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第七話【忘れていた想い】

――帰り道、疲労感と共に全能感が溢れてくる。


この能力をしっかりと使えば、俺はこの世界で一番の存在になれるのではないかと。


現実的には一番になれずともそこそこの地位と名誉くらいは得られるのではと思ってしまう。


幸いに修めた魔法は……いや分野的には数えきれないほど手を付けたものがある。


レベル10がマックスとすればどれもこれも1~3程度が関の山だが、今の俺には力が漲っている。


『我が友アポロよ。考えが読めるのだが、それはやめておけと忠告しておく』


「なんでだよ! 俺はお前を通して魔法を引き出せる。魔法無効化のやつがいたって、筋力増強ビルドアップもできるし、色々な分野を学んできた!」


剣も槍も弓も体術も俺はそこそこ扱える。魔法回路パスが繋がっている今なら俺はなんだって出来るんだ。


『その気持ちはわかる。だがな、私はお前に日の目を浴びる道を歩んでほしい』


こいつが何を言っているかわからない。そんなこと言われなくたって歩いて見せる。その世界を共有したいのは契約だ。


……何より、俺がこいつに見せたいんだ。


「何に怯えている? お前がそれほど注意する存在は――」


『いる。お前が先ほど生命探知をした時に存在を感じた。私を封印した者がいるんだ』


「――っ。いるのか。先程の戦闘でバレてはいないか?」


冷汗が頬を伝う。全能感は失せて焦燥感が増してくる。あれだけの大きな魔法、気づかれてもおかしくはないか。


不備があったのか、警戒をしなくてはいけない。ダンジョン内という魔法が漏れない場所ならともかくとして、フィールドでぶっ放せば確実に伝わるだろう。


ホーンラビットのボス種として処理されるかどうかは怪しいところだが……魔石の暴発くらいで納められないだろうか。


『大丈夫だ。大規模戦闘はどこかで起こっているだろうし、あれしきの力でマークはされないだろう』


「ふぅ……ならよかったよ。この能力は他人に見せられないな」


軽率に使えば使うほど自分の首を絞めることになる。俺の処遇もわからんが、俺と繋がっているだろうドラもどうされちまうかわからない。


あくまでこいつは監視下に居る。いつかは解放してやりたいが、今の実力では不可能だ。王国軍を相手にするのもできやしない。


『気に病むな。私に世界を見せてくれているだけで、嬉しいのだから』


感傷に耽った声。俺にそこまで期待していたわけではないから、そういう反応にもなるだろう。


俺自身のレベルアップが必要だ。戦術も、使える魔法の幅と、柔軟に対応できるだけの知識を身に着ける。



待っててくれとは言えない。頂点からの景色を見せてやると約束もできない。


こいつが、昔見ていた景色をもう一度。そして俺自身も上から見るんだ。


二度と足手まといなんて言わせるものか。





心の奥底に封印していたはずの、忘れていたはずの劣等感が噴出してくる。


ギルドを追放されたことを忘れようとしていた。仕方ないことだと諦めようとしていた。


だけど、まだ俺は諦めたくなかった。力も……手に入れて執着し始めた。


クソっ……またこんな思いに苛まれるなんてな。


旧友セインと旅をするときから俺は、縁の下の力持ちで良いと思っていたんだ。


だが、結果はこれだ。認められようとは思っていなかった。ただ認めては欲しかった。


お前が必要だと言ってほしかった。本当にそれだけだった。


あのギルドで叶えたかったが、それはもう叶えることのできない願い。


ならば、もう認めてもらうには強くなるしかない。




『感情の揺れを感じる。大丈夫かアポロ』


「あぁ、大丈夫。ありがとう、ドラ」


石化竜ドラ。いやこいつの愛称みたいになっているが、ドラは流石に可哀想ではないか?


「ドラゴンからドラって呼んでるけどそれで満足か?」


『……名前は久しく呼ばれていないからな。気にもしていなかった』


そうか、1000年も喋ってなかったって言ってたしな。


『それに、ドラというのも親しみがあっていいだろう?』


「いや、ドラがいいならいいけどさ」


不満じゃないかなって思ってたけどそうでもなかったみたいだ。




帰ろう酒場に。酒場に入る前にちゃんとホーンラビットを出しておかないとな……

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