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二音(下ネタ)

作者: 丸子稔

 「視聴者の皆様、こんばんは。今週も〈二音で表現せよ〉の時間がやってまいりました。実況は、わたくし上田が務めさせていただきます。そして、解説はこの道三十年の大ベテラン、竹本さんです。竹本さん、どうぞよろしくお願いいたします」


「よろしくどうぞ」


「それでは、早速、本題に入りたいと思います。今週のお題は【突風により、前を歩いていた女性のスカートがめくり上がった時の男の気持ち】です」


「また、今週のお題は随分と長めですね」


「そうですね。ちなみに竹本さんなら、こういうシチュエーションの時は、どう表現されますか?」


「うーん…… これは、ちょっと難しいですね。普通に考えれば『よっしゃ』とか『ラッキー』になるのでしょうけど、それだと字余りになりますからね。この難問を丸小選手がどう表現するのか、非常に楽しみですね」



「それでは、このコーナーの表現者、丸小高至選手をお迎えしたいと思います。丸小選手、入場願います」


 ♪チャララー、チャララー。


 映画〈ロッキー〉のテーマ曲をBGMに、タンクトップに短パン姿の丸小が颯爽さっそうと現れた。


「丸小選手、今日はえらく気合の入った格好をされてますが、なにかコンセプトがおありになるのでしょうか?」


「はい。今日は表現する時にハンマーを使おうと思って、この陸上選手が着るような服装で来ました」


「ハンマー? えっと、ちなみにそれはどのように使うのでしょうか?」


「まあ、それは見てのお楽しみです」


 そう言うと、丸小は用意していたハンマーを手に取り、ブンブンと頭の上で回し始めた。


「解説の竹本さん、丸小選手は一体何をしようとしているのでしょうか?」


「それは私にも分かりません。まあ、ここは黙って見守るしかないでしょう」




 丸小はハンマーを何回か回した後、今度は自らも回り始めた。


 一回転、二回転、三回転……


 回転する事に速度はどんどん増し、ハンマーが水平に勢いよく回る中、丸小は「びん!」と叫びながら、これまた自ら用意したネット目がけて、ハンマーを投げ込んだ。


「びん? 今、確かに丸小選手は『びん』と言いました。えーと、解説の竹本さん、これはどう解釈すればよいのでしょうか?」


「それは私にも分かりません。本人に聞いた方が手っ取り早いと思います」



「えっと、丸小選手。先ほど言った『びん』というのは、どういう意味なのでしょうか?」


「はい。これは勃起ぼっきを表現しているんです。偶然女の子のパンツを見れた事により、興奮してそのままっちゃったみたいな」 


「……あの、それは〈気持ち〉ではなく、〈状態〉ではないのでしょうか?」


「えっ! ……まあ、細かいことは気にしないで、もっと大らかな気持ちでいきましょうよ。はははっ!」



「あと、もう一つよろしいですか。表現をする際、ハンマーを使ったのは、どういう意図があったのでしょうか?」


「ああ、それはですね。ハンマー投げの選手って、ハンマーを投げる時に何か叫んでるじゃないですか。なので、僕もそれを真似てみたんです」


「わざわざ叫ぶ必要があったのですか?」


「勃起する時って、なんかいきり立つというか、勢いみたいなものがあるじゃないですか。それを表現するには、大声を出した方がいいんじゃないかと思って、ここは一発気合を入れてみました。はははっ!」



「……えーと、解説の竹本さん。彼はこのゴールデンの生放送で、一体何を言ってるのでしょうか?」


「変なところで私に振らないでくださいよ! でも、これだけは言えます。このコーナーで、彼の姿を観られるのは、今日が最後となるでしょう」




 一週間後、〈二音で表現せよ〉のコーナーに丸小の姿はなく、代役が立てられていた。

 

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