あ、これやばい
「テラさん! これで間違いないだろうか?」
地中でようやく発見したそれを開いてみるとすぐにテラさんの声が反応した。
『はい。おめでとうございます。状態も良好なようです』
パワードスーツの心臓部、その発掘に俺は成功したみたいである。
専用のケースはボタンを押すとバシュっと音を立てて開き、中から青白く光を発する丸いメカが現れる。
あまりに美しいエレクトロコアの輝きを俺はうっとり眺めて言った。
「じゃあこれを取り付ければ今すぐにでも?」
『それはやめておいたほうがよいかと。こちらでマスター用に調整します』
「えぇ! ダメなの!?」
それはないだろうと俺は声を上げるが、冗談でもないようだった。
『このコアはメンテナンスが必要です。つきましてはパーソナルデータを入力してください』
「ええ……パーソナルデータ? いやまて。それはつまり……このスーツが俺専用になると?」
『はい。細かいデータの書き換えにも少々時間が必要です。あらかじめご了承ください』
「なら仕方がないな!」
ここまで来てお預けを告げるテラさんは中々罪なコンピュータだった。
お楽しみは後に取っておく、ここまで待ったのだから、あと少しくらいなんてことはない。
……いや、まぁ、ちょっとでも早く見たくてしょうがないわけだが。
「……アレだな。マフラーというかスカーフ買ってくるか。赤い奴」
とはいえ、やることはほかにもあるはずである。
俺は町中を散策しながら画期的なひらめきを呟いていた。
なんだろう。なくてもいいが、あった方が楽しい気がする。
それに首は人体の急所の一つだ、守っておいて損はないだろう。
思いついたことを片っ端からぶつぶつ呟きながら、町を見ていると普段は目に入らないようなものも目に入る。
あれはパーツに使えるんじゃないだろうか? あれならいけるんじゃないか?
考えることが多くて困ってしまうね。
お金はこの間リッキーに渡したのでマジで全財産だけど。
スカーフを買うお金もない以上どうすんべと金策に頭をひねっていたから、ちょっと脳みそに余裕がなかったのも確かだった。
俺はここのところのハードワークと寝不足。そして意味の分からないテンションの末に若干だが冷静さを欠いていたと言えなくもない。
まったく、目先のことがよく見えていなかったのだから、本当に睡眠というのは大切だと思う。
案の定、ちょっと気を抜いた瞬間、躓いてしまった。
「あ……」
体がふらつく。そしてこの日の俺は運もなかったらしい。
「あぶない!」
「ほへ?」
馬の嘶きが聞こえた。
振り向いた時には馬車がとてもおっきい。
ふとああこれが噂に聞く転生一秒前かと思ったが、よく考えたらもうここは異世界だった。