簡易ラボの真骨頂
タカコとキョウジはどんどん崩れていく基地の中で右往左往していた。
「めちゃくちゃ暴走してるんですけど!」
「これは暴走じゃない! 正常なあいつの能力ですよ!」
「じゃあ普通に止めてほしいんですけど!」
「できればとっくにやっているわ!」
ニーニャの用意してくれた魔法の守りで、爆発からは助かったが、その後めちゃくちゃにそこら中にいる怪獣を捕食し始めたサンプルXのせいで、研究所は絶賛崩壊中である。
だが何の意味もなくこの場所にとどまっているわけじゃない。
タカコは言い聞かせるように、キョウジに言った。
「い、いいですか? 頭をもぎ取るなんてあんな雑な方法じゃ体内のナノマシンを完全に取り除くなんてできません。何とか残ったナノマシンであいつの動きを止めるんです」
タカコはキョウジの使っている力の全容を把握していた。
前いた世界では、医療が発展していてナノテクノロジーという、目に見えないほどのロボットを作り出す技術が存在していた。
キョウジは体内でナノマシンを作り出し、様々な指令を与えて生物に送り込むことができる装置を体の中に埋め込んでいる。
キョウジはしかしいやいやと首を横に振った。
「ぬぅ……しかし今操れてないということは、支配するには数が足りないということでしょう?」
「新たに打ち込むことはできないんですか? 貴方のそれ、いくらか生成できるはずじゃないでしたっけ?」
タカコは確かそんなこともできたはずだと指摘する。
出来るのならそれが一番確実だが、スッとキョウジは目をそらした。
「いや、今のところストックが切れていて、とてもあんな化け物を操れるほどは……」
「じゃあやっぱり今ある分でどうにかするしかないですか……」
キョウジがあてにならないのはしょうがない。
タカコはペンダント握り占めて、光のドームを形成した。
「うお! なんですかその機能は!」
「って知らないんですか! 人の物盗む前に使い方くらい調べる努力をしてほしいんですけど!」
文句をいいつつ、タカコはドームから取り出したコードをその辺の肉片にぶっ差した。
「ちょちょっとやってさっさと逃げますよ!」
「お、おう……わかりました」
今までいた世界の技術位ある程度使いこなせなければ、簡易ラボの名がなく。
サンプルXが体をでかくした分、鈍感そうで助かった。
タカコはペロリと唇を舐めて、さっそく作業に取り掛かることにした。




