期待の新戦力
「おー……」
俺、大門 大吉の前には、四つの光がふよふよ浮かんでいた。
魔法の光はお手玉くらいの大きさで宙を漂い、円を描いている。
それをやっているのは、店のテーブルに座る一人の女の子であった。
【魔法は……得意。王都にいる人が使う魔法なら全部使える……と思う】
「すごいな。やっぱこの能力自前なのか。うらやましい」
外見年齢は、十四・五と言ったところか、褐色の肌に間に目を隠す白い髪の女の子だ。
彼女の名前はニーニャ。なぜか家で匿うことになった。
あまりにも唐突で俺は眉間にしわを寄せていた。
「んー詳しい事情がわかんないのはちっと怖いなぁ」
【……それは。私が、勇者に頼んだ】
「へ?」
まさかの自己申告? なぜ故?
本気で疑問に思ってニーニャの顔を凝視する俺に対して、ニーニャは眉一つ動かさず真顔で言った。
【……縁は大切。特に良い縁は簡単に切ってはいけない】
「それってどこかの風習かなにか?」
【……そう。縁は巡っている。私は助けられた、だから返さなければ】
「そうなの?」
【そう】
どこか得意げにそう語るニーニャにとっては重大なことのようだ。
だがなんにしても、このニーニャは魔王に憑りつかれ、王都の闘技場でドンパチをやらかした。
ここに勇者ツクシが連れてきて、周囲が黙認しているというのなら何らかの決着はついたに違いないが、事は慎重に運ぶべきだろう。
「しかしこの店もこれからあわただしくはなるからなぁ。落ち着けないと思うが」
【必ず役に立つ。忙しいのなら手伝う】
「ふーむ」
俺はすごく悩んだ。
これから拾ったものを修理して並べるわけだが、そこを手伝わせるわけにもいくまい。
それでなくとも何を売っているかもはっきりしない謎の店である。
いや待て。
俺はそこではたとニーニャを見た。
【?】
若干幼くはあるが、人間基準でみて、とてもかわいらしい美少女だった。
年齢的にもツクシと同じか、少し上に見えるのだから問題もあるまい。
例えば、この謎のお店にちょっとガタイのいい男がにっこり笑って座っているよりも、警戒されないのではないか?
ついでに言うなら、やる気満々で、秘密まで共有できる人間というのは非常に貴重なのではないだろうか?
「いや、それどころか欠かせない新戦力?」
【間違いない】
そしてこのニーニャ。売り込みに余念がない。
俺はフッと笑い、ニーニャの肩に手を置いた。
「……よし。ニーニャ、君に朗報だ。なんとこの店、君が好きに使っていいよ?」
俺がそう言うと、ニーニャはコテンと小首をかしげた。
【……どういうこと?】
「ふむ……では説明しておくとしよう。この家の秘密を。ところでニーニャはパワードスーツに興味はあったりするかな?」
【?】
ニーニャが本気で理解不能っぽい顔をしていたので、俺は手っ取り早くこの店の地下をニーニャに見せることにした。




