天敵
思えばスライムが漏れ出したのもこいつが一発撃ったからだった。
散ったスライムはすぐにまた集まって今度はイーグルに狙いを定めていた。
先ほどとは明らかに違う。
どうやらあいつに敵と完全に認識されてしまったようである。
更に派手に飛び散らせたのがよくなかった。
スライムは広範囲に広がっていて、ポコポコと独立して動きまわり始め、周囲を取り囲んでいた。
イーグルはポリポリと頬を掻き、俺に尋ねた。
「……さてどう逃げようかな?」
「のんき!」
そしてスライムはイーグルに殺到する。
とっさに俺はイーグルを掴み上げ、スライムのいない方に放り投げ、腕がスライムに触れた瞬間、電撃をぶっ放した。
「んん!?」
とたんいつも以上にまばゆく光ったと思ったら、スライムの中を雷光が駆け巡る。
一瞬波が引くようにスライムが引いてゆくのを確認して思わず口元が緩んだが―――。
『危険です! 離れて!』
「!」
テラさんの警告が聞こえ、俺が後ろに飛ぶと、スライムの中に浮かぶ石がカッっと激しく輝いた。
「うぇい!」
地面を削るほどの雷撃が、全方位に放たれる。
迸った雷撃は地面を走り、当たった場所を吹き飛ばしてゆく。
危ういところで当たらなかったが、まともに喰らえば丸焦げになりそうだ。
「なんだありゃ!」
動揺した俺に、テラさんが鋭く警告する。
『マスターの放った電撃を吸収し、それを返したのです』
「……え? あれ、それじゃあ電撃効かない? さっき打撃はおろか銃撃だって効いてなかったのに?」
激しく嫌な予感がする。
『はい。どちらも有効ではありませんでした』
「……天敵じゃないか?」
ゴクリと喉を鳴らす俺にテラさんはすがすがしいほどあっさり言った。
『まさしくその通りです。撤退を提案します』
「……どうしよう魔王よりスライムが手ごわいなんて」
俺はこの瞬間、絶望的な状況から何とか逃れるべく、頭をひたすら回転させた。




