第十五話【決着】
戦闘は佳境に入った。
クネスも、真牛人も互いに隠していたものを一つずつ公開した。
そして、結果は俺のサポート込みで人間側が勝ったことに……なるのか?
決着がついているわけではないし、側と言うのも疑わしい。クネスの口ぶりを見れば、あの再生能力も理解っていたようにも思える。
とはいえだ、感謝を述べるってことは俺が余計なことをしたわけでもないだろう。
でもなぁ、クネスの人柄的に文句は言いそうにないんだよなぁ。
傍観を続けている俺を差し置いて、クネスと真牛人は話している。
「貴様は……ただの人間ではないな?」
「まぁ、ボクは王国一の肩書を持っているからね」
「なぜ、我を討伐しに来た……?」
「ちょっとね、王国からの命令だからボクにはわからないかな」
そんな会話が聞こえてくる。
「王国の傀儡と成り果てるにはもったいない逸材だな」
「お褒め預かり光栄だね、でも君はここで倒れる運命にある」
武人と武人の最後の決着前の話に聞こえてきてならない。
恐らくは、互いに勝利を確信しているのだろう。だから、余裕も湧いてくる……という考えが普通か?
ちなみに俺はここまで優勢になった戦闘なんて、滅多にないからその気分を味わうこともない。
「我は久方ぶりの好敵手に遭遇できて嬉しいぞ」
「ボクも君みたいな怪物に出会えて……腕を揮えて嬉しいかな」
戦闘狂なのか……? 少なくとも凡人の俺にはわからん。
……いや、今ならわかるか。俺も思考してきたことを試したくて。自分の理論を証明したくてさっきまで力が入っていたしな。
ただ、この戦いに俺が手助けをするのは場違いの気もしている。クネスがやられたら間違いなく俺も死ぬだろうから完全なる傍観者ではないが。
そして、ひとしきり会話が終わったのか、真牛人が背の岩壁に掛けていた巨大な斧を持ち出した。
デカい……そしてなんて切れ味が良さそうなんだ……そんな俺を見てかどうかはわからんが、空に向かって一振りする。
発射される真空の刃、それは岩をも切断する強靭なる斧ということの証。
「さらば、強き者よ! 我が斧の前に塵と化せッ!」
アレが奴の最初から見えていたが、使わなかったもの。
奇しくも、それはクネスにも当てはまる。最初から見えていて本質を隠していた。
クネスの全身に魔力が通るのが見える。
何物でもなかった槍が、金色に燃えている。あれが真実を現した槍の本領。
敏捷力も上がっている。それどころか、今のクネスには全てがスローモーションに見えているかもしれない。
迫りくる突風と風刃を華麗に捌き、切り裂き、貫いていく。
眼前には真牛人。
刹那のすれ違いざま、黄金に燃える槍は、迸っていた魔力をその身に納めた。
「さよなら」
「見事……」
散りざまが完全に武人のそれだ。
……一応、牛人討伐は完了……なのか?




