責任者って責任を取るために存在してるらしい
「な、なんでこんなことに……」
王城なんて正式に招かれたのはどれくらいぶりだろうか?
迎えに来た馬車に揺られながら俺は手元の手紙を眺めた。
封牢に印は王族の紋章で、俺でも知ってる正式なもので間違いない。
手紙の内容は端的に言えば招待状である。異世界カンパニーが今回社会貢献したので褒められるらしい。
だが俺は思った。
「なんかの罠か?」
王都を壊した宇宙戦艦と戦った覚えはあるが、アレは白い戦士として戦って、今は指名手配中である。
俺はしがない雑貨屋で、異世界の珍しいものを修理して細々売る人だったはずだ。
だとすれば、「異世界カンパニー」なんて会社が何かをやったということなんだが、俺は詳しくは知らない。
馬車の外を見ると、すっかり綺麗になった街並みと、元より立派になった王城も見える。
建築系の仕事に手を出したらしいから、いくつかの建物を作るのにちょこちょこっと手を貸して貴族の誰かの恨みとか買ってたら最悪だなと俺は思った。
「……一応社長ってことになっているからなんとも」
それでもひとまず顔を出さねば始まらない。だからこそ、珍しく俺の胃は痛むのである。
結局言われるがままに、王城にやってきた俺は顔見知りの出迎えを受けた。
「ダイキチ。よく来たな。歓迎するぜ?」
それは鎧を着込みマントを羽織った、騎士姿のマリーお嬢様はいつもと変わらぬ気軽な様子で声をかけてくる。
そんなマリーに俺は頭を下げた。
「此度はお招きありがとうございます。マリー様もご健勝そうで何よりです」
「かしこまるなよ、ダイキチ。まぁ正式な招待だしな。帰って着て早々やってくれるじゃないか」
肩を叩いて褒めてくれているのだろうが、ちょっと心当たりがないんです俺すみません。
なんてセリフを言うわけにもいかず俺は曖昧に笑った。
「いやぁ。まぁ……どうも。実際どのくらい評判なんです? 建築業に手を出したって話は聞いたんだすけど。王都の家なら魔法でも直せますよね?」
異世界カンパーニーが傍目から見て、どんな風に見られているのか、その辺り気になった俺はマリーに尋ねてみると、彼女からは目を丸くされてしまった。
「いや、そりゃぁすごいもんだ。魔法で作るより構造がしっかりした建物がすごいスピードで建つからな。それにまさか王城まで再建できるとは思わなかった」
「王城を再建? 異世界カンパニーが?」
おいおいそんな公共事業みたいなことまで引き受けてたんだらさすがに言えよと、俺は後でキョウジを締め上げて吐かせようと誓った。
当たり前だがマリー様は俺の的外れな質問をジョークと受け取たらしい。
「知らないわけないだろ? 町はともかく王城は結界の要だから、ある種の魔法措置になってるだろ? ここだけの話、修復も一朝一夕とはいかなくて私達も困っていたんだよ。そしたらお前のところのなんてったか、エンジョウとかいうのが売り込みに来て、異世界の技術で王城を修復して見せると大見え切った」
マジか半端ない度胸だなあいつ。
一歩間違えば死刑一直線になりそうなことを、俺の名前でやらかしていると思うと、汗が冷たくなってきた。
「それで見ての通り、王城を見事完成させたわけだから大したもんだよお前達は」
「……!」
確かに、王城は再建されているのは王都の端っこからだって見ることができた。
なんかすごい事やらかしてたんだなキョウジ氏。
その行動力は素直に感心した。
「よ、よく王家に直に売り込みなんてできましたね?」
「そりゃあ、お前が手引きしたようなもんだからだろ? 勇者のパーティメンバーで王都でも顔が効くお前の店だからすんなり話が進んだんだよ」
「……」
俺って結構無茶すれば通るポジションだったのかもしれないと、目からうろこが出た気分だった。
ポカーンとした間に連れてこられた謁見の間の扉が開くと、当然知った王冠の乗った顔があった。
マリーお嬢様と俺は跪く。
謁見の間には俺とマリーお嬢様以外は数名の騎士と、王様しかいない。
「……!」
こう、王都の復興に関わったメンバー全員を大雑把にねぎらうとかじゃなく、個別か、いよいよヤバくない? と内心警戒心マックスでいると、おもむろに王様は口を開く。
「よくぞ参った。「異世界カンパニー」の者よ……いや、ダイモン=ダイキチと呼ぶべきか……」




