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星間戦争2 モッツァレラ星域会戦(下)

07 星間戦争 2回目 モッツァレラ星域会戦(下)


1.方面軍

「検索しました。神万神羅栖(カミマン・カミラス)は東西南北天地人と7つの方面軍を設置しています」と犬ペロ。

「東西南北は、どっちかニャ」と猫ナメ。

「それも分からないのか」と犬エル。

「本来は神羅栖星の自転方向が東になりますが、この場合は違います」「神羅栖(カミラス)星系は楕円銀河中心部を数億年の周期で公転(周回)していますが、現在の進行方向が東部、反対方向が西部です」とAIウィリアムは説明した。

「ニャるほど」

「南部と北部については、神羅栖星の自転軸は楕円銀河水平面に対して、垂直方向に立っていますので、そのままでよいです」

「同じですね。変更なし」と犬エル。

「天地人とは、何にかニャ」

「楕円銀河の外縁部方向が天です。また、楕円銀河の中心方向が地です。そして、神万神羅栖(カミマン・カミラス)版図の中央部が人です」とAIウィリアムは説明した。

「天方面軍は神羅栖星から見て、楕円銀河の外縁部方向を所管しているのですね」と犬エルは確認した。


2. 戦闘準備

 モッツァレラ星域外縁部では、侵攻して来る敵の大軍を迎撃するための準備が進められていた。神人の援軍を待って、犬猫たちは通商連合と共にホラー連邦に艦隊決戦を臨むのだ。


「取りあえず、僕が艦隊司令官をやります」と犬エルが申し出た。

「わっちは副司令官やるニャ。出番が少ないからニャ」

「犬のミッタ―・ワイヤーさん達を呼ばなくても良いの」と猫タロウ。

「ミッタ―・マイナーさんです」と犬ペロが訂正した。

「念のため言っておくけど、これはプレイヤー名です」


 モッツァレラ星域外縁部に艦隊が集結しつつあった。ワンにゃん大連合の艦隊1,000隻は、連合艦隊の右翼に陣取っている。

 犬猫たちが乗船している戦艦トマト以下30隻の艦船は、通商連合本隊数百隻と共に連合艦隊中央部の後方にいた。

「左翼に通商連合の艦隊が揃いました」

左翼には通商連合6,000隻の戦闘艦が勢揃いした。

「通商連合は最初、2万隻を用意すると言っていたのに。神人様の支援を貰ったら、参加艦艇数を随分と減らしましたね」と犬ペロ。

「その減らした分の艦船で、占領された星系に駐屯する敵軍を各個撃破するそうです」「勿論、神人様と協力して敵を叩きます」

「急遽2方面作戦に切り替えたか。通商連合は余裕だな」と猫タロウ。

「そうです。神人の指示があったのかも知れません」とAIウィリアムはうなずいた。


「でも通商連合の船は見た目が、あまり強そうじゃないね」

「通商連合とホラー連邦の戦闘艦は、同程度の性能です。彼らの戦闘艦3~4隻で、我国の戦闘艦の1隻分です」

「彼らの長距離兵器の射程は、我が方の半分以下です。戦闘開始直後に思い切り叩けます」

「検索しました。軍艦の速度もこちらの方が遥かに上回っています。アウトチャレンジ戦法が使えますね」

「アウトレンジ戦法です」

「レンジ? 中に入れてからチンするのニャ。外でチンしちゃダメなのニャ」


 犬猫艦隊司令官(犬エル)は国王に言上した。

「ホラー連邦軍如きは、我方の3倍であっても、必ずや撃滅いたします」

 副司令官(猫ナメ)も「ご覧くださいニャ。我らの戦闘艦ニャ、黒くて硬くて大きくて、早いニャ」

「早いのか」

 巨大戦闘艦の3D画像が表示されていた。

「とある資源星系戦の時とは全く違うね。立派な戦闘艦だね」

「フフフ、今回は本物の軍艦ですから」

「この戦艦と神人の援軍があれば、ホラー連邦軍などゴミ同然に片付けられます」

「わっちらの獲物を残してくれるように神人様に要請して欲しいニャー。アハハ」


「敵戦力は、どの位かな」と猫タロウはAIウィリアムに尋ねた。

「敵は30,000隻乃至36,000隻と想定されています」

「神人様は、何隻ぐらい派遣して下さるのかしら」と犬ペロ。

「合同作戦会議には、師団長が3人出ていたよ」

「神人の艦隊については、かなり古い情報しかありません」「ふむ、1個師団は平時2,000隻で、戦時3,600隻の編成か」とAIウィリアム。

「神人様の戦闘艦は、我々の何倍ぐらい強いのかな」

「10倍以上、いや、もっといきますか。神人艦隊が6,000隻来れば、我国の戦闘艦6万隻以上の戦力ですね」

「敵艦の18万隻相当以上か。余裕だね」

「ウィリアムさん。AIにしては、不確かな発言ですね」と犬ペロ。

「意外と神人の情報が少ないのです。こちらの情報は、全部筒抜けなのに」


「味方艦隊の中央部分が、がら空きだな」と猫タロウは不審げに言った。

「神人様御一行のために、空けてあります」

 しかし、連合艦隊の中央部分に収まるはずの神人艦隊は、一向にその姿を見せなかった。

 その時、戦艦トマトの指令室に神人(統括)の立体映像が現れた。渋い低音ながら響き渡る(テレパシー)が聞こえた。

『トマトの諸君、我々の準備は完了した。戦闘は何時でも何処でも良いぞ』

「ありがとうございます」猫タロウは感謝した。

『では、諸君の健闘を祈る』

 神人(統括)はそれだけ伝えると、直ぐに姿(映像)を消した。


「敵艦隊、ワープアウト。その数、約34,000隻」「距離30万宇宙キロです」と艦隊制御AIが伝えた。

「間もなく開戦です。わくわくしますね」と犬ペロ。

「敵の左翼端は手品師との異名がある、ヘン提督率いる艦隊です」

「検索しました。ミラクル”ヘン”とも呼ばれていますね」

「聞かなかったことにします」と犬エル。

「神人艦隊が、まだ来てないけど」

 頼みの神人艦隊は現れない。しかし、艦隊戦は開始された。



3. モッツァレラ星域会戦

 犬猫艦隊司令官(エル)は命じた。

「全艦、ワープミサイル発射」

 多数のワープミサイルがシャワーのように敵艦隊に降り注ぐ。

 副司令官(ナメ)も命令した「艦載機を出すニャー」

「了解しました」艦隊制御AIが答えた。

「あれ、何で出てこないかニャ」

「え、”艦載機を出すな”と言ってなかった?」

「艦隊制御AI、艦載機を発進させろ」

「了解しました。艦載機を発進させます」

「物質瞬間移送装置作動、艦載機は所定の空域に集まるニャー」

「了解しました」

「あれ、何で集まらないのかニャ」

「艦隊制御AI、艦載機をワープさせろ」

「艦載機をワープさせます」

「間もなく、彼我の距離20万宇宙キロ。長距離砲の有効射程圏内に達します」と艦隊制御AIが報告した。

「エネルギー・ワープ砲、準備するニャー」

「了解しました。ワープ砲の準備をしません」

「制御AI、ワープ砲の準備をしてくれ」

「ワープ砲を準備します」

「用意するニャーて、言っているニャ。何でしないニャ。いい加減にするニャー」

「猫って、どうしても、役に立たないのね」


「ウィリアムさん。急いで神人に連絡して」

 猫のタロウは神人に問い質した。

『私はモッツァレラ星域派遣軍参謀長である』

「神人様。艦隊がまだ到着していませんが」

『そうだろうよ。艦隊など派遣していないからね』

「あの、今どうゆう状況かお分かりですよね」

『勿論、君たちの分かることは全て私たちも分かっている』『君たちの分からないことも、私たちは分かっているから安心しなさい。』

 犬猫たちは顔を見合わせた。

「急いで艦隊を派遣してください」

『我々は2千年前まで宇宙艦隊を運用していた。しかし、現在は戦闘艦を一隻も保有していない』

「何と、何故無いのですか」AIウィリアムはうろたえた。

『戦闘艦などダサイ。艦隊などと言う古臭いものを我らが使うはずもないのだよ』

「そういえば、神人様はテレポーテーション出来るから宇宙船はいらないですよね」と猫タロウは納得した。


「ウィリアムさん、1個師団2,000隻とか。2千年も昔の情報かよ」

「間抜けすぎます。ウィリアムさんは国家最高統括AIとしての責任を問われますよ」

「そう言われましても、私に移植された疑似人格は、オリジナルが相当高齢のときに採取されました。大分ボケている訳です。我国の科学力を以てしても、十分な修復は不可能でした」

「不完全な人格AIが国家最高統括AIの重職に赴いているのは問題だ」

「AIのウィリアムさんに問題があったから新国家建設とか、AIマザーを降ろして、あなたが国家最高統括AI就任とか、色々とやらかしてくれた訳ですね」

「そのことは、また後で。とにかく神人の艦隊は来ません」

「どうするのかにニャ」

「艦隊がない。持ってない」

「ない、来ない、ない、来ない…」

 驚愕の事実が明かされて、犬のペロは、近くに飾ってある植物の花弁をむしり出した。

「ペロさん、花占いやめて」

 神人は平然とした表情で皆に向かって(テレパシー)った。

『それに援軍として師団を用意すると言ったはずだ。師団と言えば地上軍であろう。何故宇宙艦隊だと思ったのだ』

「テレパシー装置が故障していたのかな」

「え、装置?」「喋った」「神人様の肉声を初めて聞いた」


AIウィリアムはアバターの顔を歪めて言った。

「あの~、戦いは宇宙艦隊の会戦なんですけど...トホホ」

彼はorzモードに移行して、動かなくなった。

「だめだ、こりゃ ニャ」彼女は猫タロウの口真似をして言った。

神人は答えた。

『もっともモッツァレラ星域派遣軍と言っても、現地に行く訳ではない。我らは現在、バラン星基地にて作戦行動中である』


4.突撃

 その時、神人(統括)と副官が現れた。そして、響き渡るような低い(テレパシー)が皆に伝えられた。

『久しぶりだな、トマトの諸君』

「いえ、先程会ったばかりですが」とAIウィリアムは返した。

 しかしそれを無視して、神人(統括)はゆっくりとした低い(テレパシー)で命じた。

『全艦突撃せよ』

 そして満足げにほほ笑んだ。とにかく彼は、部隊を突撃させることが大好きだった。副官は、ため息混じりに言った。

『また、突撃させましたか』

『もう、お止めください。彼らには酷なことです』

『何を言うか。私の楽しみの邪魔をしないでくれ給え』と神人(統括)は不機嫌そうにテレパシーった。

 犬猫と通商連合の艦船は、全速力で敵艦隊目掛けて突撃した。どうやら、神人が艦隊をコントロールしているようだ。

「キャイーン。ガブリ」

「フー、そんニャー」

 敵味方両艦隊は、至近距離で砲撃戦を始めた。その様子を神人(統括)は、ブランデーグラスを片手に目を輝かせて観戦していた。


艦隊司令官(エル)から司令部に入電」と担当AIが報告した。

『我、モッツァレラ星域ノ防波堤トナリ…』

「辞世の句を書くのニャ」

「急に悲壮感が漂い出しました」とAIウィリアム。

「でも二人ともここに居るし」と猫タロウ。

 犬エルと猫ナメは、ビデオゲームの様なボックスに入って艦隊を指揮しているのだ。

 犬ペロは相槌を打った「元々アバターですしネ」

「デス死ね? 死ねと言われたニャ」と泣き顔で叫んだ。


「何とかしてください」猫タロウは神人に懇願した。

『大丈夫だ、トマトの諸君』

 神人(統括)は自信に満ちた余裕の表情で(テレパシー)った。

 その時、数千隻の敵艦が次々と爆発して、敵艦隊は総崩れとなる。

「何と」

「キャーン、凄いです」

「オォ―ン、ガブリ」

「やったニャー」



5.人造惑星バラン

『トマトの諸君、見たまえ。これが我らの人造バラン星基地だ』

 立体映像が現れた。神人が領有する惑星バランの様子が映し出された。バラン星は人造惑星だった。そして、神人の戦闘方法が明かされた。

「バラン星は、戦場のモッツァレラ星域から1万光年も離れています」とAIウィリアムは補足説明した。


 基地の中央広場には、何の変哲もない普通のドアが、驚くほど沢山並んで立っていた。その傍にアンドロイドが2体1組で配置されている。ドアの前には円盤状の装置が置かれていた。

 その装置が光を放って作動すると、爆弾がそこに出現するのだ。すると、1体のアンドロイドがドアを開け、もう1体のアンドロイドが爆弾をドアの中に放り込んだ。

 だが、爆弾は反対側には出てこない。何と、遠く離れた敵の戦闘艦内に現れて爆発するのだ。直ぐにドアを閉めるので、こちらに影響はなかった。

「検索しました。あれは神人様の、”異次元どこ出たドア”です」

「”どこ出たドア”、言いにくいよね」

「犬猫ちゃんたち。一生懸命仕事していて可愛い」とAIウィリアム。

 よく見るとアンドロイドは、猫耳と犬耳が二人一組で働いていた。勿論尻尾も付いている。

「猫が仕事しているって?」と犬エル。

『トマトの諸君、今回はロボット兵を君たちに似せてみたのだよ』

「ありがとうございます」と犬ペロ。

「アーこれは凄い。ローテクなのか、ハイテクなのかよく分からないけど」と猫タロウが言った。

『十分にハイテクであろう』と神人は答えた。

「勝ったニャ」

 戦いは味方の大勝利に終わった。


これまでの会話は、すべてバーチャル空間で行われている。そして、戦いはリアルで行われているが、敵味方の戦闘艦は全て無人艦だった。今回も資源の無駄遣いをしたが、人命?の損失はなかった。

 「ところで、神人様方は”異次元どこ出たドア”を使っていたのですか」

『いや、普段の移動には"ここどこドア"という自動ドアを使っているよ』



6.戦いの後

 アマテレサ神が神人(統括)と会見していた。

「お礼なんか言わないからね。ツン」「ありがとなんて言わないンだから」「私の信者を助けてもらっても、お礼なんかしないからね」

 横を向いて、指での之字を書きながら、何度も繰り返し言っていた。

犬猫たちは、ひそひそと話した。

「お礼を言わないのに何で来ているの」

「さて」

「ツンデレかニャー」

「拗ねている様な」

『分かった、分かった。テレちゃんは昔のままだ。変わらないナ』

「結構、仲が良いのでは」


 祈祷師は答えた「それはそうです。元々仲は良いのです」

「その昔、この楕円銀河はガチナンデス帝国に侵略されました。その折、アマテレサ様の呼び掛けに応えて、降臨されたのがあのお方率いる神人様方です。そして我らを救い給うたのです」

「検索しました、ガチナンデス帝国のドーダー大帝はテーラ星系戦で敗死。帝国は瓦解したそうです」

「そうだったのですか」

「このポスター画像は、昔のものなのだね」

 祈祷師は話を続けた「その後、ガチナンデス帝国の支配から脱した、ホラー連邦が急速に勢力を拡大しました。そして今から50年前、銀河AU電鉄の権益を巡って通商連合と対立しました」

「銀河AU電鉄?」

「AUは、元々携帯通信会社でしたが、あるとき電鉄会社を買収しました。その後本体は解散したのですが、AU電鉄会社は宇宙航路に進出して発展しました。やがて銀河AU電鉄会社は楕円銀河の交通と物流の基幹をなす存在になったのです」

「なるほど。検索しました。ホラー連邦は銀河AU電鉄を支配する通商連合に電鉄会社の共同経営を要求して対立、事変に発展したのですね」

「そうです、所謂銀鉄事変です。この事変はホラー連邦が勝利しました。その結果、銀河中心部を獲得したホラー連邦は絶頂期を迎え、テレス教徒の弾圧を始めました。アマテレサ神は再び窮地に陥りましたが、またしても神人様に助けられたのです」「40年前のことです」

「二人とも、かなりのじじ、ばばニャ」

「そうとも限らないよ。俺たちは、2~3歳で若いのは確かだけど」「種族によって寿命が異なるから、年齢と老若は一概には言えないよ」と犬エルは猫ナメに言った。


「わっち2歳かニャ」

「僕3歳かな」

「二人とも超ロリキャラ…」とAIウィリアム。

「俺は3歳まで人工進化猫で亜人化猫して1年だから4歳かな」

「えーと、換算しますか。換算しますと…」とAIウィリアム。

「… …」犬ペロ

「へ」猫タロウは犬ペロの顔を見た。

「あの方々は、ご長命であらせられますので。ジジババだとは限りません」ツンと犬ペロ。

「俺たちも亜人化して寿命が延びたけど、あの方々とは比べ物にならないからね」

「そうだ、ペロさんは進化犬猫のとき俺よりも確か2歳年上でしたよね」

「えーと、換算しますか。換算しますと…」とAIウィリアム。

「年齢など、どうでも良いのです」キッパリとした口調で犬ペロは言った。


「通商連合が攻略されていたのに、神人は何で放置していたの」と犬エルは質問した。

 祈祷師は答えた「それは、銀河中央部がホラー連邦から解放された後、その地域のテレス教徒の大半が神人様の庇護を受けるようになりまして…」「信者を取られてしまった形になった、アマテレサ神は神人様とは少々距離を置かれるようになりました」

「いろいろと事情があるのだね」と猫タロウ

「検索しました。30年前、アマテレサ神は神人(統括)様のホラー連邦討伐に反対、無理やり休戦協定を締結しました」「今回の戦役では1年前に、通商連合を救援するとの神人様からの申し出を拒否しています」

 祈祷師は話を続けた「実は、神人(統括)様は早々にホラー連邦を解体して、この銀河から身を引くご予定でした。当時そのように発言されております。しかし、そうはいかなくなりました」

「アマテレサ様は敵がいなくなると教徒の団結力が弱まるとか、神人(統括)様がおられれば心強いとか、でも信者を取られるのは嫌だとか周囲の者たちに話しておられたそうです」

「なにこの、グダグダな話」猫タロウは呆れた。



 神人(統括)は皆に(テレパシー)えた。

『トマトの諸君、またいつか会おう。次に会う時には諸君に乱反射衛星砲を披露しよう。では、さらばだ』

 犬猫「ありがとうございました」

 神人たちはテレポーテーション?いや、瞬間移動して姿を消した。女神の立体映像も消えた。


... ...


猫タロウは一瞬、乱反射衛星砲を想像した。

「うわー!凄い。打ち上げ花火みたいだ」

「ハハハ、そうだろうとも」

「でも、味方にも当たっていますよ」

「乱反射だからね。仕方がないのだよ。これは、そういうものなのだ」

猫タロウは呟いた「だめだ、こりゃ」

(注:この部分は彼の想像です)


... ...


「今週の遺跡探査はここまでかな」と猫タロウ。

「そうです。来週には銀河連盟の使節団が来訪しますので、戻って準備せねば」とAIウィリアムは答えた。

「それと、公式の席で"俺"は止めてください」と付け加えた。

「ダメなのかい」

「偉い人は自分のことを朕とか言うんじゃないのかニャ」

「俺は犬じゃないから」

「犬種の(チン)とは違います。朕は、皇帝が使う用語かと..」と犬ぺろ。

「"余は国王である"とか言っていれば良いのでは」とエルが口を挟んだ。

「それでよいでしょう」とAIウィリアムは同意した。


「堅苦しい席は嫌だな。性に合わないよ」

「国王とか言っても、犬は猫の言うこと聞かないし」と猫タロウはこぼした。

「めん じゅう ふく はい かニャ」

「面従腹背。そうだね」

「その点、ペロさんが国王ならば皆が従うよね」

「私は王様とか結構ですから」

「ペロさんなら女王様とか似合いそうだ」

『次回の国王決定戦(ジャンケン)は、わざと負けよう』

猫タロウはそう心に誓った。


 翌年には、(グレート)犬猫(ワンにゃん)及び高級(ハイクラス)AI連合王国を女王が統治することになるのですが、それは別のお話と致します。



「通商連合の皆さん、リアルアバターの保管をお願いします」とAIウィリアムは彼らに頼んだ。

「ぺろさん、二人一緒は無理です」

「アー、仕方ないわね」

「犬ペロ卿は大型犬だということをお忘れなく」とAIウィリアムは注意を喚起した。

「俺たちは一緒に」

「はい、あニャた-」

「この二人には18禁シールを貼っておきます」

「ウィリアムさん、それはアバターですよ」


「それでは落ちます」と犬ペロ・犬エル。

「落ちるニャ」と猫ナメは叫んだ。



 犬猫たちがログアウトした後には、透明な蓋付きの鍋型容器が幾つか残されていた。

 そして狭い鍋の中では、亜人化犬猫達のアバターが体を丸めて静かに眠っていた。



 (AIウィリアムは丸くなれないので、体が鍋からはみ出していた。)



                     完


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