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星間戦争1 星系防衛戦

03星間戦争1 星系防衛戦


1. 準惑星守備隊

 猫タロウ(国王)が総司令部の中継システムにログインすると、今まさに戦いが始まろうとしていた。我王国領の、とある資源星系への侵略を企てる異星人の艦隊を味方部隊が迎撃するところだ。この星系は、首都である本星から遠く離れた数百光年の彼方にある。だが、亜空間通信によって都合よく、リアルタイムで戦いの実況中継が出来るのだ。

 3Dバーチャル(仮想)空間内の総司令部では、メインスクリーンに前線の部隊が映し出されている。部隊長以下5人のアバターが各ウインドウに表示され、その下にそれぞれ宇宙船のマークが4個ずつ表示されていた。何故かlifeと書いてある。MPと書かれた棒グラフも付いていた。

味方の戦闘艦の概要が画面に示された。流線形の戦闘艦で、艦首にビーム砲を1門装備している。


「第308準惑星守備隊、これより進撃します」

 ウインドウに表示された部隊長のアバターが敬礼をしながら報告した。戦況は極めて不利だが臆することなく堂々とした態度だ。

「諸君の健闘を祈る」軍司令官は応えた。

 敵は212隻、味方は16隻だ。画面下には味方の援軍1個艦隊100隻の到着まであと三十数分との表示があり、時間表示はカウントダウンしていた。

 しかし、とある資源星系外縁部を防衛する部隊は援軍の到着を待つことなく、侵攻してくる敵の大艦隊に突撃していく。


「援軍が来るまで待ちなさい」

 猫タロウ(国王)は軍司令官をウインドウに呼び出して言った。

「守備隊なのに何で突撃するの。勝ち目がないでしょう」

犬の軍司令官は答えた「敵を目前にして、栄えある帝国軍人が逃げる訳には参りません」

「王国です」横から担当AIが訂正した。

 シベリアンハスキー顔の軍司令官は堂々と答えた。彼らは亜人化したが、以前の面影が色濃く残っている。そのため、顔を見れば元の犬種が直ぐに分かるのだ。

 第4戦隊長「第四戦隊只今戻りました。これより、敵艦隊に突入します」

別方面にて任務遂行中であった第4戦隊の4隻が戻ってきたが、本隊とは敵を挟んで反対側の位置にいる。味方は20隻になったが、戦力差には影響しない。


「全滅するから、逃げるのだ」

「誠に僭越ながら」脱帽、お辞儀「歴史と伝統を誇る、我が軍に撤退はあり得ません」

「軍は出来たばかりでしょ、どこに歴史と伝統があるのか」

 戦闘は始まった。「ピィン」「ピィン」とビーム砲の発射音が響く。

敵は我方の数十倍の大きさの大型艦だが、味方のビーム砲が1発命中すると破壊される。それに対して味方の戦闘艦は小型ながらよく耐えて、敵弾4発命中で破壊されるのだった。

 しかし、数に勝る敵艦隊の猛攻を受けて、味方の艦艇は次々と損傷していく。やがて1隻、また1隻と爆砕されて姿を消した。

「皆さん、お世話になりました。ヴァルハラでお待ちして・・・」ドーンという音と共に画面が乱れ、敬礼していた第四戦隊長のLifeが無くなり映像が消えた。『第四戦隊全滅』とテロップが流れる。

「ヴァルハラでまた会いましょう」(第二戦隊長)

「お世話になりました・・・ヴァル・・・」(第三戦隊長)画面が乱れる。

「・・・ 部隊・・・かく 戦え り・・・」部隊長のlifeが無くなり映像が途絶えた。皆、敬礼しながら、別れを惜しむ間もなく消滅した。


『とある星系第308準惑星守備隊全滅』のテロップが流れた。

「ア~全滅した。何で援軍が来るまで待てないの」

「そうか、参加者は一人で4隻受け持つのね。それでlifeが4個なのか」「MPはビーム砲のエネルギー残量か」猫タロウ(国王)は納得した。

 画面下に、先ほどの5人のアバターが一列に再表示された。全員、額に白三角マークが付いている。

「皆様、お疲れ様でした。この後はお待ちかねの宴会です。1時間後に、激辛レストラン『ヴァルハラ』で会いましょう」と部隊長は参加者に呼びかけたる

各戦隊長たちは「ア~面白かった」「またやりたいです」「お疲れ様でした」とお互いをねぎらった。

 彼らは、この本星から艦隊を遠隔操作していたのだ。全滅した守備隊は無人艦隊だった。


「犬も辛い物が食べられるようになったのか」

AIウィリアム(国家最高統括AI)が答えた「亜人化しましたから」

「玉葱は、食べられるようになったの?」猫タロウ(国王)が再び尋ねた。


2.援軍

 30分後、とある資源星系へ味方の援軍が到着した。総司令部のメインスクリーンには、艦隊司令官の下に、各部隊長と各戦隊長のアバター20人が2列に並んで表示された。

「ㇺ何だ、あの、女と見違えるような顔の若造は」画面をみて思わず軍司令官は呟いた。

副官が答えた「かの有名な銀髪の小僧です」

銀髪で可愛い顔の美少年が、艦隊司令官として、画面に表示されていた。

「あれが、継承侯お気に入りの…」「まだ、ガキではないか、アッ」犬の軍司令官は慌てて口を閉じた。そのとき、継承侯(犬)ログインのテロップが流れた。

「アー間に合った。良かったァ」


「艦隊司令官より、訓令が発せられます」と総司令部管理AIが伝達した。

旗艦より発光信号が各艦に送られた。

『本日ハ、星間物質隕石群希薄ナレド、恒星風ノ風強シ、とある星系ノ荒廃コノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ』

総司令部のメインスクリーンにもテロップが流れた。


「エルくん、頑張って」犬ペロ(継承侯)は両手を握り締めて応援していた。

 艦隊司令官(エル)は発令した「全艦突撃せよ」

(解説AI)「反航戦になりました。両軍は僅かな間隔ですれ違います。」「この戦いは、両軍ともに2度3度と反転して、砲撃を繰り返します。」

「あれ、両軍が一体化しました。予測不可能な展開です」

「フフフ、エルくんの艦隊は戦艦がロボットに変形するのですよ」と犬ペロ(継承侯)。

 味方艦隊は敵とすれ違いざま、各艦がロボットに変形して敵艦に取り付いた。そして、殴る蹴る噛みつくのし放題となった。敵は同士討ち防止装置の働きにより砲撃することが出来ず、成す術なく一方的に撃破されていく。これは全く予想外の展開だ。

「なんと」軍司令官たちは驚いた。

「エルくんに頼まれて、戦艦の改造をウィリアムさんにお願いしました」

「私は継承侯に頼まれて特別仕様の艦隊を作りました」

「どんな交換条件で」と猫タロウ(国王)は聞いた。

 十分後、味方艦隊は一方的に敵艦隊を叩いて壊滅させた。

「ロボットこそ最高の戦力。戦艦に、その座は渡しません」艦隊司令官(エル)は自信満々に宣言した。


 艦隊司令官を務めたのは、ガブリ・エルという名の、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリアのオスだ。いや、亜人化しているので、元ウェスト・ハイランド・ホワイトテリアだった。彼は数か月後に2歳になるのだが、小型犬の2歳は、人間の23歳に相当するとされている。しかし彼らは亜人化して寿命が延びており、ガブリ・エルは人間ならば16歳相当ではないかと思われる。しかし、人間自体の寿命が200歳近くまで伸びていたし、しかもホモサピエンスが亡んでいるので、人間の何歳相当とか言っても、よく分からないのだ。よって、犬ペロはショタコンと言ってよいのかどうか微妙だ。

「エルくん」

 犬のペロ(継承侯)は、艦隊司令官 (エル)に抱き着いた。エルは継承侯アバターの耳をガブリと甘噛みした。

「アバターで抱き着いても、意味なくネ」と猫タロウ(国王)は呟いた。

 戦闘をモニターしているサイトでは、援軍を指揮したグループが、この大勝利に狂喜乱舞していた。各参加者には戦果と損害により算定されるポイントに応じて、賞金が支払われるのだ。



 主人公たちの種類を紹介するのを忘れていたので、ここで紹介します。

犬のペロはメスの秋田犬、猫のタロウはオスの三毛猫でした。今は、亜人化犬猫です。



3. ティアトマト星系会戦 

そんなある日、今日もまた猫タロウ・犬ペロとAIウィリアムは仮想空間で会議をしていた。

「ア~、毎日こんなに損害を出して、何という無駄遣い」AIウィリアムは苦言を呈した。

「でもペロさん楽しそう。お気に入りのプレイヤーを凄く応援しているよね」

「ガブリ・エルくんです。可愛い~」

「ところで、間もなく敵がティアトマト星系へ進出します」

「これは迎撃するかな」と猫タロウ(国王)。

犬ペロ(継承侯)は「いよいよ艦隊決戦ですね。ワクワク」

「3個艦隊で迎撃だね」

「艦隊司令官が決定しました。犬のラクトアイス中将とミッターマイナー中将、それにレイネンカンプ中将と…」

「犬のゼイ・レイネンカンプ中将ですね」

「税・例年還付とか。うらやましいなー」

「でも、この犬たち本名じゃないですよ。何だ、プレーヤー名か」とAIウィリアム。

「総司令官はエルくんにしてね」と犬ペロは要望した。


 銀髪の小僧という異名を持つエル上級大将率いる3個艦隊は三方より敵艦隊に迫った。

その頃、艦隊のバーチャル司令部では艦隊指揮官たちが総司令官に意見具申していた。

(けい)()の言いたいことは分かっている」

「されば、此度は名誉ある撤退をご決断ください」

「それは却下する」

「我軍は各個撃破されますぞ」

「それはその昔、三方から迫る敵艦隊に対して、敵の10倍の速力で移動して各個撃破したという戦訓だろ」

「そうです。今は、戦訓とは敵味方逆の立場に立っております」

「現在、彼我の移動速度はどうか」

「我方は敵の10倍の速度で進撃しております」

「それならば、こちらが各個撃破される可能性はない」


そして味方は各個撃破されることなく、見事に敵艦隊を壊滅した。

 主戦場は再び、とある資源星系に戻り、その後も小競り合いが続いた。


4.無駄遣い

「アーまた無駄遣い。いい加減に止めてください」「文明人は戦争などしないのです。て、人じゃなかった」とAIウィリアム。

「居住星系ならともかく、資源星系などいくらでもあるのだから、戦争などせずに撤退して他の星系を開発すれば良いのです。星系は、それこそ星の数ほどあるのですから」

「でも、これだけ盛り上がってしまっては当分止められませんよ」と犬ペロ(継承侯)は言う。

「艦隊を指揮する権利の抽選倍率が凄いことになっています。それに当選した指揮権が高額で売買されていますね」

 ネットワーク上で当選者が決まると、直ぐにオークションが始まり高値で落札されるのであった。かなり加熱している。


「犬政府は勝手に艦隊指揮官を募集していますが、いい加減に止めて下さい」

「お気軽にゲーム感覚でやっているけど、実際に戦闘艦が破壊されているのですよ」

 しかし犬ペロ(継承侯)は「今、仮想空間でのゲームが物凄く流行しています。こんな面白いこと、犬は今までやったことないから皆大騒ぎです。もう病みつきですよ」「今回の戦いは仮想空間でやったことが現実に反映されるので、人気急上昇です」「因みに、国軍総司令官役も大人気ですよ」とまくし立てた。


「エ、国軍総司令官も抽選なの。軍を作ったのかと思った」と猫タロウ(国王)は驚いた。

「我が国に軍隊はありません。ただし国家固有の権利として自衛のための戦力は、これを保持します」

「それって、もしかして自衛隊…」と犬ペロ(継承侯)が尋ねた。

「いいえ、警察予備隊です」

「せめて自衛隊に格上げしてあげて」猫タロウ(皇帝)は要望した。


 仮想空間に葉巻型の巨大な戦闘艦の映像が表示された。そのサイズは、全長1,500㍍、全幅480㍍、高さ450㍍だ。

「これは、犬たちが遊びで使っている戦闘艦とは全然違うね」

「勿論、こちらは本物の無人戦闘艦ですから。これは犬コロなどに勝手に使わせる訳にはいきません」(キリッ)

「警察予備隊の戦闘艦は立派だね。やはり軍に昇格させよう」

「強力な戦力なので、やたらに使うと侵略戦争になります。こちらの艦隊は平和のために私たちAIがしっかりと管理します」


「こちらは本物って、私たちが使っている戦闘艦は何ですか」と犬ペロ(継承侯)が聞いた。

「いや、戦闘艦ですよ。ただまあ、コストの安い舟艇を武装させただけですけどね」

「やはりそうか。道理で、しょぼいと思った。小さい船の先端にビーム砲が1門付いているだけだもの。初期のTVゲームかよ」と猫タロウ(国王)。

「全長10㍍の宇宙ボートと言うか、小型の舟艇に脱着可能なエンジンとビーム砲を載せました。エンジンは有名なヤマバ船外機です」「それと、簡易防御シールドを装備しています」

 簡易防御シールドがあるので、敵のビーム砲を3発まで耐えられるのだ。

「そんな装備で大丈夫か」

「大丈夫だ、問題ない」「犬の要望通りに艦艇を量産していますので」


「検索しました。初期のコンピュータゲームとやらが、こんな感じですね」「今、私たちがやっているゲームも同じようなものですけど」

「少し前にインベターゲームやバックマンを出したら爆発的なヒットになりました。平城京エイリアンも保養地で人気です」

「私は以前からバーチャルゲームをやっているから、こんな古臭いゲームは見ていられない」「私は”ファーストファンタジー7”まで進んでいる」キリッ「”ゼル太の伝説3”も、クリアーした 」

「犬はシューティングゲーム、猫はロールプレイングゲームが人気です」「民には、順番に商品を出していきますよ」


「それにしても、犬の戦い方が下手すぎる。敵弾を回避しないし。ゲームならレベル下のNPCにやられているようなもの」

「そのうち上手くなりますから、長い目で見てくださいね」

「長いこと戦争を続ける気ですか。現実に戦闘が行われているのですよ」「犬の皆さんは、戦争の悲惨さが分からないのですか」

「そうは言っても敵味方共に無人艦なので暫く大目に見てください」「とある星系には生物がいません。資源採鉱用のロボットがいるだけですから」と犬ペロ(継承侯)は弁解した。


「消耗した戦闘艦の費用は、犬猫の玩具代から引いておきますからね」AIウィリアムは不機嫌そうに言う。

「犬だけにして、猫は関係ないから」すかさず猫タロウ(国王)は言った。


とある資源星系での戦禍は続く。


                               了


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