スライム?
「「ん?」」
俺達は音に反応して同時に振り返る。
最初に見たのは罅の入った水槽と、どろりとその亀裂から垂れ下がるゼリー状の何かだった。
あ、これさっき撃った銃の罅?
ポトンと床にこぼれたそれはフルフルと震えながら動き出す。
「……なんだこれ?」
「ゼリー?」
二人して首をかしげる。
すると小さいそれも俺達を真似るように首を傾げた。
「なんかちょっとかわいいかな」
「こいつは……スライム?」
特に襲ってくるような気配もないそいつに気を取られたのは、失敗だった。
一匹出てきたのを皮切りに圧力に負けた水槽は砕け散る。
「え?」
「な!」
そしてみっちり詰まっていたそいつらは今度こそあふれ出た。
「うおおお!」
俺は悲鳴を上げて、逃げ出した。
とっさにイーグルを掴み上げたのは、特に何か考えがあったわけじゃない。
イーグルが悲鳴を上げる。
「なんなんだあのゼリーのでっかいのは!」
「たぶんスライムだ! もしそうならアレに取り込まれたら跡形も残らないぞ! ああでも金属は食べないから巣には鎧がたくさん転がっているらしい!」
「最悪! 最悪の敵だ! だけどアレはモンスターなんだな!」
念を押すイーグルに、俺は半信半疑で頷いた。
おそらくあれはスライムとまったく同じものではない。
しかし少なくともさきほどの小さな個体をみるに、似たような性質の何かではあると思う。
「ならちょっと試してみようか……」
「うぇい!」
イーグルは俺の腕から抜け出ると、ボヨンボヨン跳ねて転がってくるスライムに向かって立ち止まる。
そして先ほどと同じように、空中に突如として現れた銃の群れを見て俺は表情をひきつらせた。
「なにを……」
「耳をふさいでいたまえ!」
イーグルの号令で浮かんでいる銃が一斉に火を噴き、炸裂音が滝のように吐き出されていた。
数えられないほどの銃口から撃ち出される弾丸の嵐にスライムも景気よく爆ぜてゆく。
「う、うおおおおおお! なんだこれ!」
「ハハハハハ! 打ち放題だ! やっぱり銃は最高だな! 弾なら無限にあるから遠慮なく持っていくといい!」
なんかスイッチ入っちゃったイーグルは、遠慮の欠片もありゃしない。
俺は盾を構えながら様子をうかがって、冷や汗をかいた。
さっき強がりすぎないで本当によかった!
一発耐えられたところで、こんなバカみたいな一斉射にさらされたらハチの巣になる未来しか見えない。
今回出ているのは戦闘機でも撃ち落せそうな機関砲で、弾丸の光景も吐き出される弾の数も桁違いだった。
「あぶなー……あんなん喰らってたらリッキーに怒られる」
『結構余裕がありますね』
「あるもんか……そんなもん」
どこから出てきたのかもわからないが銃の数はどんどん増えているようで、断続的に続く銃声は全く途切れることがない。
「よしやめ!」
イーグルはようやく満足したのか、そんな指示で銃声がようやく止まった。
俺は恐る恐るどうなったのか確認した。
「う、嘘だろ?」
あれだけ撃ちまくったのだから効果があっただろうと思っていたが、どうにも元とあまり変わっていないスライムがまだ健在だった。
一応止まってはいるんだけれども、飛び散った破片が、纏まろうとしているのか俺達を取り囲む様に動き出す。
さっきまでハイだったイーグルに視線を向ける。
「……」
イーグルは黙っていた。
俺は先ほど爽快なほど笑っていた落差で不安になって、喉を鳴らした。
イーグルは俺に視線を向けて、ぺろりと舌を出した。
「……あっはっは。まいったねこれはダメだった……かな?」
「ええええええ」
俺はその瞬間、疑念が浮かぶ。
いかん、この人意外とドジッ娘なのでは!?




