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第十六話【余りある報酬】

かくして、牛人ミノタウロスの討伐には成功したんだが……


「アポロ? 君、Cランク程度のモンスターしか倒したことがないって本当かい?」


正確に言うと違う。前に居たギルド、理想郷パラディーゾで。炎の精霊イフリートは倒したことがある。


あいつは確かAランクだったはず。だが、自分が役に立っていたとは思えてない。


ほんの少しずつだけサポートしたに過ぎなかった。


「実質、そうだな」


なんとも歯切れが悪い。どう答えていいかわからないからだ。


ドラが今の俺に宿っていることは絶対に言ってはならない。


どんなに良い奴だったとしても、こいつは王国の戦士なのだ。


王国に封印されていた竜が、実はその封印を抜け出したとなれば大問題だ。


手引きしたのは俺ってことになるから……間違いなく死罪を申し渡されても仕方ない。


「それにしては良いサポートだったけどなぁ。あそこまで的確なのは中々」


「クネスは、真牛人ミノタウロスの腕が復活することは知っていたのか?」


「んーわからないけど、勘で何かが来るとは思っていた」


一流の戦士は自分の危機は直感と経験でわかるって言うしな……クネスがソレに近いものを持っていてもおかしくはない。


「それで俺の討伐は牛人ミノタウロスだけど、クネスは真牛人ネオミノタウロスだったんだな」


「被ってはいないけど、討伐する場所が同じだったってことね」


お互いに納得する。こういうのは珍しいことではあるが、王国と場末の酒場ではキャッチしている情報が違うのだろう。


「報酬は……まぁ俺は牛人ミノタウロスの角でも持って行けば……」


空間断裂ディメンションリリースを使えばバレるだろうか? だが、筋力強化ビルドアップを使ってもバレるかもしれない。


できるだけ、ドラの力を最小限に空間断裂ディメンションリリースを行使する。


「器用だなーボクは槍を振ることしかできないからなぁ」


良く言う。アレだけ一騎当千の実力を見せつけられて、槍を振ることしかできないわけがない。


ほぼ高い水準での身のこなしは、他の武芸にも秀でているだろうに。


「あ、アポロ? ボクは首持って行けばいいからさ、君はあの斧持って行きなよ」


なんて気前の良い奴だ。風を巻き起こす斧……風属性のウィンドアックスは、片手で持てるほど小さくなっている。


装備者の魔力や闘気によって変わるタイプなんだなと納得する。


もちろん、魔力を抑えている俺が触っても身の丈に合った程度の大きさにしかなりはしない。


「振れば巻き起こす風で距離取れるからね」


にこりと笑うクネスは、片手で軽々と馬鹿でかい首を持っている。なんだこのアンバランスな風景は……


明らかに俺より強い腕力を持つクネスを見て一つ溜め息。


それでも俺は、今日の戦いで得るものがあった、それも十分すぎるほどに。



「じゃあね、アポロ。またどこかで会いましょうね」


「わかったよ、色々ありがとうなクネス」



洞穴を出てクネスと別れる。



――陽はすでに赤みがかっていた。

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