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第三話【邂逅遭遇】

「暇だな……」


始まりの洞窟―エーズィーの洞窟―冒険者の思い出にも残り、昔はセインと二人で攻略したダンジョン。


簡単な二階層の洞窟になっていて、多少のモンスターを討伐すれば地下への階段が発現し、ここのボスを倒して終わりだ。


低級レベルのモンスター……ゴブリンやスライム、コウモリ程度のモンスターしかいない。


一人旅ならばともかく、騎士や武闘家、魔法使いに修道士がいればそうそう負けない……というよりも負けることの方が難しい。


このダンジョンのボスは固定でトードキングと決められている。


定期的に国の連中が召喚陣を作りモンスターを呼び込み、駆け出しの支援をしているから成せる芸当だ。


冒険者にとって始まりは大体このダンジョンからになる。


最初の報酬は銀貨だったか……当時、収集の依頼だと銅貨しかもらえなかったが、討伐をすると銀貨がもらえるってことで行ったのが初めてだったか。



遠い昔のことに思いを馳せていると、ギギギと重苦しい音を立てて地下への階段が姿を現した。


降りるのも緊張するこの一瞬がダンジョン攻略としての楽しみを引き立たせてくれたのは今でも覚えている。


俺は先に行きたかったし、セインはしっかりと降りる前に残っている敵の討伐を考えていたっけか。


どちらかというと、この頃は俺の方が無鉄砲だったな。出来ることも多かったし、あの頃は無敵だと思っていた。


俺一人で平均的に何でもこなせたからな。レベルが低めに抑えられているこの場所では無双してもおかしくはない。


地下へ向かったのを見て気配を消して新米パーティーが挑む、初ボス戦闘のお手並みを拝見だ。


「いつ見てもでけぇカエルだ……」


トードキング。カエルの王様ことこのダンジョンのボスは、でかくて耐久性に優れている。


Eランク相当の冒険者たちは力を合わせてこいつを倒す。


規定のダメージ量を超えれば倒せるという、国に定められたボスだ。


冒険者と言われる俺たちのようなやつは、酒場で依頼を受けクリアしていくことによって生計を立てている。


エーズィーの洞窟をクリアするまでは、ずっとFランクのままで、討伐依頼を受けることが出来なくなっている。


酒場は、国に連絡し、それからこのダンジョンのモンスターが生成される。魔法陣がたくさんあるのはそのせいだ。


……まぁ、普通は見えない。そこそこレベルの上がった魔術師や、透視の出来る占術士が居るなら別だけど、占術士はダンジョンに潜らないし、潜る必要がない。


警護は大体忍者のような職についている奴が選ばれるが、罠感知は出来ても、魔法陣までは感知できない。


そこそこ何でも平均レベル以下くらいで出来る俺だから、見えているだけの話なんだ。


もっとも、見えたところで何が出来るってわけではないのだけど。



トードキングの断末魔が聞こえてくる。宝箱から書物が出てきてそれを酒場のオヤジに見せればこいつらもEランク冒険者の仲間入りってわけだ。


さて、俺も用は済んだし下手を打つ前に帰らせてもらうかな。


「――――ん?」


何か聞こえる。いや聞こえた気がしただけか?


魔力の風が吹いたような、言葉が聞こえたような。


ただの洞窟の反響音にしては、聞きなれない音だった。


もう新米パーティーたちはいない。俺も帰ればミッションは達成されているんだ。


国の魔法陣から感じる魔力じゃない。もっと、清廉な……言ってしまえば美しい魔力の源流。


無垢で、指向性のないただただあふれている魔力。


年月を石に移す魔石に似たような、それでいて魔石とは違う何かだ。


掘り出し物だろうか。せっかくのお宝を逃すのももったいない。


モンスターは強力なやつがいるわけないし、レアアイテムが眠っている可能性もある。


いくら国が作り出したダンジョンとはいえ、生成されるものまでは決めることが出来ない。


くまなく調べているわけでもないだろうし、そんなアイテムが埋まっていることがわかれば狩場として荒らされるに決まっている。


魔力の風が吹く方へと歩を進めると、岩から吹いてきている。


巧妙に隠されているが、これは隠蔽された通路になっていた。


岩にに手を当てようとしてもすり抜ける。ある特定の魔力を当てれば見えるようになる。


「地下2階へと続く道か……」


この時、国に伝えようとする考えは一切生まれなかった。


せっかくのデカいアイテムが手に入ろうとしているんだ。


今の現状を打開することが出来れば、ギルドから外された悪いうわさも払拭できるだろうし、違う道も拓けて来るかもしれない。


色々な思いを巡らせながら階段を降りると、広い空間が現れた。


「……暗いな。ここには手入れが届いていないってことか」


それにしては、整っている気もするが……




照明魔法ライトを使い、視野を広げる。そこには鎖にがんじがらめにされているデカい物体があった。


「石化している……? いや、これは……!」


目を凝らす。造形はどう見ても神話クラスのドラゴンだ。そして漏れ出ている魔力を鑑みるにこいつは間違いなく生きている。


思考が回らない。どうしてここにこんなモノがあるのか。だってここはFランクの冒険者のスタート地点だぞ。


『……聞こえるか?』


何者かの声が……いやぼかせない。あからさまに声を発しているのはこいつだ。


「お前……! 一体何なんだよ! 念話か? それとも――――」


虚勢を張るしかない。それが見抜かれていようと、この場からはもう逃げられない。


それぐらいにビビっている。


『ほう……お前は私の声が聞こえるか……』


「聞こえるさ! そしてお前は……いったい何者なんだ!」


石化しているドラゴンがくくっと笑った気がした。戦闘もやむを得ないか……?


『名前はあるのだが、人間の発する言葉ではないからな聞き取れまい種族で言えばドラゴンであるからドラでもいいぞ』


「な、なんかださいな……」


それに敵対心はないのか? そもそも高位な存在のドラゴンだから気配感知も出来ないのだが。


『不服か? まぁ私も久々に人間種と話したからな。懐かしいよお前のような冒険者は』


「懐かしい――?」




『ならば話そうか、私の伝説を――――』

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