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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
パワードスーツ起動編
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パワードスーツに求めるもの

 さて住居のある場所がゴミ山だという関係上、友人であろうと家に招く機会というのは実はあまりない。


 もちろん秘密基地の中はなおさらである。


 人を呼ぶので掃除をした基地内には、一応丸い円卓と椅子を用意していた。


 そしてもちろん今日の本題も綺麗に磨き上げて、目につくところに配置済みである。


「ではお披露目と行こうリッキー……」


 俺はリッキーを地下基地に案内し、電源を入れると照明が秘密基地とパワードスーツの姿を照らし出した。


 未知の金属で構成された、不可思議な鎧があらわになるとリッキーの目が輝く。


 その目はまさに職人の物で、リッキーは至近距離でスーツの隅々まで細かく観察していた。


「うわ! なにこれ鎧? 見たことない金属だ。重量結構ある?」


 見事な食いつきである。俺は楽しくなってきて胸を張って説明した。


「なんたってナノ・メガロニウムだからね! 恐ろしく軽いさ!」


「え、何その金属。潰して素材にしていい?」


「だめ。こいつは動力があって中の人の動きに合わせて鎧が補助するんだ。かなりパワーはあると思う」


「へぇ。魔法の肉体強化みたいなことができるのかな? 鎧で動きを補助しようってコンセプト、とがってて好きだなぁ。装甲が最低限なのはあたらない事前提ってことだよね? 速さ自慢の人は軽装好きな人いるもんなぁ」


 だんだん早口になっている、リッキーは乗ってきていた。


 これはいける。そう判断した俺はさっそく依頼の話を切りだした。


「俺はこいつを完成させるつもりなんだ。それでリッキーにもお願いしたいことがある。こいつにピッタリ合う外部装甲を作ってほしいんだよ!」


 俺はありったけの情熱を込めて、リッキーに説明した。


「えええ……なんでそんなことするのさ? 機動力重視なんでしょ? コンセプトと矛盾しない?」


「いや、たぶんこれ多少装甲を足したくらいで機動力が落ちるようなやわなパワーじゃない。元は装甲をつける必要がない、防御手段がなんかあったんじゃないかなぁ。だから不完全なんだ。装甲は絶対いる。まぁ? パワードスーツなんだから。硬くて、強くて、速いのは基本かなって」


 パワードスーツを触った感触だが、全身金属の装甲で包もうと、動きが鈍ることはたぶんない。


 何よりパワードスーツと名乗るなら、現状ないも同じな防御力の強化は必須だと思うのだが、リッキーはあきれ顔だった。


「だいぶん無茶言うよね」


「大事なことだとも。でも一番大きな理由はだ……デザインが気に食わない」


「……えー? 夢そのものなんじゃなかったの?」


 リッキーの疑問はもっともで確かに辛辣な評価に聞こえるなと思うのだが、俺にしてみれば最高だからこその言葉だった。


 俺はこいつをよりカッコイイ鎧にしたい。そのためには違和感なく装飾を付け足せる凄腕の職人の助けが必要だ。


 特に「カッコイイ」のところが重要だろう。


 見た目はもちろん実用に足る代物にしなければならないのは当然である。


 ガッと拳を握り、俺は眉間にしわを寄せて力説していた。


「だから妥協は許せないの! 頭の先から足のつま先まで俺好みにしたいの!」


 性能はきちんと動かしてみなければわからない、だからせめて見た目だけでも完全に理想の姿に仕上げたいわけだ。


 この熱い気持ちは、職人であるリッキーにも伝わったようだった。


「……ちなみにどんなのにしたいとか、あるの?」


「……うむ。実はここにすでにイラストに起こしてある。こいつを参考にぜひお願いしたい」


 若干勢いに圧されて引き気味にも見えるリッキーに俺は渾身のイラストをババンとたたきつけた。


「あーなるほど……ってずいぶん凝ってるなぁ」


 リッキーは難しい顔をしていたが、不可能ではないようにテラさんと検討を重ねたから、無茶はないはずだった。


「そりゃあ、連日にわたって考えに考え抜いた力作だからね……できない?」


「いや、できる。できるとも」


 戸惑ってはいても、リッキーは断言した。それでこそリッキーである。


 俺は改めてリッキーの重要性を再確認して目をきらめかせていると、リッキーは引きつった笑いを浮かべた。


「ええっと。まぁ僕としては面白そうだしその仕事を請け負ってもいいんだけど……」


「だけど?」


 言い淀むリッキーに続きを促す。


 するとリッキーは一瞬だけためらいを見せる。


「でも、その……すごくお金かかるよ?」


 そしてリッキーは非常に現実的なセリフを口にした。




「あ、やっぱりいる?」


 まぁそりゃそうだろうと思いつつ、口に出してみるとリッキーからはあきれ声が返ってきた。


「当り前じゃないか。鎧に使う材料だってタダじゃないんだから」


 そりゃそうだ。


 こんなものをいじるのに材料費すらかからないなんてことはない。


 しかし俺にもちゃんと考えがある。


 俺はさっそく円卓に今回最後に出すはずだった切り札を披露した。


「なら……これでどうだろうか?」


 中身のぎっしり詰まった布袋を円卓に置くと、ドスリと重い音がする。


 俺が出したのは単純にお金だった。


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