襲撃者
準備が終わった俺達は戦闘態勢を整えた。
パワードスーツを装着し、タカコは車の中に立てこもり、全武装をいつでも使えるように神経をとがらせる。
マリーは俺の後方で、周囲一帯に目を光らせていた。
「そろそろ来た様だぞ? 準備はいいか?」
そんな声まで若干ハスキーになってしまったマリーの言葉で、警戒を最大に引き上げた。
「おお、中々早い……いや遅いくらいか」
そりゃあ侵入者用の仕掛けを取り払えば、本命が顔を出してくるのは自明の理だ。
鬼が出るか蛇が出るか、生命力を吸い取るという凶悪な仕掛けの話が本当なら似たようなのが出てきそうだった。
『前方、3体来ます回避を』
「いないんだが!?」
テラさんの警告が耳に入るが、前方には何も見えない。
だが、飛び退くのと地面から何かが飛び出るのは同時だった。
鋭い爪が俺のいた場所を鋭く薙ぐ。
バサリと広がった黒いマントの数は確かに3つだ。
「うおっと! なんだ! トンネルでもあったのか?」
『トンネルではありませんが、地面からいきなり飛び出してきたように見えました』
3人は人型ではあるらしいがフードのついた黒いマントと黒い衣装のせいで顔まではわからない。
だが手に付けた爪は攻撃する気満々の凶悪なもので、体さばきも普通ではない。
爪をかわされた瞬間に投擲されたナイフは正確に俺の軌道を捉えていた。
俺はとっさに空中を蹴り、ジャンプの軌道を変えた。
そしてナイフをかいくぐりながら俺は自分の赤いマフラーに手をかけた。
出来る事なら無力化したい。
俺のマフラーなら相手を巻き取り拘束できるはずだったが、思い切り振ったマフラーは空を切った。
「あら?」
狙いはバッチリだったはずが、そこには敵の姿もない。
どこに行ったかと言えば、水で出来た触手が俺よりも早く目標を絡め取っただけだった。
「悪いな。だがこういうのは早いもの勝ちだろう?」
マリーの放った水魔法は完全に襲撃者を絡め取って、水球の中には黒マントが3人浮かんでいた。
敵にすると恐ろしいが、味方になると相当に頼もしい。
「いや……お見事」
「まぁ簡単なもんだ」
マリーはふふんとちょっと得意げな表情を浮かべ、敵の意識をさっくりと奪っていた。