ビッグダイモン(仮)
ビックダイモン(仮)。それは対巨大生物を想定した決戦兵器である。
コンセプトは単純明快、質量こそ威力。
決戦兵器とか勢いで銘打ってみたが、思い付きと技術の無駄遣いを極めた悪乗りの産物だった。
超重量級の装甲はもうすでに巨大ロボットそのもので、ひそかに心躍らせている。
だがまさかこんなに早く同等の大きさの敵を相手にすることになるとは俺自身思っていなかった。
「じゃあ、始めようか!」
「また妙なものを持ち出して来て! パワードスーツじゃなかったんですか!?」
あっちょっと正気に戻ってる。
やはりこいつのインパクトは相当のもののようだった。
「まぁおもちゃだよ。だいたい巨大怪獣化した奴に言われたくない」
「これは副産物だからいいんですよ!」
タカコの声で叫ぶと、彼女のパワードスーツの頭部に狼のような頭部が形成され、獣の咆哮を俺に叩きつけてきた。
もはや原型が分からなくなってきているそれを見て俺は表情をしかめた。
「なんか体の動きが獣じみてきてるな? タカコがやってるんじゃないだろう?」
いぶかしむ俺にテラさんはタカコの現状を伝える。
『現在パワードスーツが彼女の意思に反応して自立して行動しています。頭部に当たる部分にユーザーの反応があるようです』
「タカコは頭か。コアは?」
『胸部の装甲です。コアを破壊すれば暴走状態は沈静化するはずです』
「なるほど。さすが俺達の作品だ。ロマンをわきまえてる」
やることが分かりやすいのは実にいい。
そしてテストという形式をとっていたのは不幸中の幸いだった。
ある程度どういう状況か把握出来れば、思い切って対処できる。
「まぁ、こいつに出来ることは一つしかないんだけどな!」
俺は腰を低く落として、そのまま真っ正面から突進した。
タカコの正気は儚いものだが、攻撃だけは的確で、例の光線はすぐさま俺の動きに反応して飛んできた。
しかし俺は降り注ぐ光線を完全に無視する。
光線は間違いなくビッグダイモンの装甲に触れたが、小動もせずに弾かれ、弾幕を突き抜けた。
「効かないね!」
「!」
タカコは不意を突かれて反応は鈍い。
すぐさま距離を詰めて、俺はがっちりと両手で組み合った。
両腕の装甲がこすれて火花を散らし、不快な音を立てる。
そのままの勢いで俺は頭を相手の頭にぶつけ、タカコに語り掛けていた。
「タカコ……いきなり取り込まれるなよ。何やってんだ」
「力を……力が欲しいから」
「力? あんたが欲しいのは別のもんだろう?」
一緒に旅をしていれば、そんなことは俺でもわかる。
タカコはいろんなものに興味を示していたが、俺の作ったパワードスーツを本気で欲しがったりはしなかった。
俺が旅の中で見たのは彼女自身の知的好奇心と、姉に対しての執着心。
そんでもって、見え隠れする強い憧れだ。
俺は一歩タカコを押し返す。
ビックダイモン(仮)のパワーは低い振動と共に上昇し、タカコを圧倒し、ねじ伏せた。
「……俺みたいな男を手本にするのはお勧めしないね。第一姉ちゃんに笑われるぞ!」
「うるさい!」
集まって来た砲台から背中に光線の集中砲火を浴びせられたが、このビッグダイモン(仮)はビクともしない。
それどころか電気由来の攻撃は、この身体に触れた瞬間吸収されて、どんどんパワーは上乗せされてゆく。
「さぁ! 終りだ!」
俺の握力はぐしゃりと相手の手を押し潰すとタカコを力任せに振り回して上空に放り投げた。
まるでハンマー投げのように体を振り回され、飛んでいくタカコは軽々と宙を舞う。
「アアアアア!」
「コアを砕く。手加減するけど死ぬんじゃないぞ!」
『エネルギーのチャージ完了しました』
「タイミングバッチリだ!」
溜めたエネルギーは全身を駆け巡り、右拳に集約してゆく。
ガシュッと激しく蒸気が噴き出し、右腕側面に三本の杭が飛び出したのを確認すれば、準備は完了である。
俺はバーニアを全開でふかし、タカコを追って飛び上がる。
コアに狙いを定めて繰り出すのは、三本の杭を打ち付けるとっておきの武装だった。
「ライトニングパイルブレイカー!」
渾身の拳が命中する瞬間、蒸気を吹き出し、特大の杭がタカコを打ち貫く。
溜めに溜めたエネルギーが時間差で解放され、特大の雷が爆ぜた。




