ささやかな宣言
本日は我らが秘密基地にてささやかながら関係者を集めた宴を催していた。
俺、大門 大吉は集まった面々にコップを高々と掲げた。
「いやぁありがとう。本当にありがとう。バッテリーが量産されればようやく家電もまともに売れるよ!」
【おめでとうございます】
テラさんの賛辞に礼をして。
パチパチパチと手を叩いているニーニャには手を上げて答えた。
そして招待したリッキーとシルナークの二人は電化製品にはほぼノータッチであるせいか、今一よくわかっていなかった。
「えっと、それができたら君の持ってる不思議な道具が動くようになるんだよね?」
「ああそうとも! 大いに偉大なことだとも! テラさんをほめたたえてくれ!」
とにかく感謝を、テラさんには送らねばなるまい。
テラさんの協力なしでは、ここまでこぎつけることもできなかった。
「しかし、多くは魔道具で代替可能ではなかったのか?」
「なんてこと言うんだいシルナークよ。住み分けはきっとできるさ! 王都の心は寛容だと僕は信じてるよ?」
ふむと、二人がひとまず引き下がったのを確認して、俺はコホンと咳払いする。
この画期的な感じは、異世界人にはわかるまい。
まぁ不安は色々あるが、家電を気軽に動かせるようになれば、商品の幅がぐっと広がるのは間違いない。それは異世界において大いなる一歩であることに間違いはなかった。
「でだよ。さっそくだけども大いなる一歩を踏み出したところで、さっそく二歩目を踏み出そうと思う」
だがそういうと、集まった面々は怪訝な顔をする。
「なにそれ?」
「どうせおかしなことを言い出すのだろうな」
【なに?】
OKでは計画を披露しよう。コホンと咳払いし俺は次の予定を発表した。
「実は……俺旅に出ようと思うんだ!」
かまわず続けた俺に返って来たのは目が点になった仲間達の、反応の分かりづらい表情だった。
「えぇー……何言ってんの? ダイキチ? 旅なんて出てる場合じゃないでしょ? これからやっとお店が始まるところなんだから」
「模範的な反応だ。さすがはリッキー」
「……なんだろうな褒められてはいない気がする」
すごく真っ当な反応をしてくれたのはリッキーだ。
堅実なリッキーに感謝はしている。
判断しかねてシルナークとニーニャは黙っているようなので、俺はさっそく本題に入った。
「わかってる……俺だって心苦しい。しかし実は緊急にやらなくっちゃいけないことがあるんだ」
その時、ピーと炊飯ジャーが音を立てて、真っ白いご飯が炊きあがる。
しっかりと視線が集まったことを確認して、俺はしゃもじ片手に宣言した。
「もはや少量の白米では足りない! 俺はこの旅をきっかけにより食生活を改善しようと思っている! もうありあわせのものを使ったなんちゃって和食じゃ我慢ならない! そして俺には劇的に食の味を向上させる心当たりがある!」
「あー」
「なるほどな」
【はくまい】
「工夫には……限度ってものがあるんだ!」
ああこいつは馬鹿なんだ。
そんな視線はまぁものが手に入った時、初めて払しょくされるものだと、俺はちゃんとわかっていた。
いや、調味料そろえただけでこの視線をどうにかする? ダメかな?
あんまり自信はないけれど、何でこんなことを言ったのかといえば、その原因は数日前にさかのぼる。




