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魔王の本気

「貴様ら……もう許さんぞ! 手加減なぞせんからな!」


「手加減なんか、最初からしてないくせに冗談言うなよ……」


 そう思ったのだが、言葉通り何かし始める魔王は普通ではない勢いで体が膨れ上がり始めた。


 魔王はもう人型ですらなく、風船のように膨らみ続けて、丸い球体へと姿を変える。


「……」


 あ、これは本当になんかあるやつだ。


 ゆっくりと浮かび上がり、巨大な目玉を見開くそれを見て、喜んでいるのはツクシくらいだった。


「おお! なんかでかくなったぞ!」


「……巨大化は定番すぎないか?」


「やかましいわ! ことごとくリアクションのおかしい人間どもめ!」


 変貌した魔王の周囲に再び赤、青、緑、茶色の発光体が四つ浮かび上がった。


 それは先ほど見せた様々な属性の魔法弾だが、高速で魔王の周囲を周回し、一本の輪に見えるような速さで回転し続ける。


「まずは貴様からだ……喰らうがいい。これがエレメントマスター……この体の真の力だ!」


 魔王が叫ぶと光の玉は次々とマシンガンのように射出された。


 体をそらすことはできたが、足に命中したそれは瞬時に凍り付く。


「!」


 魔法はとにかく途切れない。


 これはまずいと飛び上がる。


 だが今度は弾けた光の玉から炎が噴き出し視界を覆った。


 炎の幕から次々飛び込んできた光の玉はクレイモアのように弾けて、俺の体が衝撃でのけぞった。


「……ぐえ!」


 痛みでうめき声をあげる暇もなく、見えない何かが腹のあたりで膨れ上がり俺の体を押し潰す。


 ドカンと派手に音を立てて地面にめり込んだ俺は次々襲い来る魔法の雪崩に蹂躙された。


「ヒヤハハハハ! 他愛ない! これこそが本来の在り方だ!」


「……くそ、せこいやつめ」


 魔王の勝ち誇った声が聞こえる。


 あの野郎ちょっと不安になったのか俺にターゲット搾りやがった。


 キーンっと耳元のスピーカーにノイズが聞こえ、テラさんの報告が矢継ぎ早に入った。


『パワードスーツへのダメージは軽微。しかしマスターへの体の負担が深刻です』


「……気のせいじゃないか?」


『状況判断は正確にお願いします。十分ダメージは深刻です。撤退を推奨します』


「……」


 確かに、全身くまなく死ぬほど痛い。


 肋骨に罅くらい入っているだろうし、内臓も痛めているかも。


 油断すると、血反吐の一つも吐きそうだ。


 きっと今俺のダメージを感知するヘルメットの目は


 ><


 みたいな顔になっていることだろう。


 テラさんの言葉が甘い誘惑のように俺を弱い方へと誘う。


 今逃げれば逃げられるのかもしれない。


 しかし、ひょいっと俺の顔を覗き込んだツクシは言った。


「もう無理か? 僕が代わるか?」


「……!」


 こんなことを言われたら、引き下がれるわけがない。


 俺はきしむ体を奮い立たせて、俺は思い切り両足を振り上げて飛び起きてやった。


「いいや。このくらい……全然平気だ!」


「おお! 丈夫だなロボ!」


「ほう……まだ動くか」


 しかし一度起き上がってしまえば、このくらいのダメージ全然動ける範囲内だ。


 ぼうっとしている暇なんてない。


 こうして元気なところを見せたのだから、次が来るのはもうすぐ後だ。


 俺は相変わらず空に浮かんでいる黒い球体を睨みつけた。


「だが、まだ終わらんぞ?」


 圧倒的な存在感は、その辺のモンスターがなまっちょろく思える。


 魔王の表面がぼんやりと輝き、魔法の弾が再び無数に生まれていた。


 小さな光は無数に分かれ、今度はびっしり俺達をドーム状に取り囲む。


 今度はあれが四方八方から飛んでくるわけだ。


 なるほど、楽しいアトラクションだ。


 俺の表情もひきつった。


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