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第四十四話【強敵現る!?】

「ぜぇ……ぜぇ……マジできついんだがこの山……」


弱音を吐いちまうのも無理はない。1時間以上登っているが、頂上に辿り着くどころかまだ半分にも達していないと思う。


思うっていう疑問形になっている理由は、頂上が見えないからだ。


霧の様に魔力の膜が張ってあるのはともかくとして、厚い雲より先に頂上があるため、見ることができていない。


あたかも永遠に続く坂道を上っているような感覚に襲われる。


ただ登っているだけで精神力が奪われていくのはよろしくないな。


それだけでもクるものがあるっていうのに、モンスターの数が多い。


先の戦いの砂狼デザートウルフ程度にすぎないが、何度も何度も襲い掛かられると面倒になってくる。


消耗もできるだけしたくないのに、戦わざるを得ない状況に引きずれこまれると、体力と魔法力の確保が難しくなってくる。


なるほど、これが一つ目の試練ということか。爆発力だけでは決して突破させないという意思が伝わってきた。


そして、術中にはまっている自分の情けなさを感じる。


筋力強化ビルドアップを使えばもう少し体力を残すことは出来るだろう。


だがそれと比例してどんどんと魔法力は落ちていく。肝心なところで魔法が使えなくては戦えない。


出来るだけ自分の力で登りきらないと意味が無いのだ。


「これはパーティーでもきついだろうな」


『基礎体力がものを言うだろうからな』


前衛職ならば楽に登れるだろうが、後衛職はかなりの苦難を強いられるわな。


さらには――


炎弾フレイムバレット!」


指先から放たれた集束した炎の弾丸は、牙をのぞかせていた獣を焼き払う。


「殺気がひどいな、隠そうとするわけもないし、よっぽど下山させたいのかね」


そんなことをおちゃらけて言ってみるものの、自分の住処を荒らされるかもしれないと思えば当然の帰結。


仮に俺が同じ立場であっても襲い掛かるな。交渉できるかどうかはまた別の話だがな。


『……敵対されるのも無理はない。何故ならアポロの衣服に砂狼たちの死臭がこびりついている』


「こんなに獣を倒す前に言って欲しかったな」


あいつら獣からとったら仇が歩いているようなもの、もしくは獣に害する者として認識されるのは当たり前だ。


ドラが言わない気持ちもわかる。


やる気に満ち溢れていて、色々試したいと俺も確かに言っていた。


そして試すには十二分に実験できる場面が用意されていた。


最初は俺も嬉々として魔力残量を気にしながらも、試していた。


敵が多勢で攻めてきた際の演習や、風斧ウィンドアックスのもっと効果的な使い方。


一対一では立ち回りを強化し、遠距離からの魔法や武器に頼らないような戦い方を実践してきた。


それを見ていたからこそ、ドラは止めることをしなかった。


俺としてはなーんか敵が来るけど、こんな人の入らなさそうな山なら襲われても仕方ないなくらいにしか思っていない。


情報解像度の差というか、俺がまだまだ甘いっていうか。


なんにせよ、ドラにも全然追いつけてないんだなと思ってしまう。


『気に病むな。生きてきた歳月が違うのだから』


遠い場所を見ているような声。


確かに、俺が一足飛びで成長しているとはいえ、ドラに追いつくのは虫が良すぎる話だな。


「っと、せっかくだし浄化魔法を使っておかないとな」


念じる。全ての呪いや身体中の穢れを清めるイメージを作り出す。


浄化リダート


周囲の空気と共に、一瞬風が巻き上がり、自身を包み込んだ後に霧散する。


「すげぇな」


漏れる感嘆の一言。不自然なほど綺麗になる俺。


周りの魔力の霧ごと吹き飛ばしたが、すぐに元通りになっている。


これくらいじゃあ、浄化はできないってことだか。


ドラの魔力が少なからず流れているから威力が底上げされているの自覚する。


「見事な魔法だな、侵入者よ」


俺を讃える声が前から聞こえる。


「誰だ!?」


このフィールドではおいそれと感知できないのが怖い。


どれだけ強かろうと推し量るのが難しい。


それでもだ、目の前の敵が強いのだけはわかる。


吹き荒ぶ風が俺の頬に打ち付ける。


白みがかった霧を吹き飛ばし、現れたのは人型をした鳥……バードマンだった。

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