第十七話【次なる試練を探して】
さて、酒場のオヤジに牛人を討伐したことを報告する。
ちょっと数が増えすぎていたのと、そこそこに周囲を荒らしていたから討伐とのことだった。
「なぁオヤジ。クネスって槍術士と会ったんだが」
「王国一の槍使いじゃあねえか。何かあったのか?」
正直に風属性の斧を見せる。
「真牛人? ってやつと戦うために一応共闘した」
「おい、今なんつった? 真牛人だって……?」
オヤジの顔が豹変したかと思えば、ぶつぶつと独り言をつぶやき、そして豪快に笑う。
「はっはっは! そうか! アポロ! お前がか!」
大きな声と、俺的には腑に落ちない笑み。なんかこう見透かされているような。
「いや、不快な顔をするな。笑って悪かった。その斧からも真牛人が使っていたものだとはわかるよ」
「本当かぁ?」
ジッとオヤジの顔を見る。嘘をついているようには見えない。こういう時に魔力で心を読むのは気が引けるからやらない。
「その証拠にソレを引き渡してくれるなら報酬は金貨が出るぞ。もっとも、お前が使っても良いものだとは思う」
もし引き渡さなければ銀貨10枚程度という。さて、この便利であろう斧をどう扱うか。
「真牛人を倒したのに報酬が低くないか?」
一応吹っ掛けてみる。倒したのは俺じゃないのは分かっていそうだけどな。
「ふん、強がりはよせ。大方クネスがささっと倒してしまったんだろう?」
そうじゃなかったら、もう少し胸を張っているよおめぇはな。と付け足されてしまっては、もう何も言えない。
「オヤジ、その通りだよ。だから俺はもっと強くならないとな」
「わかってんならいいんだよ」
銀貨11枚を受け取った。この多めの1枚は俺の成長祝いとのことだ。
今日はここで飯を食っても良いのかもな、と思いオヤジに言うと、今日は店じまいだと怒鳴られてしまった。
ったく、素直じゃないな。
……いや、お互い様か。
オヤジに聞いた情報では、真牛人はA+の怪物だったらしい。
そいつを軽々と手玉に取っていたクネスがより化け物だと言う事を知る。
宿に戻り、この先を考える。経験を積んで勝たなくてはいけない相手がいる。
力をつけて見返さなくてはいけない相手がいる。
――俺はこの先、どう立ち回っていけばいいのだろう。
「なぁ、ドラ。どこか行きたいところはないか?」
ドラに見てみたい景色があるのだろうか。
それがわかれば明日はそこに行っても良い。
討伐をしなくても、宿泊できる分の宿賃はあるからな。
『そうだな……』
ドラは明日の行き先をゆっくりと俺に伝えた。