住んでいた自宅が壊れているので継続して泊まっているのに。

中庭にも人が泊まっているせいで、満員御礼を通り越して、キャパシティーオーバーになっている。


宿泊費は中庭が1人銅貨10枚と、激安ながらも料金を取っているが。

もう街に外敵(エネミア)は一匹も残ってないけど、外に泊まるよりも良いと居座っている人が大勢いた。


確かにトイレやお風呂がタダで使えるから、その辺は外より便利なのかも知れない。

井戸も中庭に有るしね。


実は私が初めて経験しただけで、外敵(エネミア)の襲撃は頻繁に有るらしく。

何時もは第三外壁で食い止める事が多いそうだ。

それでも時には破られて中に入られる時も有るので、この街の人達は復興には慣れてる。


でもそんな人達も今回は勝手が違うようで、どうやら苦労しているらしい。

今回の襲撃で、マーズリーが多く含まれていたのが災いしているのだ。

宿の周りの土地から第二防壁までの大通りは、オズが浄化してくれて綺麗になってるけど。

他の汚染されている場所は、人が住むには健康面で難しくなっている。


そこの浄化を復興させないウチは、宿の従業員を増やしても経営出来るとお爺ちゃんが判断を下した。


それにオズが私の弟子入りまで入り浸るつもりで居るので、必要に借られて職員を増やさずに終えなかったとも言う。


何せオズが住んでるフロアには、限られた人しか出入りが出来ない魔術がかかっている。

つまりお爺ちゃんの手が此処に取られるのと、お母さんのリタイア。

お婆ちゃんも看病で側から離れられず。

私がオズのお世話件、弟子入りの為の勉強が始まった事で、今まで通りの家族経営が難しくなったことも大きかった。


ちなみに食堂の方も大きくキャパシティーオーバーになっており。

中庭だけで無く。

宿の外の大通りまで机や椅子を用意して、オープンテラス方式で料理を提供している。


これも他の食堂や宿が壊れて復興待ちの状態の影響が大きく。

次いで避難してる人達の台所代わりになっているからだ。


増やした職員はウェイトレスと、受付嬢と、皿洗い等の厨房補助員に始まり。

シェフも3人が追加され、お父さんがその人達を纏めるオーナーシェフに昇格した。


それでも客足が延々と途絶えないので、ずっと忙しく働いている。


ちなみに給料については、ウェイトレス等の外回り職員が中庭に避難して来た奥様方なので、家族が食べる1日の食事でお支払い。

シェフに関しては、賄いと宿の提供。

そして1月金貨1枚のお値段になっている。


金貨3枚の出費は高く思えるけど、それを補えるぐらいにお客さんがフィーバーしてるのだから仕方が無い。


食材の買い出しは、お爺ちゃんの代わりにマルクスお兄ちゃんの担当になった。


その代わり、ゲルマンさんが領主にこき使われており。

忙しく領主館に出入りしているらしい。

自分の商売は人を雇って壊れた店を手直しして、続けているのだとか。

元々の領主お抱えの商人さんと二人三脚で街の仕事に尽力しているのは、オズとの関係でゲルマンさんを使う時の為のカモフラージュなのだとか。


そうで無ければ領主お抱えの商人さんとの間に、他の商人が割り込む隙間は無い。

無用なトラブルを起こさない為にも、お抱え商人さんは事情を知っており。

本来なら仕方が無くてもいい顔をしない話でも、街の状況から壊滅的に忙しくなっているので、逆に歓迎されてこき使われているそうだ。


ゲルマンさんには良いのか悪いのか。

ちょっと悩む所だよね。

商人としてはランクアップをしてるんだけど、その分命掛けのお仕事が多くてストレスを抱えている。

何せオズのご指名だから、嫌とは言えないもんね。


そしてオズは私にお世話をされながら、悠々自適な生活を送っている。

彼の一番の目的だった、私の復活が一段落して育成に入っているので、他に抱えているお仕事は無いらしい。

寝ている時間が多いのは、ボットにして余所のアバターで遊んでいるのだろう。


その煽りを食らって暇をもて余しているのがマハトだ。

普段から研究で家に隠っているオズの護衛が仕事なだけに、日常と言えば日常らしいのだが。

森の自宅なら外に出て外敵(エネミア)を訓練や素材集めがてらに狩って過ごせるそうなのだが。

此処は生憎と街の中。


客が何時来るか分からないが。

来る率が森よりも高いので、オズの側から離れるに離れられない。

領主関連なら実際に人が来る前に情報が入って来るようになったけど。

これが第三者になると、来るかもどうかも分からない状態。

オズいわく。

良いも悪いも関係無く、オズに逢いたい人が多いのだそうだ。


だから今は適当に屋上に登って自主鍛練するか、オズの蔵書で読書をするぐらいしかマハトはやる事が無い。


そのせいかゲルマンさんに茶葉を色々と取り寄せさせて、美味しいお茶を良く入れてくれる。

武闘派な彼だけど、一応は魔導師なので調合は好きなのだそうだ。

だから自分好みの味や匂いに拘ってお茶をブレンドして私達に振る舞い、感想を聞く事に楽しみを見いだす様になった。


最近マハトが警備員じゃなくて、執事に見えて来たのは此処だけの秘密だ。


と、言う訳で。

私は今、全裸になった変態野郎の前で半眼になっている。


「…オズ。あさにきせたおようふくは?」


「うん。だってこぼしたら汚れちゃうだろ?

どうせお風呂に入るんだし、この方が楽でしょ。」


はい、宇宙人キターーーー!

弘樹にも良くあった彼にしか分からない謎行動。

今なら火の玉ボディに洋服は着ないから理解も出来るよ。

魔道具のお陰で手間は減ってるけど、洗濯するお母さんを気遣ってくれてるんだって事も。


それにアミルちゃんはまだ2歳児。

私が入ってるから、同年代の他の子よりかはこぼさずにご飯が食べれてると思うけど。

オズに食べさせるとなったら、やっぱりまだ身体が使い難くて良くこぼして仕舞う。


その時にしまった!と、慌てる私に罪悪感を抱かせない為にも、服を着なければ良いって発想になったんだね。


でもね?

全裸の男性の膝に座って給仕をする私の気持ちや、それを見せられるマハトやお婆ちゃんの気持ちも考えて欲しかった。


分からなかったんだよね?

火の玉ボディが基準だから全裸が恥ずかしいって思いが無いから、その姿を見た人の気持ちが。


それでも外に全裸で行かないのは、それがルールだと学習してるからだね?

確かにプライベートな場所なら服を脱ぐのは自由だよ。

でもね?

弘樹が松田家で全裸になるのと、オズがこの場所でなるのとでは状況が全然違うんだけどね?


いざ此れから食卓について食事を始めようって時に、お料理の準備をしてたらオズがいつの間にか服を脱いでたから、お婆ちゃんやマハトが彫刻になってるよ。


「あのね?オズ。

おかあさんのおしごとをふやさないように、きづかってくれたのはうれしいのよ?


こぼしたらわたしがおちこむから、それもかんがえてくれたんだよね?


でもそのままでこぼしたら、オズがやけどしちゃうよ。

だからおようふくはきたほうがいいとおもうの。」


「アミルは優しいなぁ。

でも火傷したって直ぐに治せるから平気だよ?」


「それでもオズがいたいでしょ?

おようふくにシミをつくるより。

オズがいたいほうがわたしはいやだよ。」


「そっかぁ。

じゃあ着ようかな。」


と、オズが着てくれたのは薄手のシャツ一枚。

それは彼シャツの男子バージョンですね。

分かります。

ズボンをはくのが面倒なだけだった事。

でも止めようね?

それでは大事な所がポロリしてるよ。

何せボタンも面倒がって止めて無いからね?


「ほら、オズ。

パンツやズボンもはいてね。」


「えー、直ぐに脱ぐんだよ?」


「きせてあげるから、ほら。

あしをあげてね。

オズはおおきなあかちゃんみたい。」


トラクンスバージョンの下着を履かせて紐を頑張って締めると、長ズボンも履かせてあげる。

そこでようやく後ろの方でホーッと、大きなため息がこぼれた。


マハト辺りは頭痛がするらしくて額を押さえているが、お婆ちゃんは頬を染めて視線を反らしていた。


オズは「どうせ脱ぐのにー。」と、未だに拗ねていたが、私のフォローのお陰でロリコン変態野郎から、面倒臭がりの変人辺りまで彼のイメージが回復した事だろう。


「んー、ボタンはちょっとむずかしいね…」


小さな光沢の有る、貝殻みたいなボタンは2歳児の私には紐よりも強敵だった。

だから上から4つ止めた所で飽きて力尽き。

へそだしルックになってるけど、まぁ全裸よりかはマシだろう。


「あ…いっこずれてた。」


「まぁどうせ脱ぐから良いよ。

冷めちゃうしね。」


そして痛恨のミス。

止めてた時には気付かなかったけど、一番上から一つづつボタンの場所がズレていた。


「そっか。じゃあごはんをたべよーね。」


そして今度は私もオズの提案を受け入れた。

面倒臭かったから。

でも几帳面な性格なのか。

ツカツカと真顔で歩いて来たマハトが、問答無用とばかりに無言で全てのボタンを外し。

あっという間に止めてくれた。


やっぱり執事だなー、と。

本物の執事を知らない私は、その姿を見てウンウンと1人頷いている。


「せっかくアミルがしてくれたのに。」


「うるさい!

さっさと食事をしろ!

と、言うか。

前から思ってたが1人で食え!

そしたらこぼすも何も無いだろう!」


「えー?アミルが食べさせてくれるから楽しいんじゃ無いか。

どうせ食器を並べられないんだし、それを止めさせたら彼女の仕事が無くなるよ。」


「本音が建前の前に出ているぞ!

幼子にさせる仕事では無いだろう!

パンを渡す程度にさせておけ!」


「んー。

じゃあ、パンをちぎって食べさせて貰おうかな?

スープは自分で飲めばこぼさなくて済むよね。」


こうして私の仕事が1つ減ったが特に文句は無い。

むしろ執事、良く言った!

ぐらいに感謝をしている。


そしてオズが食事を始めるのだが。

私が彼の膝に座ってスプーンを渡したり。

パンを千切って食べさせている姿を、マハトやお婆ちゃんが立ったまま眺めている姿がシュールだった。


お茶はマハトが入れてくれたけどね。


一緒に皆で食べれば良いのに、と思って聞いた事があったけど。

マハトはオズの食事中に襲撃をされたら直ぐに動ける様に警戒してるらしい。

誰も入れない結界を張ってる筈なのに、真面目かよ!と思ったが言わないでおいた。


お婆ちゃんの方は「緊張しちまうだろ。食事ぐらい好きに食べさせておくれよ」と、嫌そうな顔で全面的に拒否されてしまった。


オズに「1人で食べて寂しくない?」と聞いたら。「アミルが居てくれるから寂しくないよ。」と、言ってくれた。

でも自分で食べながらオズを食べさせるのは無理なので、今の形に落ち着いている。


付き合いたてのカップルかな?と、思ったけど。

無償で家庭教師をさせるのは世間のルールでは許され無いらしく。

私の労働が対価になってるので仕方が無い。

金銭で済まそうと思えば白金貨クラスの料金だとか。

それでも弟子入り前の家庭教師をするのは私だけなので貴重なのだそうだ。


高いな私の給仕。

まぁ単なる口実でしか無いのが丸分かりだ。

それなら対価なんて取らなきゃ良いのにと思うけど、それが社会のルールらしい。


非常事に通常価格で食材を売ってくれた時にも思ったけど、この世界の社会はタダと言う観念が無いんだろう。

不思議な話だけど、2歳児を受付嬢にして働かせる社会だと思えば納得かも知れない。




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