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何もそこまでしなくても

 ジャングルの中の道なき道を、俺、大門 ダイキチはドクターダイスの案内で進んでいた。


 まぁだいたいの方向を進むだけで怪獣に出くわし、戦うだけで勝手に道は出来るわけだが、言うほど楽な道のりではない。


 物陰からいきなり飛んできた尾の一撃を受けて、ぶっ飛ばされた。


 俺はヤシの木を自分の背中で何本も折る羽目になったが、勢いが弱まったところでヤシの木を足場にして敵に飛び掛かる。


「どっせい!」


 気合一発。


 しなりの勢いを存分に乗せた飛び蹴りは、尾で殴り飛ばした怪獣の額にめり込む。


 それでもまだ耐えた怪獣は、追い打ちに電撃を叩き込んでようやく沈黙した。


 俺はまだビクビク動いている怪獣に、うんざりと顔をしかめた。


「……ぬぅ。敵が多すぎて中々先に進めないな。無視できるほど弱くもないし」


「じゃろ? じゃろ?」


 俺の呟きを聞いたドクターダイスはめちゃくちゃ嬉しそうだった。


「褒めてねぇから」


「いやいや褒めとるじゃろ? 実際に戦っているところも見れてホクホクなんじゃけど」


「それ、自慢の作品が負けること前提の楽しみ方だからな? 置いてくぞホント」


「ヒョッホッホ。それもまたマッドサイエンティスト冥利に尽きるつうもんじゃて」


 笑うドクターダイスを俺はいまいち理解しづらいが、実際この怪獣達は大したものではあった。


 海の怪獣よりも陸にいる怪獣の方がタフで、電撃の一撃ではしとめきれない奴も多い。


 パワードスーツにもダメージがある当たり、手ごたえは尋常ではないといえるだろう。


 このまま戦い続ければ不具合の一つも出てきそうだった。


 ぐずぐずしてはいられないと、俺はフゥと大きめのため息をついて滲んだ汗の気持ち悪さをごまかし、ドクターダイスを担いで研究所を目指す。


 もうジャングルの隙間から、岩場に食い込む様に建てられた建築物も見えてきていて、後は飛び込むだけである。


 だがその前に、俺はドクターダイスに確認した。


「あれだよな?」


「そうじゃよ。久々に見ると泣けてくるわい。……なんでか研究所ってすぐ壊れるんじゃよな」


「……マッドサイエンティストっぽくていいんじゃないか?」


「そうじゃな! 研究所は破棄するものと相場が決まっておる!」


 ちょっとその辺りは後ろめたいので、便利な言葉に便乗してしまった。


 正義の味方とはとても言えない所業だった。精進せねば。


 しかし今回もドクターダイスの研究所は立派なものだった。


 怪獣の大きさや数からいっても相当な規模だろうと察しはつくが、岩から見える部分など氷山の一角で、内部に趣向を凝らしているのは間違いなさそうである。


「また地下に作ったんだなぁ。薄暗い地下施設って……燃えるよな?」


「そうじゃなぁ。こういうのは隠れてやるから楽しいもんじゃよな」


 俺はドクターダイスと頷きあう。


 やっぱりどこか気の合う爺さんだった。


 せっかくだからまた新しく立て直した研究所もあとで見せてもらおう。


 そんな風に考えていた俺は、不意に地面が揺れて立ち止まった。


「な、なんだ?」


「地震じゃろ? 基地に入ればダイジョブじゃよ、耐震はしっかりしとるしなー」


 ふふんと自慢げに語るドクターダイスである。


「へぇ。耐震とか異世界にもあるんだな」


「地面があればあるんじゃないか? まぁ少々地面が揺れたところで壊れるようなやわなつくりではないわい」


 ドクターダイスはよほど自信があるらしいが、しかし現実は非情だった。


 俺達の目の前で、研究所の窓ガラスという窓ガラスが光り―――。


 そして研究所は噴火のように爆発したのだ。


「「研究所が!」」


 あっという間の出来事である。


 何もそこまでと心配になるくらいあまりにも盛大に吹き飛んだ研究所に、俺とドクターダイスの声が綺麗に揃う。


 いくら何でも脈絡なく吹き飛び過ぎた研究所に、俺は言い淀みながら尋ねた。


「……これが耐震? そりゃあ建物がなくなれば外だろうけれども、避難というには乱暴じゃないだろうか?」


「違うわい。斬新すぎじゃろ」


 まだ爆発が続いているせいか、未だに地面が揺れているありさまだが、俺は爆発の中に、やたらうねうねと気持ちの悪い生き物の影を見つける。


 ドクターダイスも同じく、それを目撃して手を打った。


「あー……ありゃあ、あの小僧しくじりおったな。サンプルXが目を覚ましたか」


「サンプルX……」


 ドクターダイスはあーっと声を漏らしつつ、さすがに遠い目をしていた。


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