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自爆。その浪漫。

「へっへっへ! キョウジのナノマシンで捕食をやめさせるように命令してみたんですよ!」


「サンプルXさんめちゃくちゃ壊れてなかった?」


 ふさがった道を覆っていたものはボロボロになって崩れていたと思うが、タカコは満足そうだった。


「それは想定外ですけど、あんなめちゃくちゃな状態簡単に維持できるもんでもないのでは?」


 実際タカコの言う通りだったのだろう。


 あれだけ無秩序に動き回っていた、肉片たちすべてがたった一つの意思の下統括されているとは驚きだった。


「まぁ。……タカコの秘策に効果があったことに比べれば些細なことかな?」


「ひっどくないですかね! なんてこと言うんですか!」


「ごめんごめん。だがね、あんなものを前にしたら軽口の一つも叩きたくなる」


「へ?」


 一時のピンチは脱した、それは間違いない。


 サンプルXは崩れた部分をさらに切り離して、研究所から分離したようだ。


 その結果、俺は飛び出した地上部分で、変貌したサンプルXを目の当たりにした。


 そびえたっていた輝くような体を持つ巨人は、人型だった。


 人型は最初の姿をベースにしているとわかるが、あのぐちょぐちょとしたごった煮状態の肉の詰め合わせから、どうしてそうなったかもわからない神々しさを感じる。


 全長はもはやわからない。


 頭の先が雲に隠れてる常識はずれのサンプルXの姿は俺の体の芯を震わせた。


 タカコなんてマナーモードのスイッチが入ったようだった。


「あばばばばばば……なんだかとんでもないことになってんですけど?」


「もうちょい頑張って全部ぶっ壊してくれないか?」


「いえ……もう壊れてないなら、失敗かなって思うんです」


「そこをどうにか」


「だ、脱出できただけでもすごいことだと思うんですけど」


 焦る俺達に向かって、巨人はゆっくりと手を伸ばしてくる。


 俺は思わず見上げながら、喉を鳴らす。


 もうだめかと俺は身構えた。


 だがそこにやって来たUFOが飛んでくる。


 俺達を見つけて飛んできたそいつは、嬉しそうに言った。


「おお! 脱出成功じゃな! では! ポチッとな」


 何をポチッと押したのだろうか?


 驚きのあまり止まっていた、頭が動き出す。


 ドクターダイスの顔を見て、俺は全力で叫んでいた。


「テラさん! 全力防御!」


『了解しました』


 咄嗟に俺はドクターダイスのUFOにしがみつく。


 その瞬間―――島が輝いた。


「うおおおお!!!」


「ぎゃあああ!!!」


「……」


 いつの間にか気絶しているキョウジがこの時ばかりはうらやましい。


 チカチカ光る火花の様な輝きは海まで広がり、白い巨人までそれに包まれると猛烈な爆発が起こった。


 爆風は時間差で暴力的な衝撃をあたりに振りまく。


 それがドクターダイスの自爆装置だと理解した時、俺は思わず呟いていた。


「ものには……限度ってものがあるだろ?」


「そんなのつまらんじゃろ? 限度つーものはやるだけやった結果ではないじゃろか?」


「かっこいいこと言ってんじゃないよ。研究所どころか島が更地じゃないか……」


 毎度爆破の規模が大きくなっているのは気のせいだろうか?


 吹き飛ばすのが自分の研究所だと思うと狂気的である。


 だが俺はちらちら揺れる炎の中に、蠢いているものを見つけて表情をこわばらせた。


「おいおいおい……まだ終わってないのか!」


 俺はタカコとキョウジをダイスのUFOに残して飛び出す。


 そして爆心地にすでに通常サイズの人間の姿に戻りつつあるサンプルX見つけて、うめき声をあげた。


 炎の中で燃えながら再生を繰り返すそいつは、呟いていた。


「……生命は唯一一つ……すべての命を集めて究極の生命体へと……」


「うっ……」


 こいつは危険だと、自分の体が全力で悲鳴を上げているようだった。


 それは俺の本能からの警告だったのだろうが、この際無視するのが正解だった。


餌をもとめて俺に大量の触手が襲い掛かってきたくらいで不意を突かれたのは、俺が怯んでいた証拠だ。


 あ、まずい。これ死ぬかも。


 そんな考えが頭をよぎった。


 だがサンプルXは俺が何かする前に一度大きく震え、動きを止めていた。


 サンプルXは振り返る。


【そんなことはさせない】


 俺もそこに頼りになる看板娘が、どす黒い心臓をつかみ取りして立っているのを見た。


 サンプルXは目を見開き棒立ちのまま固まっている。


 だがシュルシュルとニーニャの体から出ている黒い帯にがんじがらめにされている自分の心臓を見て、黒い塵になって消えてしまった。


 一瞬の出来事だ。


 俺は全身からどっと力が抜けて、その場に座り込む。


 ふんと鼻から熱い息を吐くニーニャは全身煤けていて、ひどくお怒りだった。


【……あのドクターダイス。いつか泣かす】


「死ぬかと思ったな」


 どうやら爆発でひどい目にあったらしい。


 そしてニーニャの体から出て来たマー坊は、どこか愁いを帯びた目で心臓を見ていた。


「ハートキャッチって……ホントにあるんだな」


 俺は心底安心したと同時に、とてもくだらないことを口にした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今章もまた、主人公ほとんど良いとこ無し…… すぐに怯むし諦めるし油断するし、せっかく、自分の努力や向き合い方次第で能力向上の道が拓ける仙術とか呪術とか、色んな強さへのきっかけを得たのにあまり…
[一言] >ハートキャッチって……ホントにあるんだな 一緒にされると毎週日曜朝を楽しみにしている少女や 大きいお兄さん達がお怒りに。。。
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