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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
パワードスーツ激闘編
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ヒーロー始めました。

「!」


 タカコは俺の声を聴いてすかさず反応した。


 かなりのダメージを受けているとはいえ、化け物ボディはまだ動く。


 だが俺はタカコの腕の一振りをかいくぐり、すれ違いざまにタカコのパワードスーツの装甲を無理やり引きはがした。


 すれ違いざまコアを見つけたが、装甲の中に潜り込んだ。


「この!」


 いったん離脱して、空中に足場を作り、再びアタック。


 スピードを封じるためか降って来た大量の岩の礫を、俺は右手を突き出して収納空間に入れて無力化した。


 咄嗟に放った蹴りは黒い雷を纏い、タカコの蛇のように伸びた下半身を切断しする。


 自爆は効いている、バリアが機能せず防御能力はがた落ちである。


 よろめくタカコは憎々し気に視線を巡らせていたが、俺を目で捉え切れてはいない。


「……このスピードは!!!」


「やっぱ雷と言ったらやっぱスピードがないとしっくりこないよな!」


 続いて俺はマフラーを操り絡みつかせて、振り回し、浮くのがやっとなタカコを空から引きずり下ろした。


 墜落したタカコの衝撃に耐えられずに、きしむような音がビル全体から聞こえて来た。


『修復の速度が速いです。さらに今ので建物の損傷率が致命的です』


「……」


 いろんな意味で時間はかけられない。


 俺は転移を応用して、ランダムに動き回り、次々に攻撃を繰り出してタカコを翻弄した。

 

「その重い体じゃ俺は捕まえられないな!」


 我ながら露骨なスピードアピールだった。


 すぐさま死角から連続してエネルギー弾を叩き込み、装甲をさらに削ってやると、タカコは安い挑発に乗って来た。


「なら、軽くなればいいだけでしょう!」


 理性が飛びかけてて、本当によかった。


 タカコは巨大化した装甲の大部分を捨てて、飛び出してくる。


 その姿は元のパワードスーツに近く、コアも胸のあたりに張り付いていた。


 軽くなったタカコは間違いなく速い。


 だがこの状態ならコアはどこにも逃げられまい。


 常識を超えたスピードの世界で俺の五感のすべては完全にスーツに適応して、タカコの姿を捉えている。


 タカコは俺に視線を合わせて、吼えた。


「なんで私の邪魔をするんですか!」


「邪魔? しないよそんなもん」


 タカコは体を荒々しく振り回した。


 腕の一撃は即死ものだが、焦りで動きは荒く、もうコアはもうがら空きだった。


「貴方には! わからないんだ! 手に入れたいものを手に入れた貴方には!」


「どうかね……俺だって肝心な時に間に合わなかった間抜けだよ。だけどな――」


 いつだってことに備えて万全に思い通りなんて都合のいいことはなかった。


 だがやりたいことがはっきりして、覚悟が乗れば、全身に力が乗る。


 ツクシが。


 そして今まさにシャリオお嬢様の輝きはそんな簡単なことなのかもしれない。


 きっと今の俺は、さぞかし禍々しく見えるだろう。


 だが大きくても、小さくても、歪でも、黒でも白でも何でも関係ない。


 俺はただ欲しかった。


 いざという時、助けたいものを助けられる力が。


 失敗しても大丈夫だと笑える力が。


 俺は高く飛び上がり、渾身の蹴りにすべてを乗せた。


 タカコの全身から、あらゆる属性の魔法がでたらめに放たれたが、魔法の一斉射の中でも俺はもうひるまない。


「俺だってやってやるさ! ヒーローって―――名乗ったんだからな!」


 放つ蹴りの鋭さはかつてなく。


 俺の背を押すすべては、目もくらみそうなほどに輝いて、タカコのデモニックコアを砕いた。




 タカコのパワードスーツと俺のぶつかり合いは白と黒のまじりあった雷をまき散らし、我が社のビルに降り注ぐ。


 崩れ行く瓦礫と崩壊するパワードスーツの装甲の中で、俺はタカコを見つけ出して何とか助け出していた。


「……!」


 瓦礫を空中で蹴り、更には足場を作り出して離脱した俺は無事着地する。


 一息つくと、俺はその場に座り込んだ。


「疲れた……なんか、ただの仲裁のつもりが大ごとになっちゃったな」


 場合によっては感情的な話になるかもと思ったが、まさか姉妹喧嘩の仲裁でここまで派手なことになるとは思わなかった。


「……むにゃ」


 タカコは意識がなくぐったりしていたが呼吸はしていて、生きてはいるらしい。


 デモニックコアの影響はなくなったのか、元の体に戻れているようだった。


 インナーは汚れてはいても傷一つなく、安定の品質である。


 制御こそしくじっていたが、こうして無事に済んでいるあたりさすがだった。


「だけどなぁ。あんまり無茶すんなよ」


 自分のことは棚に上げてこつんと額を小突くと、タカコは鼻提灯を弾けさせ目を覚ました。


「ふにゃ! ……あ、おはようございます!」


「おはよう……。元気そうで何よりだ」


「ええ、あっはい。えっと……」


 タカコは俺の言葉から何かを察したのか周囲をきょろきょろと確認していた。


 そして顔色を青ざめさせると、テヘリと渾身の「悪気のなさそうな顔」をして言った。


「あっれー? 私なんかやっちゃいましたか?」


「……えぇー。そのセリフここでかます?」


 今日のことはすべて俺が悪い。だいたいあってるので否定はすまい。


 だが、完全に瓦礫と化した我らが拠点と、心ここにあらずなタカコの顔を見ていると、ドッと疲れが一気に襲ってきた。


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