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第十三話【クネスVS真牛人】

扉を開くと、骨で作ったような玉座に座っているシルエットが見える。


でかい。さっきまで相手にしていた牛人ミノタウロスとは格が違うのが目に見えてわかる。


「人間……同胞を殺して我をも殺そうというのか……?」


問いかけではない。漲っている殺意からも、嘲笑の類に近いものを感じる。


真牛人ネオミノタウロスだよ、アポロ。君は見たことがないのかい?」


「ない。少なくとも万年Cクラス程度の俺が見れるわけないだろう?」


確かに。とクネスが頷いている。クネスの実力からいって、俺を格下に見るのは仕方がない。


それくらい今の実力差はあるだろう。


「くっくっく……いいだろう、思いあがった人間よ。牛人ミノタウロスの王である我が貴様らを屠ろう」


なるほどね、王としてはそうなるだろうな。考えると人間に害をなすってだけで種を減らされるのは勘弁ならないだろう。


だけどな、その理屈はそっくりそのまま牛人ミノタウロスにも言えることになる。


「王国一が槍術士! クネス! いざ参らんッッ!!」


言うやいなや、その場に疾風が巻き起こる。先の居場所に姿はすでになく、懐まで潜り槍を突き出している。


「はっ!」


「むぅん!」


振り払うように、馬鹿でかい腕を振り上げる。どうする? 足場を作って援護しようか?


いや……まずは戦況把握からだ……


眼力インサイトを上げないと、戦いそのものについていけなさそうだから、まずは自身を強化する。



結論から言うと、クネスに援護は必要ないくらいだった。振り上げられた腕に、吸いつくように着地をして、顔面に向かって駆けている。


柔軟な筋肉が成せる技か、それとも相手の動きを読み取っているのか、それは定かではない。


「俺は傍観しているしかないのだろうか……」


『あの者の動きを見ておけ、アポロ』


ドラも警戒をしている。当たり前か。いずれは敵対するかもしれない勢力の一人。そしてそれは間違いなく最大勢力だ。



――激戦を繰り広げている。クネスの槍捌きは見事なものだ。


体格さをものともしない俊敏な動きは、決して真牛人ネオミノタウロスに的を絞らせていない。


的確にダメージを与え続けている。だが、それでも王と名乗ったあいつは倒れない。


それどころか、力をようやく揮えるのかと歓喜に打ち震えているように思える。


少なくともAクラス、いやそれ以上の戦闘を間近で見れることは何よりも俺の経験値になる。


どうやればクネスの域に辿り着けるのだろうか。どのくらい魔法を重ね掛けすればあの領域に辿り着くことが出来る?


湧き上がる衝動をなんとか抑えている。思考を回転させる。何度も何度も思考する。


まだ、均衡は崩れない。ダメージを一方的に与えているのはクネスだが、間違いなくスタミナも削れている。


こっちは人間だ。動ける量には限りがある。それを感じさせないくらいの動きをクネスはしているのだが。


徐々に目が慣れてくる。違う、クネスのスピードが落ちている……?


真牛人ネオミノタウロスはぶんぶんと腕を振り回すだけだが、それだけでも、一つ一つが必殺の一撃。


身体全体で完全に避けていたのが、風圧で蒼い鎧が揺れるくらいには打撃が近づく範囲にいる。


すなわちそれは捉えられる前兆。



俺でもわかる最悪のタイミング。その一撃を喰らうだけで、クネスは致命傷を受けるだろう。


今からでも援護するしかない。魔法の一説を唱えようとした瞬間、クネスはその場から消えた。


錯覚ではない。真牛人ネオミノタウロスも驚愕している。間違いなく手ごたえがあったはずの狙いすましていた一撃のはずだった。


クネスごと地面に突き刺したはずの拳は、その身体から離されていた。


「甘く見ちゃ困るよ、アポロくん」


蒼い兜が落ち、金色に光る髪が空中に舞い靡く。


声に違わず、壮麗な出で立ちは自信に包まれている。


そして俺が、真牛人ネオミノタウロスが、完全に裏をかかれていたことを思い知る。

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