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第十二話【王国の槍術士】

――美しいな……


最初に出てきた感情は感動だった。


蒼い甲冑を纏っている槍術士は一閃で敵を貫き、牛人ミノタウロスから出た血をタオルで拭いている。


違う、そうじゃないだろう。聞かなくてはいけないことがあるじゃないか。



「誰だ……?」


「んぁ? 第一声がソレってちょっと悲しいなーまぁいいか。ボクの名前はクネス。君は?」


「アポロ……じゃなくって、これは俺の討伐依頼のはず――」


「偶然もあるもんだなぁ。ボクも王国から受けた討伐依頼なんだよ」



王国。俺たち冒険者はこの王国直属の戦士に抗うことは出来ない。


とはいえ、俺も冒険者の端くれだし、ここで下がれば沽券にかかわる。



「ダメだ。この討伐依頼は降りれない」


「ん? あぁ降りろと言うつもりはないよ。一緒にやらないか? 見たところ君は援護もできるだろう?」


……どこまで見抜かれているのだろうか。少なくとも先の戦闘で俺の全てを見せたわけではない。


多少肉体強化の魔法を使ったにしろソレを期待しているのか、それともその先を見ているのか。


「一応一通りは出来る。まぁ効果量は期待しないでもらいたいが」


「だろうね。あの程度の牛人ミノタウロスに手間取るようじゃ奥に居るレイドボスはきついぜ?」


態度はお茶らけているが、見るところは見ているというところか。


俺も能力を見させてもらいたいが、下手に動くと危ない気がする。


「パーティー……はいいや。君の手柄にしてもかまわないよ。ボクはもう名声も富も十分だしね」


「そっちの方が助かるよ。ありがとう」


どっちの意味に取るべきか。下手に気を使わなくていい分、立ち回りやすくしてくれた親切心か。


それとも何も期待されていないと受け取るべきか。どのみちやることは決まっているか。



しばらく奥地へ向かっていると、クネスの強さが明らかになっていく。


自分の身長の3倍以上ある牛人ミノタウロスをあっさりと倒していく。


俺の身体強化や、敏捷強化。攻撃強化と言った魔法は一切ない。そもそも使う前に終わってしまって、俺自身の経験値は上がらない。


パーティーを組まなかったのはこのせいか……と思ったのだが、話してみると気さくな奴であるのは確かだ。


俺を傷つけないように立ち振る舞っているのは見て取れる。


「へぇ、アポロは修行にここに来たのか。いい心がけだな」


「クネスが全部倒しちまうから経験値にならないな」


「あっ、悪いね。ボク王国からパーティー組んだらダメって言われててさ、さっきの言葉気に障ったらごめんね」


これだけ強ければ、クネスと運よく組んだ奴が全員王国に召集されかねない。


「いや、王国の判断は正しいさ。クネス、疲れはないか?」


「ないよ。ボクはこの先のやつの討伐を頼まれててね」


牛人ミノタウロスじゃないのか? 俺は少なくとも牛人ミノタウロス討伐のつもりだったが、クネスは違うか。


そうだよな。こんなところでクネスが腕を揮うのは無駄が過ぎる。



「この扉の先に待っているさ。行こうかアポロ」


「何でも来いってんだよ」


俺とクネスは、何者かが待つ扉を開いた。

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