ペンダントの秘密
タカコはキャンピングカーの中で展開した光るドームで、今までの成果を眺めて満足げに微笑んでいた。
ペンダントを展開すると、簡易的な研究室になる。
異世界を効率的に巡り要点を掴むためのセンサーに、サンプルを採取し保存しておく機能。
更には異世界へ渡る機能を備えたペンダントは異世界を航行する船でもあった。
タカコの姉が作り出した、様々な異なる世界を旅し、未知の技術を収集し研究するためのガジェット。
それがこの携帯型異世界探査ラボの使い方だ。
「興味深い……実に興味深いですね……」
中に浮かぶ膨大な映像と、収集した資料を照らし合わせてタカコは唸る。
あらゆる世界のあらゆるものが漂着する世界。
ある程度予測はしていたが、本来同じ世界に存在しない力が同時に存在し、実際に機能している場面を自分で実感するとこれほど非常識的な世界もない。
様々な世界の法則を内包しながら、全ての法則を成立させる寛容さは他の世界を渡った経験のあるタカコにしてみても他に類を見ないと思えた。
だが確かにそれが目の前にあり、実際に現実に影響を及ぼす光景は混沌としていながらも、美しくい。
「魔法に、呪い、科学はもちろん他にも理屈不明の現象多数。間違いない……だから姉さんはこの世界にやって来たんだ」
未知を知りたいというのなら、ここ以上の世界もないだろう。
今あるセンサーの類では解析すらままならないが、だからこそ調べがいがあるという話でもあった。
タカコはぺろりと唇を舐める。
「現象としてとらえることができれば、いくらでもやりようはありそうですよね」
完全な解析ができなくても、実際の成果を得ることはできる。
そのわかりやすい手本も目の前にあった。
タカコはいったん考察を打ち切って研究室を閉じると、ペンダントに光のドームは収まって消える。
そして軽く息をついて頭を振った。
「だけど焦りは禁物です。今はじっくりこの世界について調べていきましょう。そうすればいつか……」
なんにせよ気になるものはいくらでもある。
ちょっと窓から顔を出せば、見たこともないものが顔を出すほどにこの世界には未知が溢れているのだから。
そんなことを考えながらタカコはキャンピングカーの扉を開ける。
「うひゃああああ」
するとそこには謎の黒い触手にからめとられ宙吊りにされたダイキチと、真っ黒な衣装に身を包み頬を膨らませて不機嫌そうに触手を操る少女がいた。
タカコは目をこする。
「いやはや……ホントに興味深い世界ですね」
そしていったんバタンと車の扉を閉じて、深いため息をついた。